このページでは、学生時代に国語が苦手だった筆者が、この順番で学べばテストで点数が取れ、一気に得意科目にできたという経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「これなら古文が理解できる!」という学ぶ手順も具体的に紹介していきます。「テスト対策」では、テスト前に「これだけは覚えておいてほしい」という項目をできるだけ絞って説明しています。読み終わる頃には、テストに十分対応できる力がついていることでしょう。

「源氏の五十余巻」(物語)テスト対策
「源氏の五十余巻」(物語)の前半部において、テストに出そうな内容にできるだけ絞ってお話しましょう。テスト対策は次のような流れで行うとよいでしょう。このサイトは下記の流れで解説をしています。
テスト直前でもすべきことの基本は、「本文を読むこと」です。これまで学習した内容をしっかり思い出しながら読みましょう。
古文の問一は「よみ」の問題であることが多いですね。出題されるものは決まっているので、ここで落とさないように、しっかり確認しておくことです。
「どのような話」か、簡単に説明できる状態にしましょう。
ここでのメインになります。古文はどうしても「知識」を問う必要があるので、問われる箇所は決まってきます。それならば、「よく問われる」出題ポイントに絞って学習すれば、大きな失点は防げそうですね。このサイトでは「よく問われる」箇所のみを説明していますので、じっくり読んでみてください。
いわゆる「文学史」の問題です。テスト対策としては、それほど大きな点数にはならないので、時間がない場合は飛ばしてもよいかもしれません。
本文読解の一問一答を解答し、古典文法の問題を解答します。古典文法の問題は必ず出題されます。それは、直接「動詞の活用」や「助動詞の意味」を問うような問題だけでなく、現代語訳や解釈の問題などでも出題されます。必ず問題を解いて、できるようになっておきましょう。このサイトは文法事項の説明も充実しているので、詳しく知りたいときは、ぜひそれぞれの項目に進んで学習してみてください。
本文の確認
テスト直前でもすべきことの基本は、「本文を読むこと」です。これまで学習した内容をしっかり思い出しながら読みましょう。「テスト対策」はあえてふりがなをつけていません。不安な場合は、「読解のコツ」の「本文を読む」で確認してみてください。
かくのみ思ひくんじたるを、心も慰めむと心苦しがりて、母、物語など求めて見せ給ふに、げにおのづから慰みゆく。紫のゆかりを見て、続きの見まほしくおぼゆれど、人語らひなどもえせず。誰もいまだ都慣れぬほどにて、え見つけず。いみじく心もとなく、ゆかしくおぼゆるままに、「この源氏の物語、一の巻よりして、みな見せ給へ。」と心の内に祈る。親の太秦に籠もり給へるにも、異事なくこのことを申して、出でむままにこの物語見果てむと思へど、見えず。いと口惜しく、思ひ嘆かるるに、をばなる人の田舎より上りたる所に渡いたれば、「いとうつくしう生ひなりにけり。」など、あはれがり、めづらしがりて、帰るに、「何をか奉らむ。まめまめしきものはまさなかりなむ。ゆかしくし給ふなるものを奉らむ。」とて、源氏の五十余巻、櫃に入りながら、ざい中将、とほぎみ、せり河、しらら、あさうづなどいふ物語ども、一袋取り入れて、得て帰る心地のうれしさぞいみじきや。(『更級日記』より)
読みで問われやすい語
青線部の読みができるようになっておきましょう。
・親の太秦に籠もり給へるにも、異事なくこのことを申して、
・何をか奉らむ。
解答はこちら(タップで表示)
「太秦」は「うずまさ」、「籠」は「こ」、「異事」は「ことごと」、「奉」は「たてまつ」です。
あらすじの確認
・ふさぎこんでいる作者を慰めようと、母が物語を見せてくれる
・気持ちが慰められていく
・『源氏物語』を見て、続きが見たいけど、見つけられない
・見たいという気持ちが募って心の中で祈り続ける
・籠もっていた太秦の寺を出ても、なかなか見ることはできない
・ある日、「をばなる人」のもとに親に連れられて行く
・「をばなる人」が、帰り際にお土産をくれる
・お土産の中身は作者の欲しかった『源氏物語』などであった
・作者はこの上ない喜びで家に帰る
出題ポイント
以下の5項目が何も見ずに訳すことができるか。確認してください。
- げにおのづから慰みゆく
- いみじく心もとなく、ゆかしくおぼゆるままに、
- 出でむままに、この物語見果てむ
- 「いとうつくしう、生ひなりにけり」
- 何をか奉らむ、まめまめしきものは、まさなかりなむ
①げにおのづから慰みゆく
(訳)はこちら(タップで表示)
本当に自然と心が慰められていく(気持ちがなごんでいく)。
・「げに」の意味
・「おのづから」の意味
・「慰みゆく」の意味
・「慰み」の動詞の活用の種類と活用形
・何をしてもらって、「慰みゆく」状態になったのか。
「げに」は漢字で書くと「実に」となり、「なるほど、本当に」という意味です。
次に「おのづから」ですが、これも重要単語です。「自己の意志によらず、自然にそのようになるさま」を表す言葉です。ここの「おのづから」は「自然と」になります。
「慰みゆく」ですが、「慰み」はマ行四段活用動詞「慰む」の連用形です。「慰む」は「気持ちがなごむ(心が休まる・気が紛れる)」「気分を晴らす」などの意味になります。そうすると、「慰みゆく」は「気持ちがなごんでいく」や「慰められる」という意味になります。

お母さんに物語を読んでもらえて、少しは気持ちが晴れていったんだね。
②いみじく心もとなく、ゆかしくおぼゆるままに、
(訳)はこちら(タップで表示)
たいそう待ち遠しく、見たいと思われる気持ちのままに(読みたいと思われるので)、
・「いみじく心もとなく」の現代語訳
・「ゆかし」とは何をしたいのか
・「おぼゆ」の意味
「いみじく」は「たいそう」、「心もとなく」は、ここでは「じれったい」、「ゆかし」は「〜たい」で、ここでは「本を見たい(読みたい)」です。「おぼゆ」は漢字で書くと「思ゆ」です。「ゆ」が自発や受身を表すので、「おぼゆ」は「思われる」という意味になります。
以上の単語が分かると、「たいそう待ち遠しく、見たい(読みたい)と思われる気持ちのままに」と解釈できます。



作者は「源氏物語」の続きが読みたくて仕方がない状態です。そして、神仏に祈りを捧げます。
③出でむままに、この物語見果てむ
(訳)はこちら(タップで表示)
(太秦の寺から)出たらすぐに、この物語を読み終えよう(最後まで読み切ろう)
・「ままに」のここでの意味
・「出でむままに」の現代語訳
・「見果てむ」の現代語訳
「出でむままに」の「む」は文中にあるので、婉曲の助動詞「む」(の連体形)になります。ここの「ままに」は古文特有の意味で、「〜するとすぐに」「〜やいなや」という意味です。よって、「出でむままに」は「(寺を)ですとすぐに」という訳をすればよいわけです。
「見果てむ」の「む」は「〜果て」が「〜し終わる」という意味だと分かれば「見終えよう」という解釈が自然だと分かり、意志の助動詞「む」であると判断できます。



いま、作者は両親とともに「太秦(の広隆寺)」にいますから、「その寺を出たらすぐに『源氏物語』を読み終えたい」と理想を語っているのです。それは作者のおばさんに会うことで現実になります。
④「いとうつくしう、生ひなりにけり」
(訳)はこちら(タップで表示)
「たいそうかわいらしく、成長したわねえ。」
・「うつくし」の意味
・「生ひなりにけり」の現代語訳
久しぶりに会った親戚のおばさんの言葉です。「まあ、大きくなったわねえ」と言っているシーンです。覚えておきたいポイントは「うつくし」の意味と「会話文での助動詞「けり」」です。
「うつくし」は「ちいさくてかわいらしい」様子を表す言葉です。
「生ひなりにけり」の「生ひなり」は「成長する(生長する)」という意味です。「にけり」は「に」が完了の助動詞「ぬ」の連用形ですが、「けり」は会話文なので、詠嘆の助動詞「けり」になります。よって、「成長したなあ(成長したわねえ)」という訳ができます。



おばさんは、短い滞在中、作者のことをかわいがってくれますが、帰り際にどうやらお土産を持たせてくれるようです。
⑤何をか奉らむ。まめまめしきものは、まさなかりなむ。
(訳)はこちら(タップで表示)
「何を差し上げましょうか、実用的なものは、きっとよくないでしょう。」
・「何をか奉らむ」の現代語訳
・「まめまめしきもの」の意味
・「まさなかりなむ」の現代語訳
まず、「何をか奉らむ」です。「か」は疑問を表す係助詞です。係り結びによって「む」は連体形になります。「奉る」は「与ふ」の謙譲語で、「差し上げる」となります。「む」は推量の助動詞「む」の連体形です。よって「何を差し上げましょうか」となります。
つぎに、「まめまめしきものはまさなかりなむ」です。
「まめまめしき」は、「まめまめし」が活用したものですが、人間の性格なら「まじめだ」、ものに対してなら「実用的だ」となります。この「まめまめし」はお土産という「もの」に対してですから「実用的だ」の方が適切です。
「まさなし」は、漢字で「正無し」と書きます。正しくないので、「よくない」や「思っていたのと違う」という意味になります。この「まさなし」は「よくない」という意味が文章に合いそうです。
「なむ」です。これは「なむ」の直前の活用形に注目します。ここは「連用形+なむ」なので、「なむ」は「強意(完了)の助動詞+推量等の助動詞」となります。前後から考えて、「む」は推量が当てはまります。
以上をまとめると、「きっとよくないだろう」となります。おばさんのセリフなので、「きっとよくないでしょう」としてもよいと思います。



その後、おばさんは作者に『源氏物語』など、たくさんの物語をプレゼントしてくれます。その部分は、「読解のコツ&現代語訳」でご覧ください。
⇡タップして詳細を表示
文学史・文学作品の確認
『更級日記』は平安時代中期、11世紀中頃に成立した「平安仮名日記文学」の一つです。作者菅原孝標女(は、『蜻蛉日記』の作者である藤原道綱母の姪にあたります。ちなみに、なぜかテストでは作者名をひらがなで答えさせる問題がよく出てきます。
この作品は、「日記」とはありますが、ある特定の時期にまとめて書かれたものです。特定の時期というのは作者の晩年です。少女時代は『源氏物語』に憧れて、読みたいと仏に願い、実際に手にすることができた喜びなどが書かれます。『源氏物語』のヒロインたちのように自分も雅な世界で華やかに生きていく理想を頭に描きますが、その後は厳しい現実を知っていくことになります。仲のよかった継母との別れや、姉や乳母との死別によって厳しい現実を見たこと、宮仕えは行ったもののその世界での苦悩の日々を過ごしたこと、30代で結婚して子どもを設けたが夫は単身赴任で離れて過ごすことが多かったこと、その夫にも先立たれたしまったこと、子どもたちも独立して次第に孤独になっていったこと、などを経験して晩年は仏にすがる日々になります。


練習問題(読解一問一答&文法問題)
では、上記の内容が本当に理解できたか、実際に問題を解きながら確認してみましょう。
読解一問一答5選
1「げにおのづから慰みゆく」は、誰に何をしてもらってそのようになったのか。
解答(タップで表示)
(母に物語を読んでもらう)
2「ゆかしくおぼゆる」とはどういうことか。
解答(タップで表示)
(作者が『源氏物語』の続きを読みたいという気持ちが自然に起こるということ。)
3「出でむままに、この物語見果てむ」を分かりやすく現代語訳しなさい。
解答(タップで表示)
(寺を出たらすぐに、この物語を最後まで読み切ろう。)
4「いとうつくしう、生ひなりにけり」を叔母が姪っ子に話すように現代語訳しなさい。
解答(タップで表示)
(とてもかわいらしく、成長したわねえ)
5「まめまめしきものは、まさなかりなむ」を現代語訳しなさい。
解答(タップで表示)
(実用的なものは、きっとよくないでしょう)
文法の確認
今回も助動詞の確認です。助動詞「む」がたくさん出てきますので、先に確認しておいてもよいかもしれません。
【問題】青線部の助動詞の終止形と文法的意味をそれぞれ答えなさい。
かくのみ思ひくんじたるを、心も慰め①むと心苦しがりて、母、物語など求めて見せ給ふに、げにおのづから慰みゆく。紫のゆかりを見て、続きの見②まほしくおぼゆれど、人語らひなどもえせず。誰もいまだ都慣れ③ぬほどにて、え見つけず。いみじく心もとなく、ゆかしくおぼゆるままに、「この源氏の物語、一の巻よりして、みな見せ給へ。」と心の内に祈る。親の太秦に籠もり給へ④るにも、異事なくこのことを申して、出で⑤むままにこの物語見果て⑥むと思へど、見えず。いと口惜しく、思ひ嘆かるるに、をばなる人の田舎より上りたる所に渡いたれば、「いとうつくしう生ひなり⑦に⑧けり。」など、あはれがり、めづらしがりて、帰るに、「何をか奉ら⑨む。まめまめしきものはまさなかり⑩な⑪む。ゆかしくし給ふなるものを奉ら⑫む。」とて、源氏の五十余巻、櫃に入りながら、ざい中将、とほぎみ、せり河、しらら、あさうづなどいふ物語ども、一袋取り入れて、得て帰る心地のうれしさぞいみじきや。
解答はこちら(タップで表示)
【解答】
①意志「む」 ②(自己の)希望「まほし」 ③打消「ず」 ④完了「り」 ⑤婉曲「む」 ⑥意志「む」 ⑦完了「ぬ」 ⑧詠嘆「けり」 ⑨意志「む」 ⑩強意「ぬ」 ⑪推量「む」 ⑫意志「む」
おわりに
お話の後半部(第二回)について
今回は「源氏の五十余巻」のうち、前半部を読んでいきました。今回の文章は非常に有名な箇所で、作者の喜びが伝わってくるようで読んでいるこちら側もうれしくなってしまいます。この後は、有頂天になる様子がより生き生きと描かれることになります。できれば『更級日記』も「ビギナーズ・クラシックス」などで、多くの文章に触れておきたいですね。今回の文章の続きの解説の希望があれば、後半部も公開します。以下からご連絡ください。
『更級日記』の別のお話を読む
「東路の道の果て」もあります。そちらも是非ご覧ください。


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