このページでは、学生時代に国語が苦手だった筆者が、この順番で学べば文章の内容が分かるようになり、一気に得意科目にできたという経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「これなら古文が理解できる!」という学ぶ手順を具体的に紹介していきます。読んでいくだけで、文章の内容が分かるようになります。
はじめに
今回は「絵仏師良秀」の第2回です。前回は、主人公の絵仏師良秀が、自分の家が燃えてしまったのになぜか笑っているところまでお話しました。今回は良秀が笑っている理由に迫っていきます。前回の内容は以下をクリックして確認してください。
前回の復習
前回の内容を板書で確認してください。第1回の詳しい説明は以下をタップしてご覧ください。



「絵仏師良秀」読解のコツ 第2回
古文を読解する5つのコツをお話しましょう。以下の順に確認していくと以前よりも飛躍的に古文が読めるようになるはずです。
何度も本文を読んでみて(できれば声に出して)、自分なりに文章の内容を想像してみます。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」「どのようなことを言っているか」「どのような行動をしているか」を考えていきます。

本文にどのような人物が出てきているか、確認します。紙で文章を読むときは、鉛筆などで▢をつけるとよりよいでしょう。
簡単でもよいので、誰かに「こんなお話」だと説明できる状態にします。ここでは、合っているかどうかは関係ありません。今の段階で、こんな話じゃないかなと考えられることが大切なのです。考えられたら、実際にこの項目をみてください。自分との違いを確認してみましょう。
古文を読んでいると、どうしても自力では分からない所がでてきます。ちなみに、教科書などでは注釈がありますが、注釈があるところは注釈で理解して構いません。それ以外のところで、多くの人が詰まるところがありますが、丁寧に解説しているので見てみてください。

step4とstep5は並行して行います。きっと、随分と読めるようになっているはずです。
本文を読む
前回の範囲の内容をしっかり思い出しながら、本文をじっくり読んでみましょう。


これも今は昔、絵仏師良秀(ゑぶつしりやうしう)といふありけり。家の隣より火出(い)で来(き)て、風おしおほひてせめければ、逃げ出でて大路(おほち)へ出でにけり。人のかかする仏もおはしけり。また、衣(きぬ)着(き)ぬ妻子(めこ)なども、さながら内にありけり。それも知らず、ただ逃げ出でたるをことにして、向かひのつらに立てり。
見れば、すでに我が家に移りて、煙(けぶり)、炎(ほのほ)、くゆりけるまで、おほかた、向かひのつらに立ちて眺めければ、「あさましきこと。」とて、人ども来(き)とぶらひけれど、騒がず。「いかに」と人言ひければ、向かひに立たちて、家の焼くるを見て、うちうなづきて、時々笑ひけり。
ーーー(ここから第2回)ーーー
「あはれ、しつるせうとくかな。年(とし)ごろはわろくかきけるものかな。」と言ふときに、とぶらひに来(き)たる者ども、「こはいかに、かくては立ちたまへるぞ。あさましきことかな。物のつきたまへるか。」と言ひければ、「なんでふ物のつくべきぞ。年ごろ不動尊(ふどうそん)の火炎(くわえん)をあしくかきけるなり。今見れば、かうこそ燃えけれと、心得(こころえ)つるなり。これこそ、せうとくよ。この道を立てて世にあらむには、仏だによくかきたてまつらば、百千(ひやくせん)の家も出いで来(き)なむ。わたうたちこそ、させる能(のう)もおはせねば、物をも惜(を)しみたまへ。」と言ひて、あざ笑ひてこそ立てりけれ。
その後(のち)にや、良秀がよぢり不動とて、今に人々めであへり。
(『宇治拾遺物語』より)
登場人物の確認
- 絵仏師良秀
- (良秀を見舞う)人ども
- 人々(後の時代の人)

自宅が燃えた良秀が、周りの人々と話す形式を取っています。最後に出てくる「人々」は良秀が亡くなった後の時代の人です。
お話を簡単に理解
第一段落
・絵仏師良秀の家の隣から出火して、自分の家に燃え移りそうなので、大路へ逃げた
・家の中には制作中の仏の絵と妻子が残っているのもかかわらず、向かい側で立っている
第二段落
・自分の家が燃えているのを良秀が眺めていると、周囲の人が慰めてくれる
・良秀は慌てず騒がず、時々うなずいては笑っている
ーーー(ここから第2回)ーーー
・良秀「今まで下手くそに絵を描いていたものだ」
・周囲の人は、良秀に正気を失ったかと言うが、良秀は反論する
・今まで火炎を背にする不動尊の絵を上手く描けていなかったが、この火事で描き方が分かった
・良秀は絵仏師の道で生計を立てるなら、仏の絵をうまく描けばよいと言う
・後の時代に、「良秀の描いた『よぢり不動』」と人々が称賛する
理解しにくい箇所の解説を見る
本文を読んで自分で内容を考えていったときに、おそらく以下の箇所が理解しにくいと感じたでしょう。その部分を詳しく説明します。解説を読んで、理解ができたら改めて本文を解釈してみてください。
⑤年ごろはわろくかきけるものかな
⑥こはいかに、かくては立ちたまへるぞ
⑦なんでふ物のつくべきぞ
⑧かうこそ燃えけれと、心得つるなり
⑨仏だによくかきたてまつらば、百千の家も出で来なむ
⑩その後にや、良秀がよぢり不動とて、今に人々めであへり。



⑤までのあらすじです。
良秀は自宅が焼ける様子を見て、「しつるせうとくかな(=大変なもうけものをしたものだ)」とうれしそうに言っています。
⑤年ごろは、わろく描きけるものかな
(訳)はこちら(タップで表示)
(不動尊の火炎を)長年下手くそに描いていたものだなあ


まず、「年ごろ」の意味を理解しましょう。「ころ」は「期間」を表すという説に従います。
「年ごろ」(年頃、年来、年比)
1長年 2数年の間、数年来
「ころ」を「期間」とすると「数年の期間」となり、感覚として「数年」は長く感じるので「長年」という意味が出てきます。これを知っておくと、「月ごろ(=数ヶ月の間)」「日ごろ(=数日間、最近)」と応用が効きます。
「わろし」は「よくない」でしたね。イメージとしては「下手くそに」くらいがよいでしょうか。
あと、文末の「かな」は終助詞で詠嘆(=〜なあ)を表します。



「家が燃えてもうけものだ」なんて言っているのを聞いたら、周りの人はびっくりしちゃうね
⑥こはいかに、かくては立ちたまへるぞ
(訳)はこちら(タップで表示)
あなたはどうして、このようにお立ちになっているのか。


この部分は解釈が難しい上に、多くの文法事項が出てきます。一度に覚えようとせず、分かるところから確認していってください。あなたが高校一年生ならば、とりあえず敬語と助動詞は後回しでも構いません。下の解説の上3つ(「こ」「いかに」「かく」)をまずは理解しましょう。
・「こはいかに」の「こ」は現代語では「これ」です。古文では「か」で出てくることが多いです(例 かの人/かくある)。近くのものを表すのは現代語でも同じですが、人を指すときにも指示語が古文では使われます。つまり、ここでは近くの人、つまり「あなた」を指しています。
・「いかに」は第1回の④で説明したとおり、疑問詞全般を指します。ここでは”why”が近いでしょうか。「どうして」と訳しましょう。
・「かく」は指示副詞と呼ばれます。「か」は先程説明したとおりで近くのものを表しますが、「かく」は「このように」と訳します。これはとてもよく出てきますので、忘れないでください。
・「たまふ」は尊敬語の補助動詞です。「お〜になる」と訳します。
・「たまへる」の「る」は存続、完了の助動詞「り」の連体形です。「〜ている」でよいでしょう。
・「たまへるぞ」の「ぞ」は強意を表します。特に訳出はいりません。
見舞いに来た人々は、妻子を助けに行かず家が燃えるのをただ笑いながら眺めているだけの良秀に、非難めいた言葉で伝えているのでしょう。良秀に物の怪(もののけ)が憑(つ)いて狂ったのかとまで言っています。
⑤⑥をまとめたものが、以下の板書です。


では、⑦までの文章を改めて解釈してみましょう。(⑤⑥の内容も含みます)
「あはれ、しつるせうとくかな。年ごろはわろくかきけるものかな。」と言ふときに、とぶらひに来たる者ども、「こはいかに、かくては立ちたまへるぞ。あさましきことかな。物のつきたまへるか。」と言ひければ、
(訳)はこちら(タップで表示)
「ああ、たいへんなもうけものをしたことよ。(不動尊の火炎を)長年下手くそに描いていたものだなあ。」と言うときに、見舞いに来た者たちが、「あなたはどうして、このようにお立ちになっているのか。あきれたことだなあ。物の怪がお憑きになっているのですか。」と言ったところ、
⑦なんでふ、物のつくべきぞ
(訳)はこちら(タップで表示)
どうして物の怪が取り憑くだろうか、いや、取り憑いてはいない。


良秀が見舞いに来た人の非難に反論する場面です。
「なんでふ」は重要古語です。漢字では「何条」と書きますが、「なにといふ」がつづまった形です。
「なんでふ」(←なに+と+いふ)
1 なんという
2(反語)どうして〜か、いや、〜ない



「お前はなんちゅうやっちゃ(お前はなんというやつだ)」の「なんちゅう」だね。関西地方では今でも普通に使う言葉なのかあ。
ここでは2の意味になります。反語とは、簡単に言うと「疑問の形を用いた強い否定」です。反語はよく出てくるので、訳の仕方の含めてしっかりと理解しておいてください。
「もの」は物の怪のことですが、普通教科書に注釈があります。人を苦しめる生霊や死霊のことです。「つく」は漢字で「憑く」と当て、「取りつく」という意味になります。
「べき」は推量の助動詞「べし」の連体形です。
⑧かうこそ燃えけれと、心得つるなり
(訳)はこちら(タップで表示)
このように燃えていたと、理解したのだ


「かう」は「かく」のウ音便です。「かく」は⑥で説明しました。意味は「このように」。
「こそ」→「けれ」は係り結びになっています。
「心得」はア行下二段活用の動詞です。「心得る(=理解する)」は現代語なので、意味が聞かれることはまれですが、動詞の問題として出題されるので気をつけましょう。
「つる」「なり」はそれぞれ、完了の助動詞「つ」の連体形、断定の助動詞「なり」の終止形です。合わせて「〜たのだ」と訳せばよいでしょう。



これを、良秀は「たいへんな儲(もう)けもの」だと言っています。
⑦⑧をまとめたものが、以下の板書になります。


⑨仏だによく描きたてまつらば、百千の家も出で来なむ。
(訳)はこちら(タップで表示)
(絵仏師で生計を立てるには)仏さえ上手に描き申し上げたならば、(儲けて)百や千の家もきっと建つだろう。


「だに」は「類推」を表す副助詞で、「〜でさえ」と訳します。
「たてまつる」は謙譲語の補助動詞で、「(お)〜申し上げる」と今は理解しておいてください。
「出で来なむ」ですが、今回は「来」が「き」と読む、つまりカ変動詞の連用形であるという前提で説明します。連用形に「なむ」がつく場合は、「な」が強意の助動詞「ぬ」の未然形、「む」が推量の助動詞「む」の終止形(連体形)になります。「ぬ」も「む」も複数の意味があるので、訳し方はたくさんあるのですが、今は「(きっと)〜だろう」と覚えてもらって構いません。



一般人のあなたたちは、大した能力もないのだから物を惜しんでおけばよいと伝えます。では、実際のところ、良秀はどうなったのでしょう。
では、⑩までの文章(良秀のセリフ)を改めて解釈してみましょう。(⑦⑧⑨の内容も含みます)
「なんでふ物のつくべきぞ。年ごろ不動尊の火炎をあしくかきけるなり。今見れば、かうこそ燃えけれと、心得つるなり。これこそ、せうとくよ。この道を立てて世にあらむには、仏だによくかきたてまつらば、百千の家も出で来なむ。わたうたちこそ、させる能もおはせねば、物をも惜しみたまへ。」と言ひて、あざ笑ひてこそ立てりけれ。
(訳)はこちら(タップで表示)
「どうして物の怪が取り憑くだろうか、いや、取り憑いてはいない。長年不動尊の火炎を下手に描いていたのだなあ。今見ると、このように(炎は)燃えていたと、理解したのだ。これこそもうけものよ。この道(=絵仏師の道)を専門として世間に認められるとしたら、仏さえ上手に描き申し上げたならば、(儲けて)百や千の家もきっと建つだろう。。おまえたちこそ、それほどの才能もおありでないので、物を惜しみなさるのだ(物を惜しみなさるがよい。)」と言って、
※「わたうたちこそ」の「こそ」がどこに係るかで訳し方が変わります。「こそ」が「惜しみたまへ」の「たまへ」に係ると考えたら「物を惜しみなさるのだ」、「こそ」が「おはせねば」に係る(結びの流れが起こっている)と考えたら「物を惜しみなさるがよい」と訳すことになります。なぜそうなるか、ぜひ自分で考えてみてください。「活用形の問題」がヒントですよ。
⑩その後にや、良秀がよぢり不動とて、今に人々めであへり。
(訳)はこちら(タップで表示)
その後であろうか、「良秀のよぢり不動」といって、今では人々が(良秀の描いた不動尊の絵を)たたえ合っている。


「にや」の「に」は断定の助動詞「なり」の連用形、「や」は疑問を表す係助詞ですが、後ろに「あらむ」が省略された形で「であろうか」と訳すということは覚えておいてください。
「にや」の後は「あらむ」が省略されていることが多い。
この部分は多くの人が読み間違えます。多くの人が、「良秀がよぢり不動とて」を「良秀が『よぢり不動』になった」と解釈してしまうのです。これは「が」を主格を表すものと考えてしまうからです。でも、実は、ここでの「が」は連体修飾を表す格助詞で、現代語の「の」です。「我が国」の「が」ですね。「良秀のよぢり不動」と、固有名詞的に使われています。
また、「めづ」は重要古語です。漢字で書くと「賞づ(愛づ)」なので、漢字にすると意味が分かりやすい語です。漢字にすると意味が分かる語は数多くあるので、新しい語が出てきたら漢字に置き換えてみることもやってみると覚えることが少し楽になりますよ。
「めづ」(賞づ/愛づ)
=賞賛する/ほめる/愛する
「り」は存続・完了の助動詞で、「〜ている」と訳します。
⑨⑩をまとめたものが、以下の板書になります。


良秀は不動尊の火炎の描き方を知って、後世に絵を称えられるような人物になったという話です。ここからどのような教訓を読み取ることができるでしょうか。ただ文章を読むだけでなく、そこから何が考えられるかまで思考を深める訓練をしておくと、将来様々な場面で役に立ちますよ。そのためにも、ぜひ多くの文章に触れてみてください。
おわりに(テスト対策へ)
今回は、「絵仏師良秀」の後半部についてお話しました。一通り学習を終えたら、今度はテスト対策編もご覧ください。「絵仏師良秀」第二回のテスト対策は会員限定記事です。


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