このページでは、学生時代に国語が苦手だった筆者が、この順番で学べば文章の内容が分かるようになり、一気に得意科目にできたという経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「これなら古文が理解できる!」という学ぶ手順を具体的に紹介していきます。今回は読んでいくだけで、『源氏物語』の大まかな内容が分かるようになります。
はじめに

今回はいよいよ『源氏物語』ですね。光源氏が多くの女の人と恋を重ねる話だと聞いたことがありますが。



それは『源氏物語』の一面を捉えたものだね。だから、間違いではないのだけれど、もっと深い「人間」をテーマとした文章ですよ。読んでいくうちにどんどんハマっていくのを感じることができます。私は始めに、マンガ「あさきゆめみし」から入りましたが、あっという間に読み終えてしまいました。1000年経っても、人間の本質は変わらないということがよく分かります。
『源氏物語』について




『源氏物語』は、紫式部によって書かれた物語文学です。紫式部は漢文学者であった藤原為時の娘で、宮仕えをしているときに「紫式部」と呼ばれていたようですが、本名は不明です。少し前にNHKで「光る君へ」という、紫式部を主人公とした大河ドラマが放送されていましたが、そのときは「まひろ」と呼ばれていました。もちろんこれは仮名です。
成立時代ですが、自身が著した『紫式部日記』には、寛弘五(1008)年ころにはすでに『源氏物語』が宮中で読まれ、評判になっていたとあります。よって、平安時代中期の成立となります。また、第一の巻である「桐壷」から書かれたのではなく、途中(「帚木」や「若紫」)から作られたのではないかという説もありますが、はっきり分かってはいません。
原稿用紙にして約2400枚、文字にして約100万文字、和歌の数約800首、登場人物400人以上という一大長編物語です。全部で五十四の巻(全五十四帖)があり、それぞれに名前がつけられています。内容の展開から大きく三部に分けられています。
〈第一部〉
1「桐壷」〜33「藤裏葉」
光源氏の誕生、多様の恋の遍歴、不遇な時代を経て栄華に至るまで約四十年間を描く。
〈第二部〉
34「若菜上」〜41「幻」
若き日の過ちの因果に苦しむ源氏。出家を決意するまでの晩年十四年間を描く。
〈第三部〉
42「匂宮」〜54「夢浮橋」
源氏の宿命の子、薫の世代に移り、恋に揺れ動く姿を背景に描いている。
※詳しい内容は、後の「『源氏物語』あらすじ 全五四帖」をご覧ください。
このうち、45「橋姫」〜54「夢浮橋」を、特に「宇治十帖」と呼びます。
『竹取物語』などの作り物語(伝奇物語)に見られる虚構性と『伊勢物語』などの歌物語に見られる叙情性、さらには『蜻蛉日記』などの日記文学に見られる自照性を集大成して完成させた物語文学となっています。
また、江戸時代の国学者である本居宣長に、『源氏物語』の本質が「もののあはれ」(人の心が対象に触れたときに生じる感動や情感)にあると評価されていますが、これは今でも「をかしの文学」と言われる『枕草子』と比較て用いられます。
この作品は、後世の文学や芸術に影響を与えただけでなく、世界の文学として様々な国で翻訳され、その価値が認められています。以上が、『源氏物語』の概略です。
『源氏物語』をどのようにして読む?
本当は原文を読めたらよいのですが、忙しい現代人にはあまりにも長く、時間がかかりすぎてしまうので、現実的ではありません。以下の方法もオススメしておきます。
1現代語訳を読む
『源氏物語』の現代語訳は、それだけでも文学作品になり得ます。実際に多くの作家が『源氏物語』の現代語訳を発表しています。どれを読んでもよいのですが、個人的には「瀬戸内寂聴訳」をオススメしておきます。現代人にも読みやすく、また、美しい日本語で描かれたこの文章は、読んでいて心地よくなります。一方で、非常に分量が多く、読むのに時間がかかってしまうのが難点で、下のあらすじの中で、興味を持った部分だけ読むのも一つの方法かとも思います。
2マンガを読む
『源氏物語』のマンガもいくつか発表されていますが、圧倒的にオススメなのが、大和和紀作『あさきゆめみし』です。登場人物の女性の顔が似ていて判別をつけられるようになるのに、結構読み込まないと行けないのが玉にキズです(笑)。文学作品と考えなくても、マンガとしても非常におもしろく、つい読みふけってしまう作品です。筆者も高校生のとき、夢中になって全巻読みました。いまは学校の図書館にも置いているのではないでしょうか。下から購入することもできます。一巻だけでも読んでみたらいかがでしょうか。『桐壺』や『若紫』という学校の授業でよく読まれる有名な箇所も出てきますよ。
3マンガとあらすじのハイブリッド
『源氏物語』のあらすじも多く発表されています。その中でも、一冊にまとまっていて、内容がよく分かるものを一冊紹介しておきます。「大掴(おおつかみ)源氏物語 まろ、ん?」です。主人公の光源氏が「栗」、友人の頭中将が「豆」で描かれている少しふざけたものかと思わせておいて、『源氏物語』一巻の内容が8コママンガでしっかりとまとめられています。また、調度品や貴族の服装なども丁寧に書き込まれているので、平安貴族社会の雰囲気がよくつかめます。
『源氏物語』あらすじ 全五四帖
『源氏物語』五十四帖のあらすじを、簡単にまとめたものをここに上げます。これを読むだけで、『源氏物語』の大まかな内容はつかめますが、あくまで「大まかな内容」です。それでも、全く知らないよりはマシなので、上記のオススメ本を購入する前に一読してみてください。全部読むのが大変な人は、自分の興味のある巻のあらすじだけでもどうぞ。
《第一部》1桐壷 〜 33藤裏葉
1 桐壷(きりつぼ)
桐壷帝には、身分は低いが特別に愛された桐壷更衣がいた。二人の間に生まれた子は、母の身分の低さから皇位継承ができず、源氏の姓を賜って臣下となる。この子が光源氏である。
光源氏は容姿も才能もすぐれていたが、光源氏の母は、皇太子の母である弘徽殿の女御に憎まれ、他の后の嫉妬にも苦しみ、若くして亡くなった。帝は深い悲しみに沈む。その後、母に似た藤壷の宮が入内し、源氏は義母藤壷の宮に強く心を惹かれていく。


2 帚木(ははきぎ)
十七歳の源氏は帝の寵愛を受け、宮廷中で話題の的。梅雨の夜に、親友である頭中将や若い男性貴族たちと「雨夜の品定め」と呼ばれる女性論を語り、中流女性の魅力を知る。翌日、紀伊守邸に泊まった源氏は、伊予介の後妻である空蝉に心惹かれ、強引に迫るが彼女は拒み続ける。その凛とした態度に源氏は逆に新鮮な魅力を感じ、以後も忘れられない女性となった。
3 空蝉(うつせみ)
源氏は、空蝉に心を寄せる。夜、彼女のもとを訪れるが、空蝉は源氏を避けて衣を残して逃げてしまう。その姿から「はかなく消えてしまうもの」として「空蝉」と呼ばれる。夜明け、源氏は蝉の脱け殻のような空蝉の着物を抱いて帰った。
4 夕顔(ゆうがお)
源氏は、タ顔の花の咲く小家に隠れ住む美しい女性と出会い、ひそやかな恋を交わす。源氏は、やがて素性を隠したまま、この女のもとに通うようになった。源氏は、そのころ通っていた六条御息所(前皇太子妃)や正妻葵の上を重荷に感じていたので、この人といるとたいそう心が安らいだ。ある夜、不思議な力(物の怪)に襲われて急死してしまう。源氏は大きな悲しみに沈み、人の世のはかなさを思い知らされる。この女性は、少し前に頭中将が心ならずも見失った人であった。
5 若紫(わかむらさき)
十八歳の春、病を癒すため北山の僧を訪れた源氏は、僧坊で藤壷に瓜二つの少女を垣間見る。少女は、藤壷の宮の姪であった。源氏はすぐ求婚したが、尼君は本気に取り上げない。その夏、病を理由に宮中を離れた藤壷と密かに契りを結び、やがて藤壷は懐妊する。源氏は帝の父になる夢を見て運命を感じつつ、冬には北山の少女を自邸に迎え、娘のように育て始めた。この少女こそ後の紫の上である。


6 末摘花(すえつむはな)
源氏は、かつての皇族の娘で、現在は寂しく暮らしている常陸宮の姫君、末摘花と出会う。彼女は容姿に恵まれておらず、女性らしいたおやかさもなかったが、まじめで誠実な心を持っていた。源氏は、彼女を庇護することにする。
7 紅葉賀(もみじのが)
帝は上皇の長寿祝い「紅葉賀」を藤壷に見せたいと、宮中で練習の宴を催した。源氏の舞の美しさは人々を圧倒し、藤壷も心を動かされる。翌年、藤壷は源氏との密かな関係で懐妊していた皇子を出産。帝はその事実を知らず、大喜びで皇太子にしようと考え、藤壷を中宮に立てた。藤壷も源氏も罪の重さに苦しむ。
8 花宴(はなのえん)
春の宴で、後宮の弘徽殿のあたりをさまよう源氏は、「朧月夜(おぼろづきよ)に似るものぞなき」と歌いつつ来る女君と密かに契りを結ぶ。その後、右大臣(弘徽殿の女御の父)家の藤の花の宴に招かれた源氏は、前夜の女君が、間もなく東宮妃に上がる右大臣の姫君だと知るのであった。
9 葵(あおい)
花の宴から二年後、桐壺帝は退位する。六条御息所は源氏の冷淡さに耐えかね、娘と共に伊勢へ下る決意を固める。その年の賀茂祭で、御息所は葵の上一行と車争いを起こし、辱めを受ける。恨みの深さから御息所の生霊が葵の上に取り憑き、出産後の葵を苦しめる。やがて葵は若君を残して死去。源氏は御息所を一層避けるようになる。葵の上の四十九日を終えた後、紫の上と初めて正式に夫婦の契りを交わした。
10 賢木(さかき)
六条御息所は、源氏への愛情と嫉妬のはざまで心を乱し、伊勢の斎宮(天照大神に仕える皇女)の母として都を離れる決意をする。源氏との別れは痛ましく、源氏もまた複雑な思いを抱えながら彼女を見送る。冬、桐壷帝が亡くなり、庇護者を失った源氏や藤壷の宮に、弘徽殿大后の圧迫は強まる。朧月夜の君は宮廷に上り、帝の寵愛はあついが、なおひそかに源氏を通わせている。藤壷は東宮の将来を危ぶみ、源氏との関係を絶つため尼になった。翌年夏、源氏は朧月夜と密会しているところを、女君の父右大臣に見付けられ、弘徽殿大后は、これを口実に源氏を陥れようと計った。
11 花散里(はなちるさと)
源氏は昔から親しくしていた女性・花散里を訪ねる。彼女は華やかさに欠けるが、落ち着いた人柄で、源氏に安らぎを与える存在となる。恋の激しさから距離を置いた、穏やかな関係が描かれる。
12 須磨(すま)
政争に巻き込まれ流罪となる前に、源氏は自ら須磨へ退き、権力への野心がないことを示した。出立前に女君たちへ別れを告げるが、紫の上を残すのが最も心苦しかった。須磨では仏道に励みつつ、詩歌や音楽を楽しむ優雅な生活を送る。やがて隣地の明石入道は、源氏との縁を娘に結ぶ好機と喜ぶ。翌春、源氏が海辺で禊をすると突風と高潮が襲い、源氏は住吉の神に祈願した。
13 明石(あかし)
嵐の夜、源氏の夢に父桐壺帝が現れ、須磨を離れるよう諭す。同じ頃、明石入道も住吉の神から源氏を迎えるよう告げられる。源氏は明石へ移り、入道の世話を受けつつ入道の娘・明石の君と結ばれる。一方、都では帝の夢に桐壺帝が現れ、源氏を不当に追放したことを叱責する。これを受けて帰京の勅命が下される。明石の君は身ごもっていたため、源氏は再会を約して二年余りぶりに都へ戻った。
14 澪標(みおつくし)
源氏は、須磨・明石から都へ戻り、栄華の第一歩を踏み出す。桐壺帝の追善法要を営み、翌年には秘められた子である冷泉帝が即位、源氏は大臣となる。藤壺の宮は上皇並みの待遇を受けた。明石の君は娘を出産し、やがて皇后になるとの予言を受ける。秋、源氏は住吉参詣で偶然明石の君と同じ場にいたが再会できなかった。その頃、伊勢から帰京した六条御息所は病で亡くなり、源氏は娘の斎宮を養女として冷泉帝に入内させ、外戚の地位を固めた。
15 蓬生(よもぎう)
源氏失脚中、末摘花は頼る者なく貧しい生活を送り、屋敷も荒れ果てた。叔母に連れられ侍女となる話も拒み、源氏を信じて待ち続ける。帰京後、源氏は翌年ようやく彼女を思い出し、荒れ庭を訪ねた。
16 関屋(せきや)
源氏は、かつての恋人・空蝉の娘を正妻にしている中流貴族・常陸介(ひたちのすけ)の妻、常陸宮の姫君と偶然再会する。旅の途中、関所で姫君の牛車と源氏の牛車が行き合い、かつての関係を思い出して感慨にふける。
17 絵合(えあわせ)
源氏は、斎宮を後宮に入れて後ろ盾とする。かつての盟友権中納言も姫を入内させ、政権を争う。源氏と左大臣家の陣営が互いに絵を出し合い、見事な作品を披露する。藤壺の後援もあり源氏方が勝利。絵合は太平の象徴として後世の模範とされた。
18 松風(まつかぜ)
源氏は明石の姫君を田舎に置けず上京を促すが、明石の君は身分差を恥じてためらう。入道は大堰川の別荘を修理し、娘と孫を都に移す決断をする。明石の君は母を伴い、父と永遠の別れを覚悟して上京。源氏は三歳の姫と初めて対面し深い情を抱くが、紫の上は子をもうけた明石の君に嫉妬する。源氏はやがて姫を紫の上の養女に迎える相談をするのだった。
19 薄雲(うすぐも)
源氏三十一歳の冬、明石の姫君が京に迎えられ、母子の悲しい別れがあった。紫の上は幼い姫を慈しみ育てる。翌年、藤壷の宮が亡くなり、冷泉帝は源氏が実父と知る。帝は位を源氏に譲ろうとするが、源氏は帝を諌め秘密は守り通される。
20 朝顔(あさがお)
秋から冬、源氏はいとこの朝顔の斎院に熱心に通う。正妻にふさわしい身分で世間の噂も立ち、紫の上は心穏やかでない。冬の月夜、源氏が紫の上に藤壺の宮や朝顔の斎院などの人柄を語ると、夢に藤壷が現れ恨みを述べる。源氏は藤壷の成仏を願い供養を行った。
21 少女(おとめ)
源氏の長男夕霧(母は葵の上)が十二歳で元服し、大学に入学した。同年、斎宮の女御が中宮となり、内大臣(頭中将)は不満を抱いた。夕霧は内大臣の娘、雲居の雁と相思相愛だが、長く結婚は許されなかった。やがて六条院が完成し、源氏の女君たちが住み分けた。
22 玉鬘(たまかずら)
かつて源氏が愛した夕顔と内大臣(頭中将)との間に生まれた娘・玉鬘が登場する。彼女は長らく筑紫の太宰府に住んでいたが、都に戻って源氏に引き取られる。夕顔のことを忘れがたく思う源氏は、内大臣には知らせず、花散里に預けて大切に世話をする。
23 初音(はつね)
新年を迎え、源氏の邸宅「六条院」で華やかな祝宴が行われる。紫の上をはじめとする源氏の女性たちがそれぞれの棟に住み、四季折々の美が調和する。源氏の理想郷のような生活が描かれる。
24 胡蝶(こちょう)
晩春、源氏は春の御殿で船遊びを催し、紫の上は舞人を献じて春を讃える。玉鬘は源氏に育てられ美しく成長し、多くの貴公子から恋文を受ける。源氏も抑えきれず、初夏の夕べに玉鬘へ思いを告げた。
25 蛍(ほたる)
玉鬘は悩みつつも源氏に従い、源氏の勧める蛍兵部卿宮の訪問を受ける。源氏は蛍を放ち玉鬘の姿を見せ、宮を喜ばせた。夏には節会や絵物語で日々が過ぎる。内大臣も夕顔の遺児を忘れられず、捜索を続けていた。
26 常夏(とこなつ)
夏の日、源氏は夕霧や若者たちと涼を楽しみ、内大臣の娘近江の君を話題にして揶揄する。夕暮れ、源氏は皆と玉鬘を訪ね、咲く常夏(撫子)の花に彼女をなぞらえて憧れを募らせた。
27 篝火(かがりび)
秋の夜、源氏は玉鬘に琴を教える。篝火が照らす中で添い寝をするが、将来を思い軽率な行動はしない。玉鬘は源氏に心を寄せるようになる。
28 野分(のわき)
台風の翌朝、夕霧は六条院を訪れ、風に乱れた庭や女君たちを見舞う。紫の上の美しさに強く心惹かれ、また玉鬘に寄り添う父源氏の姿に不審を抱き、心に深い印象を残した。
29 行幸(みゆき)
冬十二月、大原野の行幸に多くの人々が集まり、玉鬘も父内大臣の姿を一目見ようと出かけた。帝は以前から玉鬘を尚侍(内侍所の長官)にと望んでおり、その美しさに心を動かす。源氏は彼女を入内させる前に裳着の儀式を行う決意をし、大宮邸で内大臣に真相を明かした。翌年二月、盛大な裳着の儀が行われ、内大臣が腰結役を務め、父娘はついに初めて対面を果たした。
30 藤袴(ふじばかま)
源氏三十七歳の秋、大宮が亡くれ、夕霧や玉鬘は喪に服した。夕霧は父の使いとして玉鬘を訪れ、藤袴を差し入れ歌で思いを示す。やがて玉鬘の宮仕えが近づき、求婚者たちは焦りを募らせる。鬚黒大将は柏木を通じて熱心に働きかけ、内大臣も心を動かすが、玉鬘の心は兵部卿の宮に惹かれていた。
31 真木柱(まきばしら)
十月を前に鬚黒大将は女房の手引きで玉鬘と結ばれ、源氏や帝は失望したが、内大臣は喜んだ。十一月、玉鬘は鬚黒夫人として尚侍の務めを果たす。鬚黒大将の北の方(紫の上の父の長女)は病に悩み、雪の夜に夫へ乱心して灰を投げつけ、父式部卿宮に引き取られた。翌正月、玉鬘は鬚黒邸に迎えられ、十一月には男子を出産した。
32 梅枝(うめがえ)
紫の上の養女として大切に育てられた明石の姫君が、東宮(後の冷泉帝)の后となることが決まる。源氏はこの結婚を通じて、自らの地位と一族の繁栄を確固たるものにしていく。
33 藤裏葉(ふじのうらば)
大宮の三回忌に内大臣はついに折れ、夕霧と雲居の雁の結婚を許し、四月に藤の花の盛りに婚儀が行われた。同じ月、明石の姫君が入内し、紫の上が付き添ったが、やがて実母の明石の君が後見を務め、母娘は再会を果たす。翌年、源氏四十の賀に際し、冷泉帝は源氏を准太上天皇に進め、その身の上の予言が実現した。十月、冷泉帝の六条院行幸もあり、源氏の栄華は頂点に達して物語はめでたく結ばれる。
〈第二部〉34若菜上 〜 41幻
34 若菜(わかな)上
源氏四十歳の正月、玉鬘が四十の賀を祝い若菜を献じた。朱雀院は出家を前に、姪である女三の宮を源氏に託す。二月、十三歳ほどの宮が源氏と結婚することになり、紫の上は深く傷つきながらも婚礼を支えた。幼い宮に源氏は失望するが、十月の賀宴は盛大に行われた。翌年、明石の女御(明石の姫君)が皇子を出産し、入道から夢のお告げの書かれた遺書が届く。春、柏木(内大臣の長男)は蹴鞠の時に垣間見た女三の宮への恋心を一層募らせた。
35 若菜下(わかな)下
七年が過ぎ、冷泉帝退位や新帝即位などがあった。四十七歳の春、源氏は朱雀院五十の賀に若菜を献じようと女三の宮に琴を教え、女楽を催す。しかし直後に紫の上が病に倒れ、看病で留守の間に柏木が女三の宮に近づき、やがて懐妊してしまう。秘密は源氏に知れ、柏木は恐れのあまり病に伏し、命を縮めていった。
36 柏木(かしわぎ)
新年、源氏四十八歳。女三の宮は男子(薫)を出産。それを聞いたあと、柏木は重態に陥リ、後事を夕霧に託して若くして命を落とす。女三の宮も産後が回復せず、病気にことつけて出家した。夕霧は柏木夫人(落葉の宮)を見舞ううち、次第にこの女性を好ましく思うようになった。
37 横笛(よこぶえ)
柏木の死後、彼の妻である落葉の宮は悲しみに沈む。夕霧は、宮邸を訪れ、その母御息所から柏木遺愛の横笛を贈られる。しかし、その夜の夢に柏木が現れ、笛を贈るべき人は別人であると言う。夕霧は源氏を訪れ、笛の由緒を追求したが、源氏はついに言葉を濁して答えなかった。
38 鈴虫(すずむし)
夏、女三の宮の持仏開眼供養があり、仏具の用意は源氏が整え、紫の上も助力した。秋には女三の宮の庭に鈴虫を放ち、蛍兵部卿宮や夕霧らと宴を催す。やがて冷泉院に召され一同で参上すると、秋好中宮が源氏に、母六条御息所の霊を救うため出家を望む心を語ったが、源氏は強く諫め、決意を思いとどまらせた。
39 夕霧(ゆうぎり)
源氏五十歳の秋、夕霧は柏木との約束を果たすため落葉の宮を見舞い続け、次第にその人柄に惹かれた。母御息所が小野の山荘に移ると訪ねて想いを告げたが受け入れられず、やがて加持僧の口から二人の仲を知られた御息所は嘆きの手紙を送る。だが雲居の雁に奪われ返事はなく、御息所は失意のまま没した。母を奪ったと落葉の宮は夕霧を恨むが、ついに結ばれる。雲居の雁は怒って実家に戻り、夕霧の迎えにも応じなかった。夕霧は藤典侍の子らを含め多くの子をもうけ、一家は皇室外戚として栄えた。
40 御法(みのり)
紫の上は病がちとなり出家を願うが源氏は許さなかった。三月、彼女の発願による法華経千部供養が二条院で営まれ、花散里や明石の君も参列する。これを最期の営みと覚悟した紫の上は、夏には病が重くなり、秋好中宮も見舞に訪れた。秋、萩の花散る庭を前に源氏や明石中宮と歌を交わした直後に息を引き取る。源氏は呆然自失し、葬送は八月十五日に営まれた。秋好中宮の弔問の文に往時の華やぎを偲び、源氏の悲嘆は深まった。
41 幻(まぼろし)
紫の上を失った源氏は、生きる気力をなくす。彼女との思い出がよみがえるたびに涙し、虚ろな日々を送る。物語の中で源氏が主人公として描かれるのは、この帖で事実上の最後となる。
雲隠れ
本文のない巻で、源氏の死を象徴的に示す。五十四帖の中には数えない。物語は描かれず、読者に余韻を残す形で主人公の最期を暗示している。
〈第三部〉42「匂宮」〜54「夢浮橋」
42 匂宮(におうのみや)
光源氏の子や孫の時代。明石中宮を中心に一族は栄え、三の宮(匂の宮)は美貌で光源氏の面影がある。薫は出生の秘密に悩むが、二人は香りにこだわり、「匂や薫や」と世間で称賛される。
43 紅梅(こうばい)
柏木亡き後、太政大臣(頭中将)一家の物語。匂の宮は大納言の願いで中の君と結ばれる予定だが、心は宮の御方(大納言の後添いの夫人真木柱の連れ子)に寄せる。大納言は若君を使い、手紙で匂の宮の気を引こうとする。
44 竹河(たけかわ)
鬚黒太政大臣一家の後日譚。玉鬘は姫君たちの縁談に苦労し、大君は冷泉院の妃に、中の君は宮中に上る。薫は十年間この邸を訪れ、静かで落ち着いた性格で好感を持たれる。
45 橋姫(はしひめ)
ここから「宇治十帖」が始まる。舞台は宇治の山里。源氏の異母弟・八の宮は、姫君を育てる宇治の山荘を訪れ、大君に恋する。老女弁の君から柏木の遺品を伝えられ、匂の宮に宇治の姫君たちのことを知らせる。
46 椎本(しいがもと)
匂の宮は初瀬詣で帰りに宇治へ立ち寄り文を交わす。八の宮の死後、娘たちは孤独と不安の中に取り残される。源氏の孫である薫は彼女たちを訪ね、心を寄せて支えようとする。
47 総角(あげまき)
八の宮の一周忌近く、薫は宇治の邸で姫君たちを弔い、大君に想いを打ち明けたが無理に遂げない。大君は中の君と薫の結婚を望む。秋の終わり、薫は大君の部屋に忍び入るが、大君は逃げ、中の君と一夜を過ごす。薫は中の君と匂の宮の結婚を進め、匂の宮は訪れ途絶えがちで姫君たちは嘆く。冬、紅葉狩りで匂の宮一行を見て大君は傷心し、薫の看護もむなしく亡くなる。
48 早蕨(さわらび)
姉君の喪も明けたころ、中の君は匂の宮の二条の院に引き取られていった。老女弁の君は残って尼になった。薫は後見のない中の君のために尽くすが、匂の宮がともすれば二人の仲を疑われるので、中の君は苦慮する。
49 宿木(やどりぎ)
帝は母を亡くした女二の宮をいとおしみ、薫に降嫁を示唆する。翌年秋、匂の宮と六の宮の婚儀が行われ、中の君は妊娠中で不安に沈む。薫は中の君を慰め恋心を募らせるが、中の君は大君の面影を宿す浮舟の存在を知らせる。薫は宇治で浮舟の身の上を知り、中の君は翌二月、男皇子を出産して身分が安定する。同じ頃、薫と女二の宮も婚儀を行い、夏、宇治で浮舟を垣間見て大君に似ていることに心を動かされる。
50 東屋(あずまや)
浮舟の母は身分の低い浮舟のため高貴な縁談を望む。常陸介は財を蓄え、娘に多くの求婚者がいたが、左近少将を浮舟の婿として選ぶ。しかし左近少将は婚約を破棄し他の娘と結婚する。母は浮舟を二条の院に預け、浮舟と薫との結婚を望むが、匂の宮が浮舟に接近したため三条の小家に隠す。薫は弁の尼を通じて浮舟を宇治に連れ出し、安全に住まわせることを決め、浮舟を守り導くのであった。
51 浮舟(うきふね)
匂の宮は浮舟への思いを断ち切れず、宇治に隠れる浮舟を薫が庇護していることを知る。匂の宮は宇治に赴き、浮舟と契りを結び、一緒に過ごす日々が続く。薫も京に迎えようと準備するが、二人の使者が鉢合わせし事情が発覚。浮舟は苦悩し、宇治川に身を投げることを決意するなど、愛と葛藤の中で追い詰められる。
52 蜻蛉(かげろう)
浮舟失踪後、宇治の邸では女房たちが混乱する。匂の宮や京の母からも心配が届くが、世評を気にして葬儀を簡略に済ませる。薫も宇治を訪れ浮舟の入水を知り、母の悲しみを思いやり、四十九日の法要を盛大に営む。夏、明石中宮主催の法要で薫は女一の宮の美しさに惹かれ、それ以来中宮方に出入りするようになり、物語は次の展開に向かう。
53 手習(てならい)
同年三月末、横川の僧都の母尼と妹一行は初瀬詣の帰りに宇治川に宿泊。母尼の急病で加持祈祷中、庭の大木の下で倒れる浮舟を発見。妹尼は亡き娘の身代わりと喜び、浮舟を介抱し洛北の山荘へ連れ帰る。夏になっても回復せず、再度加持祈祷で快方に向かうが、浮舟は素性を明かさず、求婚も避ける。明石中宮の要請で下山する途中、浮舟は立ち寄った横川の僧都に懇願して出家した。横川の僧都は明石中宮に浮舟のことを語ったため、中宮は女房を通じて、薫に浮舟生存のこと知らせた。
54 夢浮橋(ゆめのうきはし)
薫は横川に登り僧都から浮舟の詳しい事情を聞く。再会を試みるが浮舟は頑なに拒み、手紙にも返事をせず、過去を夢のように語るだけ。薫は小君を通じて還俗を勧めるが、浮舟は対面を拒絶。浮舟は妹尼に、過去のことは一切夢かと思われると答えるのみであった。薫はかつての経験から誰かが浮舟を隠しているのではないかと疑い、愛と迷いの中で事態の真相を探ろうとする。
おわりに
今回は『源氏物語』とはどういうものかということについてお話しました。『源氏物語』は日本古典文学の最高峰と言われるだけあって、高校の授業でも、大学入試でもよく出てきます。その中でも有名なものを記事にしていきますので、出来上がったらぜひ読んでみてください。
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