敬語の用法3 本動詞の用法

敬語
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はじめに

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生徒
生徒

先生、尊敬語と謙譲語と丁寧語について少しずつ分かってきました。次は何を知っていけばいいですか。

先生
先生

それぞれが「誰に対して」使う敬語なのかがわかってきたようだね。では、次は「単語」として敬語を覚えていこうか。

はじめに、今回学習することの要点を示します。

本動詞の用法

前回は、尊敬語・謙譲語・丁寧語それぞれの働きについて学びました。もう一度確認したい人はこちらを見てください。

今回は、本動詞について学んでいきます。本動詞は「動詞」ですから、それぞれの言葉の持つ意味を理解していく必要があります。つまり、「『古文単語』として覚えていく」ことが求められるわけです。というわけで、文章に出てくるたびに、一語一語覚えていきましょう。

尊敬語の本動詞

尊敬語の本動詞について、以下に代表的なものを挙げます。一つ一つ覚えていきましょう。

「おはす」「おはします」の違いは、「身分の違い」と理解してもらったら結構です。つまり、帝など最高級の身分の人には「おはします」を使うということです。このような変化は他の語ににもあって、
「のたまふ」→「のたまは
「たまふ」→「たまは
「おぼす」→「おぼしめす
などです。敬語動詞に「す」や「めす」、「ます」などをつけて、より敬意を高めていると考えてもらえればよいです。
また、「のたまふ」と「おほす」は、どちらも「おっしゃる」と訳しますが、「仰す」は「高貴な人が命令する」というニュアンスがあります。ですので、時には「命令なさる」と訳すときもあります。
たまふ」は少しずつ言葉がなまっていって、「たうぶ」や「たぶ」となることもあります。

謙譲語の本動詞

謙譲語の本動詞について、以下に代表的なものを挙げます。一つ一つ覚えていきましょう。

「まかる」と「まかづ」はどちらも「高貴な人のもとから去る」という意味で「退出する」と訳します。
「申す」「聞こゆ」がどちらも「申し上げる」になるのが不思議ですね。「聞こゆ」は「高貴な人の耳に届く」ように言うので「申し上げる」という意味になるわけです。
「奉る」と「参らす」はどちらも「差し上げる」という意味です。
「たまはる」は「給ふ」(給はす)と間違えないようにしたいですね。「給ふ」「給はす」は尊敬語、「たまはる」(賜はる)は謙譲語です
「承る」は「お受けする」という意味もありますが、「お聞きする」「お聞き申し上げる」と訳す方が多いです。
「侍り」「候ふ」は以前、「丁寧語の補助動詞」で出てきましたが、どちらの語も元々は「高貴な人のお側に控える」という意味の語です。語源が「ひあり」(這って控える)「さ守らふ」(そのようにお守りする)というところからも分かりますね。

丁寧語の本動詞

丁寧語の本動詞は、「侍り」「候ふ」の2つを覚えておけばよいです。補助動詞のときは「ーーです/ます/ございます」でしたが、本動詞のときは「あり」の意味を加えて、「あります/おります/ございます」と訳せばよいでしょう。

本動詞の説明は以上です。次の練習問題では、前回の補助動詞の知識も含めて、実際に現代語訳してみる練習をしてみましょう。

練習問題

問題番号は第1回・第2回からの続きですので、問六からになります。

尊敬語の問題

問六 青太字の部分を、尊敬語に注意して、現代語訳しなさい。
(1)琴の御琴を、人よりことに弾きまさらむとおぼせ
 (訳) 琴の御琴を、人より格別上手に弾こうと〔    〕。
(2)親王、おほとのごもらで、あかし給うてけり。
 (訳) 親王は、〔   〕 、(夜は)あかしていまいなさった。
(3)むすめを、われにたべ
 (訳) 娘さん(かぐや姫)を、私に〔   〕。

【解答】
問六(1)お思いになってください(2)お休みにならないで(3)ください
【解説】
(2)の「で」は「打消の接続助詞」で、「ーーないで」と訳します。
(3)の「たべ」は「たぶ」の命令形ですが、「尊敬語の命令形」は「ーーになってください」と訳すのが原則です。ですので、「お与えになってください」と訳してもよいですが、実際は「ください」と訳すのが自然です。

謙譲語の問題

問七 傍線の部分を、敬語(謙譲語、尊敬語)に注意して、現代語訳しなさい。
(1)狩しにおはします供に、右馬頭なる翁、つかうまつれり
 (訳) 狩をしに〔A     〕お供に、右馬頭の翁が、〔B     〕。
(2)泣く泣く契りのたまはすれど、御答へも、え聞こえ給はず
 (訳)(帝は)泣きながら、お約束なさいますけれども、(光君の母は)お答えも、〔      〕。
(3)帥殿は、常に負け奉らせ給ひてぞまかでさせ給ひける
 (訳)(勝負ごとでも)帥殿は、いつも(道長殿に)〔A     〕、〔B     〕。
(4)大将も物かづき、忠岑も、禄たまはりなどしけり。
 (訳) 大将も物を授け、忠岑も褒美を〔      〕などした。

【解答】
問七(1)Aいらっしゃる Bお仕え申し上げた(2)申し上げなさることができない(3)A負け申し上げなさって B退出なさった(4)いただき
【解説】
(1)Bの「り」は存続・完了の助動詞です。
(2)「えーーず」は不可能(ーーできない)を表します。「聞こえ」は謙譲語の本動詞、「給は」は尊敬語の補助動詞です。
(3)Aの「奉らせ」は謙譲語の補助動詞、「給ひ」は尊敬の補助動詞です。Bの「まかで」は謙譲語の本動詞、「させ」は尊敬の助動詞、「給ひ」は尊敬語の補助動詞、「ける」は過去の助動詞です。
(4)「たまはり」は連用形なので、「いただき」と訳すのがよいでしょう。

丁寧語の問題

問八 傍線の部分を、丁寧語に注意して、現代語訳しなさい。
(1)からい目を見候ひて、たれにかうれへ申し侍らむ
 (訳) ひどい目を〔A     〕 、だれに訴え〔B     〕。
(2)まだ、下﨟に侍りし時、あはれと思ふ人侍りき
 (訳) まだ、(私が)下﨟(身分が低い者)で〔A    〕時、いとしいと思う女性が〔B     〕。
(3)物語の多く候ふなる、あるかぎり見せ給へ。
 (訳) (世の中に)物語が多く〔      〕(それを)、ある限り全部お見せください。

【解答】
問八(1)A見まして B申し上げましょうか (申し上げたらよいでしょうか)(2)Aおりました Bおりました(3)あるそうですが
【解説】
(1)B「申し」は謙譲の本動詞、「侍ら」は丁寧の補助動詞、「む」は推量の助動詞です。
(2)A「し」は過去の助動詞、B「き」も過去の助動詞です。
(3)「なる」は伝聞推定の助動詞です。

助動詞について、不安がある人はこちらで確認してください。

おわりに

以上で敬語の第3回を終わります。今回は本動詞の用法について理解できました。といっても実際には古文単語として覚えていくしかないのですけどね。いよいよ次回は、最も出題される「敬意の方向」について詳しく学んでいきます。ここが「古文文法敬語」最大の山場ですよ。では、またお会いしましょう。


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