このページでは、学生時代に国語が苦手だった筆者が、この順番で学べば文章の内容が分かるようになり、一気に得意科目にできたという経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「これなら古文が理解できる!」という学ぶ手順を具体的に紹介していきます。読んでいくだけで、文章の内容が分かるようになります。
はじめに
今回は『竹取物語』の冒頭です。みなさんも「かぐや姫」のお話は小さいときに読んだことがある人が多いでしょう。ということはある程度のあらすじは分かっているということです。それが昔のことばではどのように書かれていたか、知ってみましょう!
では「竹取物語」冒頭の部分をやっていきましょう。これは、教科書によっては「なよ竹のかぐや姫」や「かぐや姫誕生」などと書かれてあったりもします。
「今は昔、竹取の翁といふ者」(なよ竹のかぐや姫」「かぐや姫誕生」)読解のコツ&現代語訳
古文を読解する6つのコツをお話しましょう。以下の順に確認していくと以前よりも飛躍的に古文が読めるようになるはずです。
何度も本文を読んでみて(できれば声に出して)、自分なりに文章の内容を想像してみます。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」「どのようなことを言っているか」「どのような行動をしているか」を考えていきます。

本文にどのような人物が出てきているか、確認します。紙で文章を読むときは、鉛筆などで▢をつけるとよりよいでしょう。
簡単でもよいので、誰かに「こんなお話」だと説明できる状態にします。ここでは、合っているかどうかは関係ありません。今の段階で、こんな話じゃないかなと考えられることが大切なのです。考えられたら、実際にこの項目をみてください。自分との違いを確認してみましょう。
古文を読解する上で避けられないのは、「古文単語」を覚えることです。単語集で覚えるのもよいですが、文章の中で覚えられるともっといいですね。文章で出てきた単語は、他の文章でも使えるように解説していますので、応用を利かせたい人はぜひそこまで読んでみてくださいね。また、古文単語は意味だけでなく、その語が発生した経緯などが分かると面白いですよ。
古文を読んでいると、どうしても自力では分からない所がでてきます。ちなみに、教科書などでは注釈がありますが、注釈があるところは注釈で理解して構いません。それ以外のところで、多くの人が詰まるところがありますが、丁寧に解説しているので見てみてください。

step5とstep6は並行して行います。きっと、随分と読めるようになっているはずです。
本文を読む
何度も本文を読んでみて、自分なりに文章の内容を想像してみましょう。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」、「どのようなことを言っているか」、「どのような行動をしているか」を考えていきます。

今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、さかきの造となむいひける。その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。翁言ふやう、「わが朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて知りぬ。子になり給ふべき人なめり。」とて、手にうち入れて家へ持ちて来ぬ。妻の嫗にあづけて養はす。うつくしきこと限りなし。いとをさなければ、籠に入れて養ふ。
竹取の翁、竹を取るに、この子を見つけてのちに竹取るに、節をへだててよごとに、黄金ある竹を見つくること重なりぬ。かくて翁、やうやう豊かになりゆく。
この児、養ふほどに、すくすくと大きになりまさる。三月ばかりになるほどに、よきほどなる人になりぬれば、髪上げなどさうして、髪上げさせ、裳着す。(『竹取物語』より)
文章を読むことができたら、下の「登場人物の確認」「内容を簡単に理解」を読んで、自分の理解と合っていたかを確認します。
登場人物の確認
- 竹取の翁(さかきの造)
- 三寸ばかりなる人(かぐや姫)
- 妻の嫗(翁の妻)
翁(おじいさん)、嫗(おばあさん)、かぐや姫の三人が中心です。
お話を簡単に理解
- 昔むかし、竹取の翁(さかきの造)という竹を取ることを生業としていた者がいた
- ある時、竹の中に根本が光る竹を見つけ、そこには小さな(約10cm)女の子がいた
- 翁は自分の子になるべき人だと思って、家に連れて帰り、嫗に育てさせる
- その後、翁は黄金の竹を見るけることが重なり、裕福になる
- 女の子は三か月で一人前の女性の大きさになり、成人の儀式を執り行う
小さいときに「かぐや姫」を読んだことがあれば、大体は知っていますね。翁の名前が「さかきのみやつこ(さぬきのみやつこ)」ということをこの文章で初めて知ったものです。
次に、今回は重要古文単語を見ていき、その後で理解しにくい箇所を解説していきます。
重要古文単語の確認
本文に出てくる重要古文単語を先に確認しておきましょう
今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、さかきの造となむいひける。その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。翁言ふやう、「わが朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて知りぬ。子になり給ふべき人なめり。」とて、手にうち入れて家へ持ちて来ぬ。妻の嫗にあづけて養はす。うつくしきこと限りなし。いとをさなければ、籠に入れて養ふ。
竹取の翁、竹を取るに、この子を見つけてのちに竹取るに、節をへだててよごとに、黄金ある竹を見つくること重なりぬ。かくて翁、やうやう豊かになりゆく。
(『竹取物語』より)
あやし
「あやし」(形・シク活)
1(怪し)不思議だ、変だ、妙だ
2(賤し)粗末だ、、みすぼらしい、身分が低い(=いやし)
「あやし」は上記2種類の意味がありますが、ひらがなで「あやし」とあっても、漢字に置き換えると意味が理解できそうです。
うつくし
「うつくし」(形・シク活)
=かわいい
ゐる
「ゐる」(居る)(動・ワ上一)
=座る/いる
※「率る」=連れる
「ゐる」はワ行上一段活用の動詞です。「居る」は「座る」の意味、「率る」は「連れる」と、2種類の意味がありますが、これも、漢字に置き換えると意味が理解できるでしょう。
おはす
「おはす」(動・サ変)
=(尊敬語)いらっしゃる
(←「あり」/「行く・来」)
やうやう
「やうやう」(副)
=だんだん、次第に
たくさんあって大変ですが、どれもよく出てくる古文単語です。大学入試では必須(覚えておかないといけない単語)ですので、一つ一つ丁寧に覚えていきましょう。
理解しにくい箇所の解説
本文を読んで自分で内容を考えていったときに、おそらく以下の箇所が理解しにくいと感じたでしょう。その部分を詳しく説明します。解説を読んで、理解ができたら改めて本文を解釈してみてください。
- いとうつくしうてゐたり
- 竹の中におはするにて知りぬ
- 子になり給うべき人なめり

①までのあらすじです。
竹の中にいた小さな子をおじいさん(竹取の翁)が見つけました。
《①までの本文解釈と現代語訳》
初めに、①までの文章を解釈してみましょう。「あやし」の意味が分かっていることが前提です。
今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、さかきの造となむいひける。その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、
(訳)はこちら(タップで表示)
今ではもう昔のことになるが、竹取の翁という者がいた。野山に分け入って竹を取っては、(それを)さまざまなことに使っていた。名を、さかきの造といった。その竹の中に、根元が光る竹が一本あった。不思議に思って、近寄って見ると、筒の中が光っている。それを見ると、三寸ほどの人が、



おじいさんの名前は「さかきのみやつこ(さぬきのみやつこ)」と言うんだ。初めて知った!
①いとうつくしうてゐたり


(訳)はこちら(タップで表示)
(竹の中の小さな子は)とてもかわいい様子で座っている
ここでは、「うつくし」「ゐる」の重要単語2つを覚えましょう。「うつくし」は「かわいい」という意味でしたね。「うつくし」の連用形は「うつくしく」ですが、言いやすいように「うつくしう」となっています。これをウ音便といいます。
次に「ゐる」です。漢字では「居る」と書いて、「座る/いる」という意味を持ちます。 また、「ゐる」はワ行上一段活用の動詞です。
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「いと」=とても です。これはなぜか感覚で分かるようです。
「たり」は助動詞で、「〜ている」と訳します。これは後々詳しくやりましょう。



その後、おじいさんは毎日竹の中を見ていたから、女の子の存在が分かったと言っているよ。
②竹の中におはするにて知りぬ


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竹の中にいらっしゃるので(この子が自分たちの子になるということが)分かった
ここでは、まず「おはす」の意味の確認です。「あり」や「行く/来」の尊敬語で「いらっしゃる」となります。尊敬語は「動作をする人」を敬うときに用いるものです。ここでは「あり」(=いる)を尊敬語にしています。そうした時に、もう一つ大きなことに気が付きます。それは、
「翁」(たち)は「かぐや姫」に尊敬語を使用している
ということです。それがなぜなのかは、本文をもっともっと読んでいかないとわかりませんが、文章を読んで主語を判別するときに役立つので知っておきましょう。
「知る」は「分かる」と解釈するとうまくいくことが多いです。では、何が分かったのかいうと、前の文に「朝ごと夕ごとに見る竹」とあり、次の文に「子になりたまふべき人なめり」(解釈は③「子になりたまふべき人なめり」でします)とあるので「自分(だけ)がこの竹を取る仕事をしていて毎日竹を見ていたので、この子が竹の中にいたということは、自分たちの子になるべき人なのだということが分かった」と考えられます。
「ぬ」は完了を表す助動詞です。今は「〜た」と訳す程度が分かっていればいいですが、将来的に詳しく学んで行きますので、先に学習しておいてもよいでしょう。
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③子になりたまふべき人なめり
(訳)はこちら(タップで表示)
(私たちの)子になりなさるはずの人であるようです


「たまふ」は尊敬語です。「なる」という動詞の連用形「なり」の下についているので、尊敬語の補助動詞になります。敬語における補助動詞は、「尊敬」などの意味を加えるだけで、実際の動詞が持つ「意味」がなくなっているものだと解釈しておけばよいです。ですから、補助動詞の「たまふ」(給ふ)は「お〜になる/〜なさる」と今は覚えておけばよいでしょう。
「べし」は助動詞です。後々詳しくやりますが、私は「べし」が出てきたら「〜べきだ」か「〜はずだ」と訳しておけば大半は問題ないと伝えています。ここでも、「〜はずの(人)/〜べき(人)」で十分意味が通じます。
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「なめり」は助動詞「なり」と助動詞「めり」がくっついたものと今は考えておいて結構です。訳は「〜であるようだ」です。ここは助動詞の学習でも最終盤に出てくる知識なので、慌てて理解する必要はありません。
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「おまけ」事項です。興味のある方はご覧ください。(▼をタップで表示)
「子になる」には作者の遊び心が含まれています。それは、竹取の翁の仕事が竹を取って、それを様々なことに利用している(=野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり)ことと関係します。この文章の後で、かぐや姫を「籠に入れて養ふ」とあることから、「よろづのこと」の一つに、「籠を作(って売)る」ことがあると考えられます。つまり、この部分は
「私が籠を作る竹の中にいたのだから、竹が籠になるようにこの子も私の子になる」
と、作者がダジャレを放り込んできたとも考えられるわけです。そのような遊び心も分かると少し古文が面白く感じられませんか。
《①以降の本文解釈と現代語訳》
では、最後に①以降の文章を解釈してみましょう。「うつくし」「ゐる」「おはす」「やうやう」は覚えている前提で進めますよ。
いとうつくしうてゐたり。翁言ふやう、「わが朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて知りぬ。子になり給ふべき人なめり。」とて、手にうち入れて家へ持ちて来ぬ。妻の嫗にあづけて養はす。うつくしきこと限りなし。いとをさなければ、籠に入れて養ふ。
竹取の翁、竹を取るに、この子を見つけてのちに竹取るに、節をへだててよごとに、黄金ある竹を見つくること重なりぬ。かくて翁、やうやう豊かになりゆく。
(訳)はこちら(タップで表示)
とてもかわいい様子で座っている。翁が言うには、「私が毎朝毎夕見る竹の中にいらっしゃるので(この子が自分たちの子になるということが)分かった。(あなたは籠ではなく、わたしたちの)子になりなさるはずの人であるようです」と言って、手(のひら)に入れて家へ持って来た。妻の嫗にあずけて養育させる。かわいらしいことはこのうえない。たいそう小さいので、籠に入れて養育する。
竹取の翁が、竹を取ると、この子を見つけてから後に竹を取ると、節を隔てて節と節との間ごとに、黄金のある竹を見つけることが重なった。こうして翁は、だんだん裕福になっていく。
おわりに(テスト対策へ)
テスト対策へ
今回は、「なよ竹のかぐや姫」(かぐや姫誕生)の前半部についてお話しました。一通り学習を終えたら、今度はテスト対策編もご覧ください。


お話の続き(第2回)について
おじいさんはこの女の子を家に連れて帰り、嫗(おばあさん)に育てさせます。その後、おじいさんはだんだんと豊かになって行くのですが…。続きの後半は会員限定記事(登録は無料)となります。記事の閲覧を希望される人は下記の「会員限定記事の閲覧を希望する」をタップして会員登録を行ってください。
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