絵仏師良秀 予習編第2回

読解(予習編)

はじめに

自己紹介はこちら

今回は「絵仏師良秀」の第2回です。前回の内容を思い出しながら進んでください。することは「本文を読む」「人物の確認」「お話の理解」の3つです。その後、理解しにくい箇所の解説に進みましょう。

本文を読む

 読むときに、前回の範囲の内容をしっかり思い出しながら声を出して読みましょう。
 思い出せなかった人は第一回を再度見てください。

登場人物の確認(再度)

絵仏師良秀  (良秀を見舞う)人ども  人々(後の時代の人)

自宅が燃えた良秀が、周りの人々と話す形式を取っています。最後に出てくる「人々」は良秀が亡くなった後の時代の人です。

お話を簡単に理解

第一段落
・絵仏師良秀の家の隣から出火して、自分の家に燃え移りそうなので、大路へ逃げた
・家の中には制作中の仏の絵と妻子が残っているのもかかわらず、向かい側で立っている
第二段落
・自分の家が燃えているのを良秀が眺めていると、周囲の人が慰めてくれる
・良秀は慌てず騒がず、時々うなずいては笑っている
ーーーー(ここから第二回)ーーーー
・良秀「今まで下手くそに絵を描いていたものだ」
・周囲の人は、良秀に正気を失ったかと言うが、良秀は反論する
・今まで火炎を背にする不動尊の絵を上手く描けていなかったが、この火事で描き方が分かった
・良秀は絵仏師の道で生計を立てるなら、仏の絵をうまく描けばよいと言う
・後の時代に、「良秀の描いた『よぢり不動』」と人々が称賛する

理解しにくい箇所の解説を見る

 以下の6箇所が分かれば、後半部の文章はほぼ理解できるはずです。

・⑤年ごろは、わろく描きけるものかな
・⑥こはいかに、かくては立ちたまへるぞ
・⑦なんでふ、もののくべきぞ
・⑧かうこそ燃えけれ、と心得つるなり
・⑨仏だによく描きたてまつらば、百千の家も出で来なむ
・⑩その後にや、良秀がよぢり不動とて、今に人々めであへり。

良秀は自宅が焼ける様子を見て、「しつるせうとくしょうとくかな(=大変なもうけものをしたものだ)」とうれしそうに言う

⑤年ごろは、わろく描きけるものかな

まず、「年ごろ」の意味を理解しましょう。「ころ」は「期間」を表すという説に従います。

「年ごろ」(年頃、年来、年比)
 1長年 2数年の間、数年来

「ころ」を「期間」とすると「数年の期間」となり、感覚として「数年」は長く感じるので「長年」という意味が出てきます。これを知っておくと、「月ごろ(=数ヶ月の間)」「日ごろ(=数日間、最近)」と応用が効きます。
「わろし」「よくない」でしたね。イメージとしては「下手くそに」くらいがよいでしょうか。
あと、文末の「かな」は終助詞で詠嘆(=〜なあ)を表します。

→(訳)(不動尊の火炎を)長年下手くそに描いていたものだなあ

⑥こはいかに、かくては立ちたまへるぞ

この部分は解釈が難しい上に、多くの文法事項が出てきます。一度に覚えようとせず、分かるところから確認していってください。一年生は、とりあえず敬語と助動詞は後回しでも構いません。

・「こ」は現代語では「これ」です。古文では「か」で出てくることが多いです(例 かの人/かくある)。近くのものを表すのは現代語でも同じですが、人を指すときにも古文では使われます。つまり、ここでは近くの人、つまり「あなた」を指しています。
・「いかに」は④で説明したとおり、疑問詞全般を指します。ここでは”why”が近いでしょうか。「どうして」と訳しましょう。
・「かく」は指示副詞と呼ばれます。「か」は先程説明したとおりで近くのものを表しますが、「かく」「このように」と訳します。これはとてもよく出てきますので、忘れないでください。
「たまふ」尊敬語の補助動詞です。「お〜になる」と訳します。
・「る」は存続、完了の助動詞「り」の連体形です。「〜ている」でよいでしょう。

→(訳)あなたはどうして、このようにお立ちになっているのか。

見舞いに来た人々は、妻子を助けに行かず家が燃えるのをただ笑いながら眺めているだけの良秀に、非難めいた言葉で伝えているのでしょう。物の怪が憑いて狂ったのかとまで言っています。

⑦なんでふ、ものの憑つくべきぞ

「なんでふ」は重要古語です。漢字では「何条」と書きますが、「なにといふ」がつづまった形です。

なんでふなんじょう(←なに+と+いふ)
  なんという(関西弁ではナンチュウと言いますが、それです)
 2(反語)どうして〜か、いや、〜ない

ここでは2の意味になります。反語とは、簡単に言うと「疑問の形を用いた強い否定」です。反語はよく出てくるので、訳の仕方の含めてしっかりと理解しておいてください。
「もの」は物の怪もののけのことですが、普通教科書に注釈があります。「憑く」は「取りつく」時に用います。
「べき」は推量の助動詞「べし」の連体形です。

→(訳)どうして物の怪が取り憑くだろうか、いや、取り憑いてはいない。

⑧かうこそ燃えけれ、と心得つるなり

「かう」は「かく」のウ音便です。「かく」は⑥で説明しました。意味は「このように」。
「こそ」→「けれ」は係り結びになっています。係り結びの法則についてはこちら
「心得」はア行下二段活用の動詞です。「心得る(=理解する)」は現代語なので、意味が聞かれることはまれですが、動詞の問題として出題されるので気をつけましょう。
「つる」「なり」はそれぞれ、完了の助動詞「つ」の連体形、断定の助動詞「なり」の終止形です。合わせて「〜たのだ」と訳せばよいでしょう。

→(訳)このように燃えていた、と理解したのだ

これを、良秀は「たいへんなもうけもの」だと言っています。

⑨仏だによく描きたてまつらば、百千の家も出で来きなむ。

「だに」は「類推」を表す副助詞で、「〜でさえ」と訳します。
「たてまつる」謙譲語の補助動詞で、「(お)〜申し上げる」と今は理解しておいてください。
「出で来なむ」ですが、今回は「来」が「き」と読む、つまりカ変動詞の連用形であるという前提で説明します。連用形に「なむ」がつく場合は、「な」が強意の助動詞「ぬ」の未然形、「む」が推量の助動詞「む」の終止形(連体形)になります。「ぬ」も「む」も複数の意味があるので、訳し方はたくさんあるのですが、今は「(きっと)〜だろう」で構いません。

→(訳)(絵仏師で生計を立てるには)仏さえ上手に描き申し上げたならば、(儲けて)百や千の家もきっと建つだろう。

一般人のあなたたちは、大した能力もないのだから物を惜しんでおけばよいと伝えます。
実際、良秀はどうなったのでしょう。

⑩その後にや、良秀がよぢり不動とて、今に人々めであへり。

「にや」の「に」は断定の助動詞「なり」の連用形、「や」は疑問を表す係助詞ですが、後ろに「あらむ」が省略された形で「であろうか」と訳すということは覚えておいてください。
「が」は連体修飾を表す格助詞で、現代語の「の」です。「我が国」の「が」ですね。「良秀(の)よぢり不動」と、固有名詞的に使われています。
「めづ」は重要古語です。漢字で書くと「賞づ(愛づ)」なので、漢字にすると意味が分かりやすい語です。漢字にすると意味が分かる語は割とあるので、新しい語が出てきたら漢字に置き換えてみることもやってみると覚えることが少し楽になりますよ。

「めづ」(賞づ/愛づ)=賞賛する/ほめる/愛する

「り」は存続・完了の助動詞で、「〜ている」と訳します。

→(訳)その後であろうか、「良秀のよぢり不動」といって、今では人々が(不動尊の絵を)たた合っている。

もう一度、おおまかに話の内容を確認

第一段落
・絵仏師良秀の家の隣から出火して、自分の家に燃え移りそうなので、大路へ逃げた
・家の中には制作中の仏の絵と妻子が残っているのもかかわらず、向かい側で立っている
第二段落
・自分の家が燃えているのを良秀が眺めていると、周囲の人が慰めてくれる
・良秀は慌てず騒がず、時々うなずいては笑っている
・良秀「今まで下手くそに絵を描いていたものだ」
・周囲の人は、良秀に正気を失ったかと言うが、良秀は反論する
・今まで火炎を背にする不動尊の絵を上手く描けていなかったが、この火事で描き方が分かった
・良秀は絵仏師の道で生計を立てるなら、仏の絵をうまく描けばよいと言う
・後の時代に、「良秀の描いた『よぢり不動』」と人々が称賛する

ここまで理解してから、ぜひ授業を受けてみてください。
では、また復習編でお会いしましょう。

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