はじめに
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先生、敬語って尊敬語と謙譲語と丁寧語の3つがありましたよね。でも違いがよくわからなくて…。
最近では謙譲語をうまく使える人が減っているからね。でも、古文を理解するには絶対に必要な知識なので、1つずつ理解できるように説明していくよ。
はじめに、今回学習することの要点を示します。
【敬語の3種類】
【敬語の3種類とその補助動詞】
敬語の3種類とその補助動詞について
現代語においても、敬語には「尊敬語」と「謙譲語」と「丁寧語」の3つがあることは知っていると思います。まず、それぞれの意味を改めて確認しておきましょう。
尊敬語
意味: 相手を敬う気持ちを表す言葉で、相手の行動や状態に対して使う。
使用場面: 目上の人やお客様など、相手を敬うべき場面で使う。
例: 先生が私の家にいらっしゃった。
謙譲語
意味: 自分や自分側の人の行動をへりくだって表現する言葉で、相手を立てるために使う。
使用場面: 自分が関わる行動や事柄を相手に伝えるときに使う。これにより、相手を敬う気持ちが強調される。
例: 今からそちらへうかがいます。
丁寧語
意味: 話し手が相手に対して丁寧に話すための言葉で、動詞の語尾に「です」「ます」をつけて使う。
使用場面: 日常的な敬語表現として、誰に対しても使える形式。
例: 今日は英会話教室へ行きます。
ということでした。特に太字のところに注目しておくとこれからの学習の理解が早くなります。
では、ここからは古文においての敬語の考え方を理解していきましょう。
尊敬語
古文を読む上で、尊敬語とは以下のように理解しておくとよいでしょう。
尊敬語
話し手(書き手)が話題の中の動作をする人に敬意を表す。
第1回でも話したとおり、「敬語を誰が使うのか」を考えると、それは「話し手」(文章なら「書き手」)になるのでしたね。今回はそこにはあまり触れずに、「その敬語は誰に対して使うのか」を中心に理解を深めていきます。「話題の中の動作をする人」に敬意を表すのが尊敬語です。では、実際に例文を通して、誰に敬意を払っているのかを確認しましょう。
(例文1)男が女に文を書き給ふ。
この「給ふ」は「書き」に付いてるので、尊敬を表す補助動詞です。つまり、「給ふ」は尊敬語となります。この「給ふ」は、「動作をする人」、この例文では「男」に対して敬意を払っていることになります。
尊敬語の補助動詞
第1回で、動詞を敬語にするには3つの方法があることをお話しました。今回はそのうち、補助動詞を付けて敬語にする方法を詳しくお話します。
動詞の後に「給ふ」などの補助動詞をつけると、尊敬語になります。そのような尊敬語の補助動詞の代表としては、なんといっても「給ふ」であり、これが文章の中で圧倒的に多く出てきます。それ以外にも尊敬語の補助動詞はいくつかあるのですが、今回は代表的な3つのみを示します。ぜひここで覚えてしまってください。また、訳の仕方もここで覚えましょう。
尊敬語の補助動詞
(動詞)+「給ふ」
(動詞)+「おはす」
(動詞)+「おはします」
【訳】おーーになる/ーーなさる
(ーー(て)いらっしゃる)
先の(例文1)「男が女に文を書き給ふ。」は、「男が女に手紙をお書きになる(書きなさる)」と訳すわけです。
謙譲語
次に謙譲語です。現代の日本語では「自分や自分側の人の行動をへりくだって表現する言葉で、相手を立てるために使う」ものです。ですが、古文ではそれよりも以下のような使い方をすることのほうが多くあります。
謙譲語
話し手(書き手)が話題の中の動作を受ける人(動作をされる人)に敬意を表す。
ここでも「その敬語は誰に対して使うのか」を中心に理解を深めていきます。「話題の中の動作を受ける人」に敬意を表すのが謙譲語です。では、実際に例文を通して、誰に敬意を払っているのかを確認しましょう。
(例文2)男が女に文を書き奉る。
この「奉る」は「書き」に付いてるので、補助動詞ですが、これは謙譲を表します。つまり、「奉る」は謙譲語となります。この「奉る」は、「動作を受ける人(される人)」、この例文では「女」に対して敬意を払っていることになります。
謙譲語の補助動詞
ここでは謙譲語の補助動詞を確認します。代表的な5つを覚えておくと読解で非常に役に立ちます。ぜひここで覚えてしまってください。また、訳の仕方もここで覚えましょう。
謙譲語の補助動詞
(動詞)+「奉る」
(動詞)+「申す」
(動詞)+「聞こゆ」
(動詞)+「参らす」
(動詞)+「仕うまつる」(仕る)
【訳】(お)ーー申し上げる
(ーーてさしあげる)
先の(例文2)「男が女に文を書き奉る。」は、「男が女に手紙をお書き申し上げる」と訳します。
丁寧語
最後に丁寧語です。現代の日本語では「話し手が相手に対して丁寧に話すための言葉」でしたね。古文でも同じです。
丁寧語
話し手が聞き手に敬意を表す。
(書き手が読み手に敬意を表す)
原則として「聞き手」に敬意を表すのが謙譲語です。例文を通して、誰に敬意を払っているのかを確認します。ただし、今回は例文が会話文になりますので、話し手と聞き手が外に現れます。
(例文3)「男が女に文を書き侍り」と児が翁に言ふ。
この「侍り」は「書き」に付いてるので、補助動詞ですが、これは丁寧を表します。つまり、「侍り」は丁寧語となります。この「侍り」は、「聞き手」、この例文では話を聞いている「翁」に対して敬意を払っていることになります。
この丁寧語はほとんどが会話文で使われるのですが、たまに地の文(会話文でない通常の文)で使われることもあります。このときは、文を読んでいる「読者」に敬意を払っています。
丁寧語の補助動詞
ここでは丁寧語の補助動詞を確認します。丁寧語は2つです。ぜひここで覚えてしまってください。また、訳の仕方もここで覚えましょう。
丁寧語の補助動詞
(動詞)+「侍り」
(動詞)+「候ふ」「候ふ」
【訳】ーーです/ます
(ーーございます)
「候ふ」は「さぶらふ」とも「さうらふ」とも読みます。これは、もともとは「さぶらふ」と読んでいたのですが、使われるうちに少しずつ言いやすいよう「さうらふ」に変わっていったきました。今では「候」だけが残っていますね。当時は「さぶらふ」が主に女性に使われる言葉、「さうらふ」が主に男性に使われる言葉でした。
先の(例文3)は、「『男が女に手紙を書きます』と児が翁に言う」と訳します。
今回は敬語の3種類(尊敬語・謙譲語・丁寧語)と、それに用いられる補助動詞についてお話しました。実際に文章を読むと、敬語の補助動詞は非常によく使われていることがわかります。今回は、その補助動詞が、尊敬語か謙譲語か丁寧語かの見分けがつけられたらOKです。
練習問題
では、敬語の補助動詞が理解できたか、実際に問題を解いて確認してみましょう。問題番号は第1回からの続きですので、問三からになります。
問三 次の各文の青太字は、尊敬・謙譲・丁寧のうちどれか。
(1)皇子もあはれなる句を作り給へるを、限りなうめで奉りて、
(2)あはれなる事は、おりおはしましける夜は、
(3)年ごろ思ひつること、果しはべりぬ。
(4)大納言殿に知らせたてまつらばや。
【解答】
問三(1)謙譲(2)尊敬(3)丁寧(4)謙譲
いずれも動詞に付いているので補助動詞です。それぞれの補助動詞が尊敬語・謙譲語・丁寧語のいずれかがわかっていたら容易です。
問四 傍線部A~Dの謙譲語のうち、補助動詞はどれか。
(1)昔、太政大臣とA聞こゆる、Bおはしけり。
(2)正月に、拝みC奉らむとて、小野にDまうでたるに、比叡の山のふもとなれば、雪いと高し。
【解答】問四 C
A・B・Dは本動詞です。Cは動詞「拝む」についているので補助動詞です。
問五 次の各文の傍線部のうち、補助動詞はどれか、また、それは尊敬・謙譲・丁寧のうちどれか答えなさい。
(1)ここにAおはするかぐや姫は、重き病をしB給へば、え出でCおはしますまじ。
(2)薬の壺に御文そへ、Dまゐらす。
(3)妻戸押し開けて出でE給ふを見Fたてまつり送る。
(4)竹の中より見つけG聞こえたりしかど、
(5)かかる人こそは世にHおはしましけれと、おどろかるるまでぞまもりIまゐらする。
【解答】
B尊敬 C尊敬 E尊敬 F謙譲 G謙譲 I謙譲
A・D・Hは本動詞です。それ以外は動詞に付いているので補助動詞です。それぞれの補助動詞が尊敬語・謙譲語・丁寧語のいずれかを判断します。
おわりに
以上で敬語の第2回を終わります。今回は敬語の3種類の用法とそれに用いられる補助動詞を理解できました。次回は、本動詞の用法について詳しく学んでいきます。練習問題では、今回の内容も含めて、実際に現代語訳をできるようになってもらいます。では、またお会いしましょう。
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