はじめに
自己紹介はこちら
先生、今日は「徒然草」ですね。「つれづれなるままに、ひぐらし…」って覚えたことがあるような気がします。
よく覚えていたね。それでは「徒然草」がどのような作品なのか、先に見ておこう!
文学作品・文学史について
今回は、「徒然草」の第136段をやっていきましょう。まず、「徒然草」ですが、これは古典三大随筆の一つで、兼好法師が独自の無常観に基づいて書いた、鎌倉時代末期の随筆です。「徒然草」特徴をまとめたものを、以下に示しておきます。
ちなみに、古典三大随筆とは、「枕草子」「方丈記」「徒然草」の3つを言います。
「方丈記」は聞いたことがないなあ。
初めて聞いたなら、こちらのページを見て、先に学習してもいいかもしれないね。
「丹波に出雲といふところあり」予習・読解編
今回は「徒然草」第136段で、多くの教科書では「丹波に出雲といふところあり」と題がつけられている文章です。細かい文法的知識は置いておいて、まずは大きく文章の内容を理解していくことから始めましょう。
することは以下の3つです。
1本文を読む
2登場人物の確認
3お話を簡単に理解
その後、重要古語の理解に進みましょう。
本文を読む
文をじっくり読んでみましょう。電車やバスの中では難しいですが、自宅で読んでいる時はぜひ声に出して読んでみてください。そうすると、読みにくい箇所が分かると思います。何度も本文を読んでみて、内容を想像してみるのが予習の最も大事なことです。その際、意味調べなどしないことがポイントです。
丹波に出雲といふ所あり。大社をうつして、めでたく造れり。しだのなにがしとかやしる所なれば、秋のころ、聖海上人、その外も、人あまた誘ひて、「いざ給へ、出雲拝みに。搔餅召させむ。」とて、具しもていきたるに、おのおの拝みて、ゆゆしく信おこしたり。御前なる獅子・狛犬、背きて、後ろさまに立ちたりければ、上人いみじく感じて、「あなめでたや。この獅子の立ちやう、いとめづらし。深き故あらん。」と涙ぐみて、「いかに殿ばら、殊勝のことは御覧じとがめずや。無下なり。」と言へば、おのおのあやしみて、「まことに他に異なりけり。都のつとに語らん。」など言ふに、上人なほゆかしがりて、おとなしく物知りぬべき顔したる神官を呼びて、「この御社の獅子の立てられやう、定めてならひあることに侍らん。ちと承らばや。」と言はれければ、「そのことに候ふ。さがなきわらはべどもの仕りける、奇怪に候ふことなり。」とて、さし寄りて、据ゑなほして去にければ、上人の感涙いたづらになりにけり。
登場人物の確認
しだのなにがし 聖海上人
人あまた 神官
お話を簡単に理解
・丹波の国の「出雲」という場所に分霊を写し迎えて社を建てる
・この地を治める「しだのなにがし」が、聖海上人や他にも大勢連れて参拝に行く
・神社では、門の側にある「獅子」「狛犬」が後ろを向いて立っている
・上人はその様子を見て何か「故」があるのだろうと感心する
・上人はその「故」をその神社の神官に尋ねる
・神官はけしからん悪ガキどもの仕業だと言う
重要古文単語の確認
本文に出てくる重要古文単語を先に確認しておきましょう
めでたし
「めでたし」(←「めで(愛で/賞で)」+「いたし(甚し/痛し)」)
(形容詞・ク活)
=すばらしい/立派だ
「めでたく作れり」だよ。
「非常に(←いたし)すばらしく褒め称えられる(←めづ)状態」を表す言葉です。ついでに、「いたし」(=非常に)「めづ」(=ほめる)も覚えましょう。
しる
「しる」(動詞・ラ四)
1(知る)知る、分かる
2(領る)治める、領有する
「しだのなにがしとかやしる所なれば」です。2の「領る」が使われているよ。
あまた
「あまた」(数多)(副詞)=たくさん
「人あまた誘ひて」だけど、なんとなく意味は分かるね。「あまった」から「たくさん」なんて覚えるのもいいかも!
具す
「具す」(動詞・サ変)
=連れる、ともに行く
「具しもていきたるに」ですが、「具す」はサ行変格活用の動詞ということもよく出題されるよ。
「具」は訓読みすると「とも(に)」とも読める(別に「つぶさ(に)」とも読みます)ことを知っておくと、意味が分かりやすいでしょう。
ゆゆし
「ゆゆし」(忌忌し)(形容詞・シク活)
1不吉だ、恐ろしい
2たいそうすばらしい/ひどい
3(「ゆゆしく」で)たいそう、非常に
いみじ
「いみじ」(忌みじ)(形容詞・シク活)
1(「いみじく」で)たいそう、非常に
2たいそうすばらしい/ひどい
「ゆゆしく信おこしたり」です。ここでは、よく似た語の「いみじ」も、まとめて覚えてしまいましょう!「いみじ」はすぐ後に出てきます。
「ゆゆし」と「いみじ」は、実は同じ漢字「忌」を当てる(忌忌し/忌みじ)ので、ほほ同じ意味の語になります。ただし、「ゆゆし」には「不吉だ」という意味がより強いということを忘れないでください。また、どちらも連用形で「非常に」と、次の言葉を強調する働きとして使われることが多いです。ただし、ここでも「ゆゆし」は、「不吉なくらい非常に」というニュアンスが含まれています。
ゆゑ
「ゆゑ」(故)(名詞)
=理由/情趣/由緒
「深きゆえあらん」だね。漢字にするとなんとか意味が分かるかな。
むげなり
「無下なり」(形容動詞・ナリ活)
=(まったく)ひどい
本文12行目にあります。「下がない」ということは「一番下である」ということです。
ゆかし
「ゆかしがる」(動詞・ラ四)=〜したい気持ちにかられる
⇑「ゆかし」(形容詞・シク活)
=心がひかれる/〜したい
(見る、聞く、知る、行く 等)
「上人なほゆかしがりて」ですが、「ゆかし」を覚えていたら動詞の「ゆかしがる」は分かります。
「ゆかし」を理解してから「ゆかしがる」を知る順番です。先に「ゆかし」を覚えましょう。漢字で「行かし」と書き、「気持ちがそちらに行く」から「(それを)したい」という意味になります。
おとなし
「大人し」(形容詞・シク活)
1大人である
2落ち着いている、思慮分別がある
「おとなしく物知りぬべき神官」だね。今の「おとなしい」とは少し違う意味らしいけど・・・
「おとなし」は文字通り「大人」だということです。「大人」とは、「物事における善悪の判断ができる」人のことを言うので、2の意味が発生するのです。(そもそも最近の大人は本当にできていますかね。自省の意味も込めて…)
さがなし
「性無し」(形容詞・ク活)=性質が悪い
(→口が悪い/意地が悪い/やんちゃだ)
「さがなきわらはべどもの仕りける」だね、「さがなき」って僕のことじゃないよね!?
「性(さが)」が「良くない」という意味から来ています。
つかまつる
「つかまつる」(動詞・ラ四)
1お仕えする 2〜し申し上げる
「仕る」と書きます。また、「つかうまつる」となる場合もあります。謙譲語の動詞ですが、漢字から分かる通り、誰かに「お仕えする」という意味ですが、「仕える」という意味が取れて、「す」の謙譲語となることもあります。何を「する」のかは、文章から判断してください。ここでは「いたずらをする」です。
いたづらなり
「いたづらなり」(形容動詞・ナリ活)
=ムダだ/むなしい
「上人の感涙いたづらになりにけり」だね。せっかく感動したのに、がっかりだったよ。
「徒ら」と漢字で書きます。
理解しにくい箇所の解説を見る
古文単語が理解できたら、以下の5箇所をマスターしよう!
- ①いざ、たまへ、出雲拝みに。 かひもちひ召させむ。
- ②上人なほゆかしがりて、おとなしくもの知りぬべき顔したる神官を呼びて、
- ③ちと承らばや
- ④さがなき童べどものつかまつりける、奇怪に候ふことなり
- ⑤上人の感涙いたづらになりにけり
①までのあらすじです。
丹波の国に「出雲」という所がありました。出雲大社の分霊を移して社を作ったそうです。その社へ領主の「しだのなにがし」が「聖海上人」等多くの人を誘います。
①いざ、たまへ、出雲拝みに。 かひもちひ召させむ。
→(訳)さあ、いらっしゃい、出雲へ参拝に参りましょう。ぼたもちをごちそうしますよ。
「いざ、たまへ」はよく出てくる慣用表現で、「さあ、いらっしゃい」と訳します。
「出雲拝みに」は、「参りましょう」と補うと解釈が容易です。
「かひもちひ」は「ぼたもち」のことで、「召す」は「食ふ」の尊敬語で、「召し上がる」です。
「せ」は使役の助動詞「す」の未然形(=〜させる)、「む」は意志の助動詞「む」の終止形(=〜しよう)です。いよいよ助動詞も少しずつ理解できるようになっていきましょう。
【まずは、助動詞とはどういうものかを知りたい人は以下をご覧ください】
それらを合わせると、「召させむ」は「召し上がらせよう」が直訳になりますが、要するに「ごちそうしよう」ということですね。
みんなで「出雲」に参拝します。それぞれが拝んで、信心を起こし(神を崇め)ます。神社の前には、獅子・狛犬がありますが、なぜか後ろ向きで立っています。それを見て上人は強く感動します。一方、周りの人はそんなこと気にも止めません。上人の非難の声によって、他の人々も後ろ向きの獅子・狛犬に関心を寄せました。一方、上人は……。
②上人なほゆかしがりて、おとなしくもの知りぬべき顔したる神官を呼びて
→(訳)上人はさらに知りたくなって、落ち着いた雰囲気の、ものを知っていそうな顔をしている神官を呼んで
「なほ」は「さらに」という意味、「ゆかしがる」は「〜したいと思う」(ここでは「知りたい」)、「おとなし」は「落ち着いた/思慮分別がある」という意味です。
「ぬべき」は強意の助動詞「ぬ」の終止形と推量の助動詞「べし」の連体形がくっついた形で、「(きっと)〜しそうな」と訳すとうまくいきます。
③ちと承らばや
→(訳)ちょっとお聞き申し上げたい
「ちと」は「ちょっと」、「承る」は「聞く」の謙譲語で、「お聞き申し上げる」と訳します。
「ばや」は助詞なのですが、文末に来るので終助詞と呼ばれるものです。自己の希望を表し、「〜したい」という意味を表します。
神官は、なんて言ったのかな。期待通りの「言われ」があるのかな??
④さがなき童べどものつかまつりける、奇怪に候ふことなり
→(訳)やんちゃな悪ガキどもがいたしたことで、けしからぬことでございます。
「さがなし」は「性質が悪い」、「つかまつる」は「〜し申し上げる/いたす」という意味でしたね。「奇怪に候ふ」は大抵の教科書で注がついており「けしからんことでございます」と訳しています。「候ふ」は丁寧語の補助動詞で、「です、ます、ございます」という意味です。
神官は獅子・狛犬をもとの位置に直して、去って行っちゃった!
⑤上人の感涙いたづらになりにけり
→(訳)上人の感動の涙はむだになってしまった
「いたづらなり」は「ムダだ」という意味でした。
「にけり」は文法の問題でよく出題されます。割と学習が進んでいる人も「に」が完了の助動詞「ぬ」の連用形だと気づかない人が多いためです。「けり」は過去の助動詞です。訳は2つ合わせて「〜た/〜てしまった」となります。これが今回の話のオチになります。
ここで、一つ皆さんに考えてほしいことがあります。
この文章は、結局作者が何を批判しているのでしょうか。ぜひそれを考えてから学校の授業を受けてもらえたらと思います。きっと、あなたの理解は120%深まっていることでしょう。
テスト対策
それでは、テスト対策に移ります。時間がある人は順番に見ていってください。時間のない人は目次から必要な項目を見てもらえばよいと思います。
本文の確認
テスト直前でもすべきことの基本は、「本文を読むこと」です。これまで学習した内容をしっかり思い出しながら読みましょう。「テスト対策」はあえてふりがなをつけていません。不安な場合は、予習・解説編の「本文を読む」で確認してみてください。
丹波に出雲といふ所あり。大社をうつして、めでたく造れり。しだのなにがしとかやしる所なれば、秋のころ、聖海上人、その外も、人あまた誘ひて、「いざ給へ、出雲拝みに。搔餅召させん。」とて、具しもていきたるに、おのおの拝みて、ゆゆしく信おこしたり。御前なる獅子・狛犬、背きて、後さまに立ちたりければ、上人いみじく感じて、「あなめでたや。この獅子の立ちやう、いとめづらし。深き故あらん。」と涙ぐみて、「いかに殿ばら、殊勝のことは御覧じとがめずや。無下なり。」と言へば、おのおのあやしみて、「まことに他に異なりけり。都のつとに語らん。」など言ふに、上人なほゆかしがりて、おとなしく物知りぬべき顔したる神官を呼びて、「この御社の獅子の立てられやう、定めてならひあることに侍らん。ちと承らばや。」と言はれければ、「そのことに候ふ。さがなきわらはべどもの仕りける、奇怪に候ふことなり。」とて、さし寄りて、据ゑなほして去にければ、上人の感涙いたづらになりにけり。
これらの単語の意味が分かっていると、圧倒的に読みやすいよ。
「めでたし」「しる」「あまた」「具す」「ゆゆし」「いみじ」「故」「無下なり」「ゆかしがる」「おとなし」「さがなし」「つかまつる」「いたづらなり」
読みで問われやすい語
「御前」「上人」「故」「御社」「承る」「候ふ」「仕る」の7つです。「おまえ」「しょうにん」「ゆえ」「みやしろ」「うけたまわる」「そうろう」「つかまつる」です。これらはすべて現代仮名遣いで示しています。古文単語の問題として問われるものも多いですね。ちなみに、「候ふ」は男性が話しているので「そうろう」と読んでいます。(女性の場合は「さぶらふ」です。またいつかこの話もします。)
あらすじの確認
第一段落
・丹波の国の「出雲」という場所に分霊を写し迎えて社を建てる
・この地を治める「しだのなにがし」が、聖海上人や他にも大勢連れて参拝に行く
第二段落
・神社では、門の側にある「獅子」「狛犬」が後ろを向いて立っている
・上人はその様子を見て何か「故」があるのだろうと感心する
・上人はその「故」をその神社の神官に尋ねる
・神官はけしからん悪ガキどもの仕業だと言う
古文単語の確認
今回はたくさんの重要語が出てくるので、ここで一気に覚えてしまいましょう。ここでは、単語とその訳のみを一覧で示します。
「めでたし」(←「めで(愛で/賞で)」+「いたし(甚し/痛し)」)
(形容詞・ク活)
=すばらしい/立派だ
「しる」(動詞・ラ四)
1(知る)知る、分かる
2(領る)治める、領有する
「あまた」(数多)(副詞)=たくさん
「具す」(動詞・サ変)
=連れる、ともに行く
「ゆゆし」(忌忌し)(形容詞・シク活)
1不吉だ、恐ろしい
2たいそうすばらしい/ひどい
3(「ゆゆしく」で)たいそう、非常に
「ゆゑ」(故)(名詞)
=理由/情趣/由緒
「無下なり」(形容動詞・ナリ活)
=(まったく)ひどい
「ゆかしがる」(動詞・ラ四)=〜したい気持ちにかられる
⇑「ゆかし」(形容詞・シク活)
=心がひかれる/〜したい
(見る、聞く、知る、行く 等)
「し」(形容詞・シク活)
1大人である
2落ち着いている、思慮分別がある
「し」(形容詞・ク活)=性質が悪い
(→口が悪い/意地が悪い/やんちゃだ)
「つかまつる」(動詞・ラ四)
1お仕えする 2〜し申し上げる
「いたづらなり」(形容動詞・ナリ活)
=ムダだ/むなしい
出題ポイント
以下の5項目が何も見ずに訳すことができるか。確認してください。
- いざ、たまへ、出雲拝みに。 かひもちひ召させむ。
- 上人なほゆかしがりて、おとなしくもの知りぬべき顔したる神官を呼びて、
- ちと承らばや
- さがなき童べどものつかまつりける、奇怪に候ふことなり
- 上人の感涙いたづらになりにけり
いざ、たまへ、出雲拝みに。 かひもちひ召させむ。
《出題ポイント!》
「いざ、たまへ」の訳出。
「出雲拝みに」の後の言葉を補う。
「かひもちひ召させむ」とはどういうことかの説明。
→(訳)さあ、いらっしゃい、出雲へ参拝に参りましょう。ぼたもちをごちそうしますよ。
「いざ、たまへ」はよく出てくる慣用表現で、「さあ、いらっしゃい」と訳します。
「出雲拝みに」は、「参りましょう」と補うと解釈が容易です。
「かひもちひ」は「ぼたもち」のことで、「召す」は、ここでは「食ふ」の尊敬語で「召し上がる」です。「せ」は使役の助動詞「す」の未然形(=〜させる)、「む」は意志の助動詞「む」の終止形(=〜しよう)です。以上から、「かひもちひ召させむ」は「ぼたもちを召し上がらせよう」ですが、意味が分かるように言い換えると「ぼたもちをごちそうしましょう」ということになります。
上人なほゆかしがりて、おとなしくもの知りぬべき顔したる神官を呼びて、
《出題ポイント》
「ゆかしがりて」とは具体的にどのように思ったのか。
「おとなしくもの知りぬべき顔」とは誰のどのような様子かを説明させる。
→(訳)上人はさらに知りたくなって、落ち着いた雰囲気の、ものを知っていそうな顔をしている神官を呼んで
「なほ」は「さらに」という意味、「ゆかしがる」は「〜したいと思う」ですが、ここでは「知りたい」という意味になります。
「おとなし」は「落ち着いた/思慮分別がある」という意味です。「ぬべき」は強意の助動詞「ぬ」の終止形と推量の助動詞「べし」の連体形がくっついた形で、「(きっと)〜しそうな」と訳すとうまくいきます。以上から、「おとなしくもの知りぬべき顔」というのは、落ち着いた雰囲気の、ものを知っていそうな様子の神官の様子を表しているわけです。
ちと承らばや
《出題ポイント!》
「ちと承らばや」の訳出。
何を「承らばや」なのか。
→(訳)ちょっとお聞き申し上げたい(うかがいたい)
「ちと」は「ちょっと」、「承る」は「聞く」の謙譲語で、「お聞き申し上げる」と訳します。
「ばや」は助詞なのですが、文末に来るので終助詞と呼ばれるものです。自己の希望を表し、「〜したい」という意味を表します。上人が聞きたいことは「獅子・狛犬が後ろを向いているいわれ」ですね。二十字以内で説明が求められるかもしれません。
さがなき童べどものつかまつりける、奇怪に候ふことなり
《出題ポイント!》
「さがなき童べども」とはどんな子どもたちか。
「つかまつりける」とは何をしたのか。
「奇怪に候ふ」とは、誰のどのような思いか。
→(訳)やんちゃな悪ガキどもがいたしたことで、けしからぬことでございます。
「さがなし」は「性質が悪い」、「つかまつる」は「〜し申し上げる/いたす」という意味です。具体的には、「さがなき童べ」が「獅子・狛犬を後ろ向きにした」ことを指しています。
「奇怪に候ふ」は大抵の教科書で注がついており「けしからんことでございます」と訳しています。「候ふ」は丁寧語の補助動詞で、「です、ます、ございます」という意味です。「さがなき童べ」が「獅子・狛犬を後ろ向きにした」ことで「神官がけしからんことだと怒っている」という内容です。
上人の感涙いたづらになりにけり
《出題ポイント!》
「いたづらになりにけり」の訳出。
「上人の感涙」とは、何に感動して涙を流したのかを説明する。
→(訳)上人の感動の涙はむだになってしまった。
「いたづらなり」は「ムダだ」という意味です。初めて来た出雲の神社の獅子・狛犬が後ろを向いているのに何かいわれがあるのだろうと感動していたら、実際は子どものいたずらだったというオチでした。
ところで、「なりにけり」の「にけり」は文法の問題でよく出題されます。割と学習が進んでいる人も「に」が完了の助動詞「ぬ」の連用形だと気づかない人が多いためです。「けり」は過去の助動詞です。訳は2つ合わせて「〜た/〜てしまった」となります。
文学作品・文学史の確認
今回の出典である『徒然草』は、古典三大随筆の一つで、兼好法師が独自の無常観に基づいて書いた、鎌倉時代末期の随筆です。「徒然草」特徴をまとめたものを、以下に示しておきます。
古典三大随筆とは、『枕草子』『方丈記』『徒然草』だったね。
文法の確認
今回は助動詞の問題です。助動詞はたくさんありますが、本文に使われている助動詞の中で、「ず」と「る」「らる」、「す」(「さす」「しむ」)を確認します。助動詞の一覧を以下に示します。
本文中の青太字の助動詞の意味と活用形を答えなさい。
丹波に出雲といふ所あり。大社を移して、めでたく造れり。しだのなにがしとかやしる所なれば、秋のころ、聖海上人、そのほかも、人あまた誘ひて、「いざ、たまへ、出雲拝みに。かいもちひ召さ①せむ。」とて、具しもて行きたるに、おのおの拝みて、ゆゆしく信おこしたり。
御前なる獅子・狛犬、背きて、後ろさまに立ちたりければ、上人いみじく感じて、「あなめでたや。この獅子の立ちやう、いとめづらし。深きゆゑあらむ。」と涙ぐみて、「いかに殿ばら、殊勝のことは御覧じとがめ②ずや。むげなり。」と言へば、おのおのあやしみて、「まことに他に異なりけり。都のつとに語らむ。」など言ふに、上人なほゆかしがりて、おとなしくもの知りぬべき顔したる神官を呼びて、「この御社の獅子の立て③られやう、さだめて習ひあることにはべらむ。ちと承らばや。」と言は④れければ、「そのことに候ふ。さがなき童べどものつかまつりける、奇怪に候ふことなり。」とて、さし寄りて、すゑ直して往にければ、上人の感涙いたづらになりにけり。
解答は以下のとおりです。
①使役・未然形 ②打消・終止形 ③受身・連用形 ④尊敬・連用
※③は下に名詞が来ているのに連用形なのは、おそらく「られ」と「やう」の間に「てある」が省略されているからだと考えられます。現代でも「家の建てられ方」などと使いますが、「建てられ(ている)方法」という解釈になりますからね。
おわりに
今回は『徒然草』の第136段、「丹波に出雲といふ所あり」についてお話しました。テスト直前でも時間をかけて復習するのは本文の内容ですよ。だって、一番配点が大きいのはそこですからね。それでは、またお会いしましょう。
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