このページでは、学生時代に国語が苦手だった筆者が、この順番で学べばテストで点数が取れ、一気に得意科目にできたという経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「これなら古文が理解できる!」という学ぶ手順も具体的に紹介していきます。「テスト対策」では、テスト前に「これだけは覚えておいてほしい」という項目をできるだけ絞って説明することで、読むだけでテスト対策が十分にできるものになっています。

「木曽殿の最期」テスト対策
『木曽殿の最期』の前半部において、テストに出そうな内容にできるだけ絞ってお話しましょう。テスト対策は次のような流れで行うとよいでしょう。このサイトは下記の流れで解説をしています。
テスト直前でもすべきことの基本は、「本文を読むこと」です。これまで学習した内容をしっかり思い出しながら読みましょう。
古文の問一は「よみ」の問題であることが多いですね。出題されるものは決まっているので、ここで落とさないように、しっかり確認しておくことです。
「どのような話」か、簡単に説明できる状態にしましょう。
今回は意味が問われそうな「重要古文単語」がたくさん出てきているので、ここで一気に覚えてしまいましょう!
ここでのメインになります。古文はどうしても「知識」を問う必要があるので、問われる箇所は決まってきます。それならば、「よく問われる」出題ポイントに絞って学習すれば、大きな失点は防げそうですね。このサイトでは「よく問われる」箇所のみを説明していますので、じっくり読んでみてください。
いわゆる「文学史」の問題です。テスト対策としては、それほど大きな点数にはならないので、時間がない場合は飛ばしてもよいかもしれません。
本文読解の一問一答を解答し、古典文法の問題を解答します。古典文法の問題は必ず出題されます。それは、直接「動詞の活用」や「助動詞の意味」を問うような問題だけでなく、現代語訳や解釈の問題などでも出題されます。必ず問題を解いて、できるようになっておきましょう。このサイトは文法事項の説明も充実しているので、詳しく知りたいときは、ぜひそれぞれの項目に進んで学習してみてください。
本文の確認
テスト直前でもすべきことの基本は、「本文を読むこと」です。これまで学習した内容をしっかり思い出しながら読みましょう。「テスト対策」はあえてふりがなをつけていません。不安な場合は、「読解のコツ」の「本文を読む」で確認してみてください。
木曽左馬頭、その日の装束には、赤地の錦の直垂に、唐綾をどしの鎧着て、鍬形うつたる甲の緒しめ、いかものづくりの大太刀はき、石打ちの矢の、その日のいくさに射て少々残つたるを頭高に負ひなし、滋籐の弓持つて、聞こゆる木曽の鬼葦毛といふ馬の、きはめて太うたくましいに、黄覆輪の鞍置いてぞ乗つたりける。鐙ふんばり立ちあがり、大音声をあげて名のりけるは、「昔は聞きけんものを、木曽の冠者、今は見るらん、左馬頭兼伊予守、朝日の将軍源義仲ぞや。甲斐の一条次郎とこそ聞け。互ひによい敵ぞ。義仲討つて兵衛佐に見せよや。」とて、をめいて駆く。一条次郎、「ただ今名のるは大将軍ぞ。余すなものども、漏らすな若党、討てや。」とて、大勢の中に取りこめて、我討つとらんとぞ進みける。木曽三百余騎、六千余騎が中を縦さま、横さま、蜘蛛手、十文字に駆け割つて、後ろへつつと出でたれば、五十騎ばかりになりにけり。そこを破つて行くほどに、土肥次郎実平、二千余騎でささへたり。それをも破つて行くほどに、あそこでは四五百騎、ここでは二三百騎、百四五十騎、百騎ばかりが中を駆け割り駆け割り行くほどに、主従五騎にぞなりにける。 五騎がうちまで巴は討たれざりけり。木曽殿、「おのれは疾う疾う、女なれば、いづちへも行け。我は討ち死にせんと思ふなり。もし人手にかからば、自害をせんずれば、木曽殿の最後のいくさに、女を具せられたりけりなんど言はれんこともしかるべからず。」とのたまひけれども、なほ落ちも行かざりけるが、あまりに言はれたてまつて、「あつぱれ、よからう敵がな。最後のいくさして見せたてまつらん。」とてひかへたるところに、武蔵の国に聞こえたる大力、御田八郎師重、三十騎ばかりで出できたり。巴その中へ駆け入り、御田八郎に押し並べて、むずととつて引き落とし、わが乗つたる鞍の前輪に押しつけて、ちつとも働かさず、首ねぢ切つて捨ててんげり。その後、物具脱ぎ捨て、東国の方へ落ちぞ行く。手塚太郎討ち死にす。手塚別当落ちにけり。(『平家物語』より)
読みで問われやすい語
青線部の読みができるようになっておきましょう。
- その日の装束には、赤地の錦の直垂に、唐綾をどしの鎧着て、鍬形うつたる甲の緒しめ、いかものづくりの大太刀はき、
- 鐙ふんばり立ちあがり、大音声をあげて名のりけるは、
- 左馬頭兼伊予守、
- 互ひによい敵ぞ。義仲討つて兵衛佐に見せよや。
- おのれは疾う疾う、女なれば、
解答はこちら(タップで表示)
「装束」は「そうぞく」、「直垂」は「ひたたれ」、「鎧」は「よろい」、「甲」は「かぶと」、「大太刀」は「おおだち」、「鐙」は「あぶみ」、「大音声」は「だいおんじょう」、「左馬頭」は「さまのかみ」、「伊予守」は「いよのかみ」、「敵」は「かたき」、「兵衛佐」は「ひょうえのすけ」、「疾う」は「とう」です。
あらすじの確認
- 木曽義仲(木曽殿)の武器や鎧、乗っている馬などを語り手(作者)が説明する
- 木曽殿が名乗りを挙げて、相手方に進軍する
- 甲斐一郎次郎が、土肥二郎実平の兵を突破する
- 木曽殿はとうとう残り5騎になる
- 木曽殿は寵愛する巴に逃げるよう説得する
- 巴は最後の戦いを仕掛け、東国へ落ちていく
出題ポイント
以下の3項目が何も見ずに訳すことができるか。確認してください。
- 昔は聞きけんものを、木曽の冠者、今は見るらん
- 女を具せられたりけりなんど言はれんこともしかるべからず
- あつぱれ、よからう敵がな
①昔は聞きけんものを、木曽の冠者、今は見るらん
(訳)はこちら(タップで表示)
→(訳)昔は聞いたであろうが、木曽の冠者(という勇猛な少年のこと)を、そして今は(その姿をお前たちは目の前に)見ているだろう
- ここはどのようなか場面かの説明
- 前半「昔は聞きけんものを」と後半「今は見るらん」の対比
この部分は、義仲が、敵である甲斐の一条次郎たちに向かって、威勢よく自分が大将の木曽義仲であることを宣言しているシーンです。
文法的には、「聞きけん」の「けん」が過去推量の助動詞「けむ」の連体形、「ものを」が逆接の接続助詞(〜が/〜のに)、「見るらん」の「らん」が現在推量の助動詞「らむ」の終止形です。「昔」と「けん」、「今」と「らん」を対応させているだけでなく、「聞く」と「見る」も対応させています。つまり、「昔は聞きけん」と「今は見るらん」が対句のような働きをしていて、文章に彩りを与えているわけです。
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②女を具せられたりけりなんど言はれんことも、しかるべからず
(訳)はこちら(タップで表示)
『女を連れていらっしゃったなあ』などと(敵に)言われるようなことも(将軍としての最期としては)ふさわしくない
- 「具せられたりけり」の訳出
- 「言はれんことも」の訳出
- 「しかるべからず」とはどのような意味か
「具せられたりけり」に、助動詞が3つ連なっています。「られ」が尊敬の助動詞「らる」の連用形、「たり」が完了の助動詞「たり」の連用形、「けり」はここを会話文ととらえて、詠嘆の助動詞「けり」の終止形としました。よって、
『女を連れていらっしゃったなあ』
と訳すことになります。ここは、相手に後になって「木曽殿は愛人を連れて戦を行っていた」と言われることは武士としては大きな屈辱だと感じている場面です。
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次に「言はれんことも」にも、助動詞が2つ連なっています。「れ」は受身の助動詞「る」の未然形、「ん」が婉曲の助動詞「む」の連体形です。よって、
言われるようなことも
と解釈できることになります。
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最後に、「しかるべからず」は、まず「しかるべし」という語の意味を考えます。「しかるべし」は「しく+ある+べし」がつづまった形の語で、「1適当だ、ふさわしい 2立派だ、優れている 3そうなる運命だ」などという意味がありますが、ここでは1の「ふさわしい」が文に合うでしょう。そうすると、「しかるべからず」なので「ふさわしくない」となりますが、何がふさわしくないのかというと、「木曽殿の最後の戦に女を連れていたと後になって言われてしまうこと」ということになるわけです。
③あつぱれ、よからう敵がな
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ああ、(木曽殿にお見せするのに)立派な敵がいるといいなあ。
- 「あっぱれ」の意味
- 「よからう敵」とはどのようなものか
- 「よからう敵がな」の訳出
「あつぱれ」は「あはれ」が促音便化したもので、語頭に単独で出てくるときは感動詞となります。賛美・感動して発する語で「ああ」と訳せます。
次に、「よからう敵がな」です。「よからう」はク活用の形容詞「よし」の未然形「よから」に婉曲の助動詞「む」の連体形がついたものです。「む」がウ音便になっていますが、現代語の「(手紙を)書こう」の「う」と同じです。ここを訳してみると、
良いような敵
となるのですが、これだけでは内容がよく分かりません。「良い」というのが、どう「良い」のか分からないからです。ここは、巴が「木曽殿に自分の最後の戦いとしてお見せするのにふさわしい良い(立派な)な敵」という意味になります。
次に「敵がな」の「がな」です。「がな」は終助詞で、自己の願望を表して「…がほしいなあ/…があればなあ」訳します。以上から、この部分は、
ああ、(木曽殿にお見せするのに)立派な敵がいるといいなあ。
と訳すことになるわけです。
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ここは、巴が木曽殿に自分のもとを去るように再三言われるので、それを受け入れて最後の戦をして、自分の姿を木曽殿の脳裏に焼き付けようと考えている場面です。巴の悲しみと覚悟が現れている言葉ですね。そこで巴は大力の御田八郎師重という人物を見つけて、あっさり勝利します。その後巴は退場ということになります。
文学史・文学作品の確認
今回の「木曽殿の最期」は『平家物語』の一節です。『平家物語』は、平家一門の盛衰を描く軍記物語(戦記物語)です。「諸行無常」、「盛者必衰」という仏教的無常観に基づいて平家の権勢の興隆もやがて衰えていくことを語っています。原作者・成立年代は分かっていませんが,13世紀の末には盲目の琵琶法師たちによって語り伝えられ、それが徐々に加筆・修正を加えられて今の形になったと考えられています。ただ、『徒然草』の中で、信濃前司行長が書いたとあります。
琵琶法師が話を語る形式のため、文章は口語体で読みやすく、音便も多く用いられています。また、現代の言葉と同じように、漢語と和語を融合させた文体です。これを「和漢混淆文」(わかんこんこうぶん)といいます。以上が簡単な『平家物語』の説明です。

練習問題(読解一問一答&文法問題)
では、上記の内容が本当に理解できたか、実際に問題を解きながら確認してみましょう。
読解一問一答 5選
1『平家物語』のジャンルと成立時代を答えなさい。
解答(タップで表示)
ジャンル:軍記物語(戦記物語) 時代:鎌倉時代(前期)
2「赤地の錦の直垂に、唐綾をどしの鎧着て、鍬形うつたる甲の緒しめ」の、「直垂」「鎧」「甲」の読みをそれぞれ現代仮名遣いで答えなさい。
解答(タップで表示)
直垂:ひたたれ 鎧:よろい 甲:かぶと
3「昔は聞きけんものを、木曽の冠者、今は見るらん」とあるが、「木曽の冠者」とは誰のことを言っているのか。また、これは誰が話している言葉か。
解答(タップで表示)
いずれも、木曽義仲(源義仲)
4「女を具せられたりけりなんど言はれんことも、しかるべからず。」を現代語訳しなさい。
解答(タップで表示)
『女を連れていらっしゃったなあ』などと(敵に)言われるようなことも(将軍としての最期としては)ふさわしくない。※「具す」「られ」「けり」「しかるべからず」それぞれを丁寧に訳しましょう!
5「あつぱれ、よからう敵がな」の「よからう敵」の意味がよく分かるように現代語訳しなさい。
解答(タップで表示)
ああ、(自分の最後の戦いで、)木曽殿にお見せするのに立派な敵がいるといいなあ。
文法の確認
今回は助動詞の確認です。
【問題】(1)(2)の文の青線部の助動詞の文法的意味を答えなさい。なお、文法的意味とは「完了」や「打消」などのことをいう。
- (1)一条次郎、「ただ今名のるは大将軍ぞ。余すなものども、漏らすな若党、討てや。」とて、大勢の中に取りこめて、我討つとら①んとぞ進み②ける。木曽三百余騎、六千余騎が中を縦さま、横さま、蜘蛛手、十文字に駆け割つて、後ろへつつと出で③たれば、五十騎ばかりになり④に⑤けり。
- (2)五騎がうちまで巴は討た⑥れ⑦ざり⑧けり。木曽殿、「おのれは疾う疾う、女なれば、いづちへも行け。我は討ち死にせ⑨んと思ふ⑩なり。もし人手にかからば、自害をせ⑪んずれば、木曽殿の最後のいくさに、女を具せ⑫られ⑬たり⑭けりなんど言は⑮れ⑯んこともしかるべからず。」とのたまひけれども、なほ落ちも行か⑰ざり⑱けるが、あまりに言は⑲れたてまつて、「あつぱれ、よからう敵がな。最後のいくさして見せたてまつら⑳ん。」とてひかへたるところに、武蔵の国に聞こえたる大力、御田八郎師重、三十騎ばかりで出できたり。
解答と解説はこちら(タップで表示)
【解答】
①意志 ②過去 ③完了 ④完了 ⑤過去 ⑥受身 ⑦打消 ⑧過去 ⑨意志 ⑩断定 ⑪意志 ⑫尊敬 ⑬完了 ⑭詠嘆 ⑮受身 ⑯婉曲 ⑰打消 ⑱過去 ⑲受身 ⑳意志
【解説】
①⑨⑯⑳は助動詞「む」が撥音便化したものです。
④完了の助動詞「ぬ」の連用形です。
⑪助動詞「むず」が撥音便化したものです。
⑭文法的意味を「詠嘆」にした理由は本編で説明しています。
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おわりに
今回は「木曽殿の最期」のうち、木曽殿の最後の戦いと、愛する巴と別れる場面までを読んでいきました。『平家物語』は「無常観」をベースにして文章が描かれているので、登場人物の最期も生き生きと描かれます。読んでいて辛くなる場面もありますが、テンポがよいので、非常に読んでいて心地の良い文章でもあります。ぜひ授業で読んだものだけでなく、その他の文章にも触れてもらいたいと思っています。この後、木曽殿が最期を迎える話は、第2回に続きます。続きの記事の閲覧を希望される人は下記の「会員限定記事の閲覧を希望する」をタップして会員登録(無料)を行ってください。
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