「丹波に出雲といふところあり」『徒然草』読解のコツ&現代語訳

 このページでは、学生時代に国語が苦手だった筆者が、この順番で学べば文章の内容が分かるようになり、一気に得意科目にできたという経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「これなら古文が理解できる!」という学ぶ手順を具体的に紹介していきます。読んでいくだけで、文章の内容が分かるようになります。また、テスト前に学習すると、これだけ覚えておいたらある程度の点数は取れるという「テスト対策」にも多くの分量を割いて説明します。

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ブログの性質上、理解していくためにはどうしても文章を「自分で」「丁寧に」読んで行く必要があります。「自分一人で文章を読む」よりも、きちんと先生に文章の内容を説明をしてほしい、先生に読解を伴走してほしいという人は、以下の個別指導塾をオススメします。まずは資料請求をして、自分に合うかどうかを確認してみましょう。詳しくは下のバナーをタップ!

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目次

はじめに

 今回は『徒然草』の中のお話です。まず『徒然草』がどのような作品なのか、先に見ておきましょう。

文学作品・文学史について

 今回は、徒然草つれづれぐさの第136段をやっていきましょう。まず、「徒然草」ですが、これは古典三大随筆の一つで、兼好法師が独自の無常観に基づいて書いた、鎌倉時代末期随筆です。「徒然草」特徴をまとめたものを、以下に示しておきます。

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ちなみに、古典三大随筆とは、「枕草子」「方丈記」「徒然草」の3つを言います。

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「丹波に出雲といふところあり」読解のコツ&現代語訳

 古文を読解する6つのコツをお話しましょう。以下の順に確認していくと以前よりも飛躍的に古文が読めるようになるはずです。

STEP
本文を読む

何度も本文を読んでみて(できれば声に出して)、自分なりに文章の内容を想像してみます。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」「どのようなことを言っているか」「どのような行動をしているか」を考えていきます。

STEP
登場人物を確認する

本文にどのような人物が出てきているか、確認します。紙で文章を読むときは、鉛筆などで▢をつけるとよりよいでしょう。

STEP
内容を大まかに把握し、説明する

簡単でもよいので、誰かに「こんなお話」だと説明できる状態にします。ここでは、合っているかどうかは関係ありません。今の段階で、こんな話じゃないかなと考えられることが大切なのです。考えられたら、実際にこの項目をみてください。自分との違いを確認してみましょう。

STEP
重要単語を確認して覚える

古文を読解する上で避けられないのは、「古文単語」を覚えることです。単語集で覚えるのもよいですが、文章の中で覚えられるともっといいですね。文章で出てきた単語は、他の文章でも使えるように解説していますので、応用を利かせたい人はぜひそこまで読んでみてくださいね。また、古文単語は意味だけでなく、その語が発生した経緯などが分かると面白いですよ。

STEP
理解しにくい箇所の解説を見る

古文を読んでいると、どうしても自力では分からない所がでてきます。ちなみに、教科書などでは注釈がありますが、注釈があるところは注釈で理解して構いません。それ以外のところで、多くの人が詰まるところがありますが、丁寧に解説しているので見てみてください。

STEP
改めて本文を解釈する

step5とstep6は並行して行います。きっと、随分と読めるようになっているはずです。

本文を読む

 何度も本文を読んでみて、自分なりに文章の内容を想像してみましょう。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」、「どのようなことを言っているか」、「どのような行動をしているか」を考えていきます。

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 (たん)()出雲(いづも)といふ(ところ)あり。(おほ)(やしろ)をうつして、めでたく(つく)れり。しだのなにがしとかやしる(ところ)なれば、(あき)のころ、(しやう)(かい)(しやう)(にん)、その(ほか)も、(ひと)あまた(さそ)ひて、「いざ(たま)へ、出雲(いづも)(をが)みに。(かい)(もちひ)()させむ。」とて、()しもていきたるに、おのおの(をが)みて、ゆゆしく(しん)おこしたり。()(まへ)なる()()(こま)(いぬ)(そむ)きて、(うし)ろさまに()ちたりければ、(しやう)(にん)いみじく(かん)じて、「あなめでたや。この()()()ちやう、いとめづらし。(ふか)(ゆゑ)あらん。」と(なみだ)ぐみて、「いかに殿(との)ばら、(しゆ)(しよう)のことは()(らん)じとがめずや。()()なり。」と()へば、おのおのあやしみて、「まことに()(こと)なりけり。(みやこ)のつとに(かた)らん。」など()ふに、(しやう)(にん)なほゆかしがりて、おとなしく(もの)()りぬべき(かほ)したる(じん)(ぐわん)()びて、「この()(やしろ)()()()てられやう、(さだ)めてならひあることに(はべ)らん。ちと(うけたまは)らばや。」と()はれければ、「そのことに(さうら)ふ。さがなきわらはべどもの(つかまつ)りける、()(くわい)(さうら)ふことなり。」とて、さし()りて、()ゑなほして()にければ、(しやう)(にん)(かん)(るい)いたづらになりにけり。(『徒然草』より)

 文章を読むことができたら、下の「登場人物の確認」「内容を簡単に理解」を読んで、自分の理解と合っていたかを確認します。

登場人物の確認

  • しだのなにがし 
  • 聖海上人 
  • 人あまた 
  • 神官

お話を簡単に理解

  • 丹波の国の「出雲」という場所に分霊を写し迎えて社を建てる
  • この地を治める「しだのなにがし」が、聖海上人や他にも大勢連れて参拝に行く
  • 神社では、門の側にある「獅子」「狛犬」が後ろを向いて立っている
  • 上人はその様子を見て何か「ゆゑ」があるのだろうと感心する
  • 上人はその「故」をその神社の神官に尋ねる
  • 神官はけしからん悪ガキどもの仕業だと言う

重要古文単語の確認

本文に出てくる重要古文単語を先に確認しておきましょう

めでたし

「めでたし」(←「めで(愛で/賞で)」+「いたし(甚し/痛し)」)
(形容詞・ク活)
 =すばらしい/立派だ

 「非常に(←いたし)すばらしく褒め称えられる(←めづ)状態」を表す言葉です。ついでに、「いたし」(=非常に)「めづ」(=ほめる)も覚えましょう。

しる

「しる」(動詞・ラ四)
 1(知る)知る、分かる 
 2(る)治める、領有する

あまた

「あまた」(数多)(副詞)=たくさん

具す

「具す」(動詞・サ変)
 =連れる、ともに行く

「具」は訓読みすると「とも(に)」とも読める(別に「つぶさ(に)」とも読みます)ことを知っておくと、意味が分かりやすいでしょう。

ゆゆし

「ゆゆし」(形容詞・シク活)
 1不吉だ、恐ろしい
 2たいそうすばらしい/ひどい
 3(「ゆゆしく」で)たいそう、非常に

いみじ

「いみじ」(形容詞・シク活)
 1(「いみじく」で)たいそう、非常に
 2たいそうすばらしい/ひどい

「ゆゆし」と「いみじ」は、実は同じ漢字「忌」を当てる(し/みじ)ので、ほほ同じ意味の語になります。ただし、「ゆゆし」には「不吉だ」という意味がより強いということを忘れないでください。また、どちらも連用形で「非常に」と、次の言葉を強調する働きとして使われることが多いです。ただし、ここでも「ゆゆし」は、「不吉なくらい非常に」というニュアンスが含まれています。

ゆゑ

「ゆゑ」(故)(名詞)
 =理由/情趣/由緒

むげなり

無下むげなり」(形動・ナリ活)
 =(まったく)ひどい

「下がない」ということは「一番下である」ということです。

ゆかし

「ゆかしがる」(動詞・ラ四)=〜したい気持ちにかられる
 ⇑
「ゆかし」(形容詞・シク活)
   =心がひかれる/〜したい
  (見る、聞く、知る、行く 等)

「ゆかし」を理解してから「ゆかしがる」を知る順番です。先に「ゆかし」を覚えましょう。漢字で「行かし」と書き、「気持ちがそちらに行く」から「(それを)したい」という意味になります。

おとなし

大人おとなし」(形容詞・シク活)
 1大人である
 2落ち着いている、思慮分別がある

「おとなし」は文字通り「大人」だということです。「大人」とは、「物事における善悪の判断ができる」人のことを言うので、2の意味が発生するのです。(そもそも最近の大人は本当にできていますかね。自省の意味も込めて…)

さがなし

性無さがなし」(形容詞・ク活)=性質が悪い
(→口が悪い/意地が悪い/やんちゃだ)

「性(さが)」が「良くない」という意味から来ています。

つかまつる

「つかまつる」(動詞・ラ四)
 1お仕えする 2〜し申
し上げる

「仕る」と書きます。また、「つかうつこうまつる」となる場合もあります。謙譲語の動詞ですが、漢字から分かる通り、誰かに「お仕えする」という意味ですが、「仕える」という意味が取れて、「す」の謙譲語となることもあります。何を「する」のかは、文章から判断してください。ここでは「いたずらをする」です。

いたづらなり

「いたづらなり」(形動・ナリ活)
 =ムダだ/むなしい

「徒ら」と漢字で書きます。

理解しにくい箇所の解説を見る

  本文を読んで自分で内容を考えていったときに、おそらく以下の箇所が理解しにくいと感じたでしょう。その部分を詳しく説明します。解説を読んで、理解ができたら改めて本文を解釈してみてください。

  • いざたまへ、出雲拝みに。かいもちひ召させむ。
  • 上人なほゆかしがりて、おとなしくもの知りぬべき顔したる神官を呼びて、
  • ちと承らばや
  • さがなき童べどものつかまつりける、奇怪に候ふことなり
  • 上人の感涙いたづらになりにけり

丹波の国に「出雲」という所がありました。出雲大社の分霊を移して社を作ったそうです。その社へ領主の「しだのなにがし」が「聖海上人」等多くの人を誘います。

では、「重要単語の確認」で出てきた古文単語を覚えたという前提で、①までの文章を解釈してみましょう。

 丹波に出雲といふ所あり。大社をうつして、めでたく造れり。しだのなにがしとかやしる所なれば、秋のころ、聖海上人、その外も、人あまた誘ひて、

(訳)はこちら(タップで表示)

 丹波の国に出雲という所がある。出雲大社を勧請して、(社殿を)立派に造ってある。しだのなにがしとかいう人が領有する所なので、(そのしだのなにがしが)秋のころに、聖海上人やその他にも、人を多く誘って、

ここで間違いやすいのは、「人あまた誘ひて」の主語です。多くの人が「聖海上人が」と言ってしまいますが、正しくは「しだのなにがしが」です。

①いざたまへ、出雲拝みに。 かひもちひ召させむ。

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さあ、いらっしゃい、出雲へ参拝に参りましょう。ぼたもちをごちそうしましょう。

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「いざたまへ」はよく出てくる慣用表現で、「さあ、いらっしゃい」と訳します。
「出雲拝みに」は、「参りましょう」と補うと解釈が容易です。
「かひもちひ」は「ぼたもち」のことで、「召す」は「食ふ」の尊敬語で、「召し上がる」です。
「せ」は使役の助動詞「す」の未然形(=〜させる)、「む」は意志の助動詞「む」の終止形(=〜しよう)です。助動詞も少しずつ理解できるようになっていきましょう。

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それらを合わせると、「召させむ」は「召し上がらせよう」が直訳になりますが、要するに「ごちそうしよう」ということですね。

その後、みんなで「出雲」の参拝します。それぞれが拝んで、信心を起こし(神を崇め)ます。神社の前には、獅子・狛犬がありますが、なぜか後ろ向きで立っています。それを見て上人は強く感動します。一方、周りの人はそんなこと気にも止めません。上人の非難の声によって、他の人々も後ろ向きの獅子・狛犬に関心を寄せました。一方上人はというと……。

それでは、②までの文章を解釈してみましょう。先ほどと同様に「重要単語の確認」で出てきた古文単語を覚えたというのが前提になります。

「いざ給へ、出雲拝みに。かいもちひ召させん。」とて、具しもていきたるに、おのおの拝みて、ゆゆしく信おこしたり。御前なる獅子・狛犬、背きて、後ろさまに立ちたりければ、上人いみじく感じて、「あなめでたや。この獅子の立ちやう、いとめづらし。深きあらん。」と涙ぐみて、「いかに殿ばら、殊勝のことは御覧じとがめずや。むげなり。」と言へば、おのおのあやしみて、「まことに他に異なりけり。都のつとに語らん。」など言ふに、

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さあ、いらっしゃい、出雲へ参拝に参りましょう。ぼたもちをごちそうしましょう。」と言って、一緒に連れて行ったところ、それぞれが参拝して、たいそう信仰心を起こした。(そのとき、)拝殿の前にある獅子と狛犬が、背中を向けて、後ろ向きに立っていたので、上人はとても感心して、「ああすばらしいなあ。この獅子の立ち方は、たいそうすばらしい。深いいわれ(理由)があるのだろう。」と涙ぐんで、「なんとまあ皆さん、(この)すばらしいことをご覧になって気になられませんか。(それは)あんまり(ひどい)です。」と言うので、それぞれ不思議がって、「本当に他(の獅子・狛犬の置き方)とは違っているなあ。都への土産話として語ろう。」などと言うと、

②上人なほゆかしがりて、おとなしくもの知りぬべき顔したる神官を呼びて

(訳)はこちら(タップで表示)

上人はさらに知りたくなって、落ち着いた雰囲気の、ものを知っていそうな顔をしている神官を呼んで 

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「なほ」は「さらに」という意味、「ゆかしがる」は「〜したいと思う」(ここでは「知りたい」)、「おとなし」は「落ち着いた/思慮分別がある」という意味です。
「ぬべき」は強意の助動詞「ぬ」の終止形と推量の助動詞「べし」の連体形がくっついた形で、「(きっと)〜しそうな」と訳すとうまくいきます。 

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では、「重要単語の確認」で出てきた古文単語を覚えた前提で、③までの文章を解釈してみましょう。

上人なほゆかしがりて、おとなしく物知りぬべき顔したる神官を呼びて、「この御社の獅子の立てられやう、定めてならひあることに侍らん。

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上人はさらに知りたくなって落ち着いた雰囲気の、ものを知っていそうな顔をしている神官を呼んで 「この御社の獅子のお立てになる(その)仕方は、きっといわれのあることでしょう。

③ちと承らばや

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→(訳)ちょっとお聞き申し上げたい

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「ちと」は「ちょっと」、うけたまはる」は「聞く」の謙譲語で、「お聞き申し上げる」と訳します。
「ばや」は助詞なのですが、文末に来るので終助詞と呼ばれるものです。自己の希望を表し、「〜したい」という意味を表します。

④さがなき童べどものつかまつりける、奇怪に候ふことなり

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いたずらな子どもたちがいたしたことで、けしからぬことでございます。

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「さがなし」は「性質が悪い」「つかまつる」「〜し申し上げる/いたす」という意味でしたね。「奇怪に候ふ」は大抵の教科書で注がついており「けしからんことでございます」と訳しています。「候ふ」は丁寧語の補助動詞で、「です、ます、ございます」という意味です。

では、④までの文章を解釈してみましょう。

ちと承らばや。」と言はれければ、「そのことに候ふ。さがなきわらはべどもの仕りける、奇怪に候ふことなり。」とて、さし寄りて、据ゑなほして去にければ、

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ちょっとお聞き申し上げたい。」とおっしゃったところ、「そのことでございます。いたずらな子どもたちがいたしたことで、けしからぬことでございます。」と言って、(獅子と狛犬の)そばに寄って、(正しい置き方に)据え直して行ってしまったので、

⑤上人の感涙いたづらになりにけり

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上人の感動の涙はむだになってしまった

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「いたづらなり」は「ムダだ」という意味でした。
「にけり」は文法の問題でよく出題されます。割と学習が進んでいる人も「に」が完了の助動詞「ぬ」の連用形だと気づかない人が多いためです。「けり」は過去の助動詞です。訳は2つ合わせて「〜た/〜てしまった」となります。この「上人の感動の涙は、子どものいたずらだということが分かって、ムダになってしまった」というのが今回の話のオチになります。

おわりに(テスト対策へ)

 以上で、「丹波に出雲といふところあり」の文章解説を終わります。次はテスト対策です。「テスト対策&練習問題」では、テスト前に「これだけは覚えておいてほしい」という項目をできるだけ絞って説明することで、読むだけでテスト対策が十分にできるものになっています。以下をタップして読んでみてください。

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