このページでは、学生時代に国語が苦手だった筆者が、この順番で学べば古典文法が分かり、一気に得意科目にできた経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「理解しやすい学ぶ手順」を紹介していきます。
- 古文での「敬語」がどういうものか分かる!
- 古文での「敬語」の表し方が分かる!
- 「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」がどういうものか分かる!
- 「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」を表す補助動詞が分かる!
- 上記を確認できる問題が解ける!
はじめに

敬語って尊敬語と謙譲語と丁寧語の3つがありましたよね。丁寧語は分かるんですが、結局3つの違いはよくわからなくて…。



最近では現代語でも謙譲語をうまく使える人が減っているからね。でも、古文を理解するには絶対に必要な知識なので、1つずつ理解できるように説明していくよ。
「敬語の3種類(尊敬語・謙譲語・丁寧語の違い)」の学習ポイント
今回学習することの要点を示します。
【敬語の3種類とその違い】






【敬語の3種類とその補助動詞】






敬語とはどのようなものかを知ろう!
まずはじめに、敬語は誰に対して使うものですか? 簡単に言うと、「偉い人」に対してですよね。では、誰が使うのですか? 改めて考えるとちょっとわからなくなります。まずは「話をしている人」と言えたらOKです。ということは「話をしている人が偉い人に対して」使う言葉が敬語だということです。
ただ、それは会話の中での話です。文章であればどうなりますか。「偉い人」に対して使うことは同じですが、誰が使うかというと、それは「文章を書いている人」になります。つまり、「文章を書いている人が偉い人に対して」使う言葉でもあるということです。
では、次に「偉い人」はどこに出てくるかを考えましょう。会話の中で考えると、話の中に出てくる人物になりますね。例えばこんな例文があったとしましょう。
(例文1)(太郎)「この前、先生が僕の家にいらっしゃった。」
これは、話をしている「太郎」が、話題に出てきた「先生」を敬うために「来る」を「いらっしゃる」と言い換えているわけです。先ほどから言っている「偉い人」とはこの文の「先生」のことです。
つまり、「話し手」(=太郎)が話題の中の人物(=先生)に対して敬意を払うために敬語が使われているということです。これが敬語の最も基本になる考え方です。
そして、これは文章であっても考え方は変わりません。「話し手」が「(文章の)書き手」に変わるだけです。さらに、敬語は「話し手」が「聞き手」に(「書き手」が「読み手」に)敬意を払う場合もあります。これは「丁寧語」と言われるものです。
以上をまとめると、このようになります。
敬語とは
話し手(書き手)が話題の中の人物や聞き手(読み手)に対して敬う気持ちを表すときに使われるもの。
敬語の表し方を知ろう!(尊敬語の場合)
それでは、実際に敬語の表し方を考えてみましょう。
(例文2)山田先生が酒を飲む。
この、「飲む」という言葉を敬語(尊敬語)に改めると、以下のような文になります。
1.酒を召し上がる。
2.酒を飲まれる。
3.酒を飲みなさる。(お飲みになる)
このように3種類の表し方があります。原則的に意味は同じです(微妙なニュアンスは異なりますが、今回は置いておきます)。また、話をわかりやすくするために、尊敬語に限ってお話します。
1は「飲む」という動詞を別の動詞「召し上がる」に置き換えたもの、2は「飲む」という動詞に、尊敬を表す助動詞「れる」を付け加えたもの、3は「飲む」という動詞に、尊敬を表す「なさる」という別の動詞を付け加えたものです。特に3が厄介で、この「なさる」は本来の「する」という意味は失って、ただ尊敬の意味を表す働きを持つだけの動詞となっています。このような働きをするものを補助動詞と呼びます。
次に、古文の場合を考えます。古文も現代の文と表し方は同じです。
1.酒を召す。
2.酒を飲まる。
3.酒を飲み給ふ。
現代語と少し異なりますが、1は「飲む」という動詞を別の動詞「召す」に置き換えたもの、2は「飲む」という動詞に、尊敬を表す助動詞「る」を付け加えたもの、3は「飲む」という動詞に、尊敬を表す補助動詞「給ふ」を付け加えたものです。
つまり、現代の文でも古文でも、敬語の表し方は変わりません。1.別の動詞に置き換える、2.助動詞を付け加える、3.補助動詞を付け加える、の3種類です。また、1の「動詞」は3の「補助動詞」と比較して「本動詞」と呼ぶこともあります。
敬語の3種類とその違いについてに知ろう!
先程は尊敬語について3種類の表し方をお話しました。次は現代語においても使われる「尊敬語」と「謙譲語」と「丁寧語」の3つについてお話します。まず、それぞれの意味を改めて確認しておきましょう。
尊敬語
意味: 相手を敬う気持ちを表す言葉で、相手の行動や状態に対して使う。
使用場面: 目上の人やお客様など、相手を敬うべき場面で使う。
例: 先生が私の家にいらっしゃった。
謙譲語
意味: 自分や自分側の人の行動をへりくだって表現する言葉で、相手を立てるために使う。
使用場面: 自分が関わる行動や事柄を相手に伝えるときに使う。これにより、相手を敬う気持ちが強調される。
例: 今からそちらへうかがいます。
丁寧語
意味: 話し手が相手に対して丁寧に話すための言葉で、動詞の語尾に「です」「ます」をつけて使う。
使用場面: 日常的な敬語表現として、誰に対しても使える形式。
例: 今日は英会話教室へ行きます。
ということでした。では、ここからは古文においての敬語の考え方を理解していきましょう。
尊敬語
古文を読む上で、尊敬語とは以下のように理解しておくとよいでしょう。
尊敬語
話し手(書き手)が話題の中の動作をする人に敬意を表す。
「敬語を誰が使うのか」を考えると、それは「話し手」(文章なら「書き手」)になるのでしたね。今回はそこにはあまり触れずに、「その敬語は誰に対して使うのか」を中心に理解を深めていきます。「話題の中の動作をする人」に敬意を表すのが尊敬語です。では、実際に例文を通して、誰に敬意を払っているのかを確認しましょう。
(例文1)男が女に文を書き給ふ。
(例文1)は筆者の作った例文ですが、この「給ふ」は「書き」に付いてるので、尊敬を表す補助動詞です。つまり、「給ふ」は尊敬語となります。この「給ふ」は、「動作をする人」、この例文では「男」に対して敬意を払っていることになります。


尊敬語の補助動詞
動詞を敬語にするには3つの方法があることは先程お話しました。今回はそのうち、補助動詞を付けて敬語にする方法を詳しくお話します。
動詞の後に「給ふ」などの補助動詞をつけると、尊敬語になります。そのような尊敬語の補助動詞の代表としては、なんといっても「給ふ」であり、これが文章の中で圧倒的に多く出てきます。それ以外にも尊敬語の補助動詞はいくつかあるのですが、今回は代表的な3つのみを示します。ぜひここで覚えてしまってください。また、訳の仕方もここで覚えましょう。
尊敬語の補助動詞
(動詞)+「給ふ」
(動詞)+「おはす」
(動詞)+「おはします」
【訳】おーーになる/ーーなさる
(ーー(て)いらっしゃる)
先の(例文1)「男が女に文を書き給ふ。」は、「男が女に手紙をお書きになる(書きなさる)」と訳すわけです。


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謙譲語
次に謙譲語です。現代の日本語では「自分や自分側の人の行動をへりくだって表現する言葉で、相手を立てるために使う」ものです。ですが、古文ではそれよりも以下のような使い方をすることのほうが多くあります。
謙譲語
話し手(書き手)が話題の中の動作を受ける人(動作をされる人)に敬意を表す。
ここでも「その敬語は誰に対して使うのか」を中心に理解を深めていきます。「話題の中の動作を受ける人」に敬意を表すのが謙譲語です。では、実際に例文を通して、誰に敬意を払っているのかを確認しましょう。
(例文2)男が女に文を書き奉る。
(例文2)も筆者の作った例文ですが、「奉る」は「書き」に付いてるので、補助動詞ですが、これは謙譲を表します。つまり、「奉る」は謙譲語となります。この「奉る」は、「動作を受ける人(される人)」、この例文では「女」に対して敬意を払っていることになります。


謙譲語の補助動詞
ここでは謙譲語の補助動詞を確認します。代表的な5つを覚えておくと読解で非常に役に立ちます。ぜひここで覚えてしまってください。また、訳の仕方もここで覚えましょう。
謙譲語の補助動詞
(動詞)+「奉る」
(動詞)+「申す」
(動詞)+「聞こゆ」
(動詞)+「参らす」
(動詞)+「仕うまつる」(仕る)
【訳】(お)ーー申し上げる
(ーーてさしあげる)
先の(例文2)「男が女に文を書き奉る。」は、「男が女に手紙をお書き申し上げる」と訳します。


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丁寧語
最後に丁寧語です。現代の日本語では「話し手が相手に対して丁寧に話すための言葉」でしたね。古文でも同じです。
丁寧語
話し手が聞き手に敬意を表す。
(書き手が読み手に敬意を表す)
原則として「聞き手」に敬意を表すのが謙譲語です。例文を通して、誰に敬意を払っているのかを確認します。ただし、今回は例文が会話文になりますので、話し手と聞き手が外に現れます。
(例文3)「男が女に文を書き侍り」と児が翁に言ふ。
(例文3)も筆者の作った例文ですが、「侍り」は「書き」に付いてるので、補助動詞です。これは丁寧を表します。つまり、「侍り」は丁寧語となります。この「侍り」は、「聞き手」、この例文では話を聞いている「翁」に対して敬意を払っていることになります。
この丁寧語はほとんどが会話文で使われるのですが、たまに地の文(会話文でない通常の文)で使われることもあります。このときは、文を読んでいる「読者」に敬意を払っています。


丁寧語の補助動詞
ここでは丁寧語の補助動詞を確認します。丁寧語は2つです。ぜひここで覚えてしまってください。また、訳の仕方もここで覚えましょう。
丁寧語の補助動詞
(動詞)+「侍り」
(動詞)+「候ふ」「候ふ」
【訳】ーーです/ます
(ーーございます)
「候ふ」は「さぶらふ」とも「さうらふ」とも読みます。これは、もともとは「さぶらふ」と読んでいたのですが、使われるうちに少しずつ言いやすいよう「さうらふ」に変わっていったきました。今では「候」だけが残っていますね。当時は「さぶらふ」が主に女性に使われる言葉、「さうらふ」が主に男性に使われる言葉でした。
先の(例文3)は、「『男が女に手紙を書きます』と児が翁に言う」と訳します。


今回は敬語の3種類(尊敬語・謙譲語・丁寧語)と、それに用いられる補助動詞についてお話しました。実際に文章を読むと、敬語の補助動詞は非常によく使われていることがわかります。今回は、その補助動詞が、尊敬語か謙譲語か丁寧語かの見分けがつけられたらOKです。
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テスト対策(練習問題)
では、敬語の補助動詞が理解できたか、実際に問題を解いて確認してみましょう。
【問一】 青線部A~Iの尊敬語は、次のどれにあてはまるか答えなさい。
ア 動詞 イ 補助動詞 ウ 助動詞 エ 名詞
(1)帰りて、A宮に、入らBせC給ひぬ。
(2)D帝、鳥飼の院にEおはしましにけり。
(3)FおほせGられければ、すなはち詠みて奉りける。
(4)いとかしこく賞でH給うて、かづけものI給ふ。
【問一】解答・解説はこちら(タップで表示)
【解答】Aエ Bウ Cイ Dエ Eア Fア Gウ Hイ Iア
A・Dは名詞です。「宮」「帝」は名詞ですが、その言葉自体が敬語になっています。C・Hは直前が動詞(助動詞)なので補助動詞です。動詞の後にくるのが補助動詞だと理解してください。同じ「給ふ」でも、Iは動詞ですので間違えないように。また、尊敬を表す助動詞は「る」「らる」の他に「す」「さす」「しむ」がありましたね。思い出せなかった場合は、それぞれ助動詞の項目で確認しておきましょう。
【問二】 青線部A~Iの敬語は、次のどれにあてはまるか答えなさい。
ア 動詞 イ 補助動詞 ウ 助動詞
今は昔、和泉式部がもとに、帥宮通はAせBたまひけるころ、久しく音せCさせDたまはざりけるに、その宮にEさぶらふ童の来りけるに、御文もなし。帰りまゐるに、待たましもかばかりこそはあらましか思ひもかけぬ今日の夕暮れ 持てFまゐりて、Gまゐらせたりければ、「まことに久しくなりにけり」と心ぐるしくて、やがてHおはしましけり。女も、月を眺めて、端に居たりけり。前栽の露、きらきらと置きたるに、「人は草葉の露なれや」とIのたまはするさま、優にめでたし。
【問二】解答・解説はこちら(タップで表示)
【解答】Aウ Bイ Cウ Dイ Eア Fア Gア Hア Iア
B・Dが補助動詞です。どちらも動詞(助動詞)の後にあります。あとは、A・Cの助動詞を除いてすべて動詞になります。
【問三】 次の各文の青線部は、尊敬・謙譲・丁寧のうちどれか。
(1)皇子もあはれなる句を作り給へるを、限りなうめで奉りて、
(2)あはれなる事は、おりおはしましける夜は、
(3)年ごろ思ひつること、果しはべりぬ。
(4)大納言殿に知らせたてまつらばや。
【問三】解答・解説はこちら(タップで表示)
【解答】(1)謙譲(2)尊敬(3)丁寧(4)謙譲
いずれも動詞に付いているので補助動詞です。それぞれの補助動詞が尊敬語・謙譲語・丁寧語のいずれかがわかっていたら容易です。
【問四】 傍線部A~Dの謙譲語のうち、補助動詞はどれか。
(1)昔、太政大臣とA聞こゆる、Bおはしけり。
(2)正月に、拝みC奉らむとて、小野にDまうでたるに、比叡の山のふもとなれば、雪いと高し。
【問四】解答・解説はこちら(タップで表示)
【解答】C
A・B・Dは本動詞です。Cは動詞「拝む」についているので補助動詞です。
【問五】 次の各文の青線部のうち、補助動詞はどれか、また、それは尊敬・謙譲・丁寧のうちどれか答えなさい。
(1)ここにAおはするかぐや姫は、重き病をしB給へば、え出でCおはしますまじ。
(2)薬の壺に御文そへ、Dまゐらす。
(3)妻戸押し開けて出でE給ふを見Fたてまつり送る。
(4)竹の中より見つけG聞こえたりしかど、
(5)かかる人こそは世にHおはしましけれと、おどろかるるまでぞまもりIまゐらする。
【問五】解答・解説はこちら(タップで表示)
【解答】B尊敬 C尊敬 E尊敬 F謙譲 G謙譲 I謙譲
A・D・Hは本動詞です。それ以外は動詞に付いているので補助動詞です。それぞれの補助動詞が尊敬語・謙譲語・丁寧語のいずれかを判断します。
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おわりに
今回は敬語の3種類の用法とそれに用いられる補助動詞を理解できました。次回は、本動詞の用法について詳しく学んでいきます。練習問題では、今回の内容も含めて、実際に現代語訳をできるようになってもらいます。では、またお会いしましょう。
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