このページでは、学生時代に国語が苦手だった筆者が、この順番で学べば文章の内容が分かるようになり、一気に得意科目にできたという経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「これなら古文が理解できる!」という学ぶ手順を具体的に紹介していきます。読んでいくだけで、文章の内容が分かるようになります。
はじめに
今回は『枕草子』258段「うれしきもの」です。 『枕草子』は平安時代中期、11世紀初頭(西暦1001年ころ)に成立した、いわゆる「三大古典随筆」の一つです。『枕草子』は以下のページで詳しく解説しているので、そちらをご覧ください。

今回の「うれしきもの」は(1)の「類聚(類集)的章段」の一節になります。「類聚(類集)的章段」は、「〜は」で始まるものと、「〜もの」ではじまるものが多く、「ものづくし」とも呼ばれます。自然や人事を特色によって集め表現したものです。今回は「うれしききもの」をたくさん集めています。実際の文章で確認してみましょう。
「うれしきもの」要点・あらすじ・現代語訳
古文を読解する5つのコツをお話しましょう。以下の順に確認していくと以前よりも飛躍的に古文が読めるようになるはずです。飛躍的に古文が読めるようになるはずです。
何度も本文を読んでみて(できれば声に出して)、自分なりに文章の内容を想像してみます。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」「どのようなことを言っているか」「どのような行動をしているか」を考えていきます。

本文にどのような人物が出てきているか、確認します。紙で文章を読むときは、鉛筆などで▢をつけるとよりよいでしょう。
簡単でもよいので、誰かに「こんなお話」だと説明できる状態にします。ここでは、合っているかどうかは関係ありません。今の段階で、こんな話じゃないかなと考えられることが大切なのです。考えられたら、実際にこの項目をみてください。自分との違いを確認してみましょう。
古文を読んでいると、どうしても自力では分からない所がでてきます。ちなみに、教科書などでは注釈がありますが、注釈があるところは注釈で理解して構いません。それ以外のところで、多くの人が詰まるところがありますが、丁寧に解説しているので見てみてください。

step4とstep5は並行して行います。きっと、随分と読めるようになっているはずです。
本文を読む
何度も本文を読んでみて、自分なりに文章の内容を想像してみましょう。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」、「どのようなことを言っているか」、「どのような行動をしているか」を考えていきます。


うれしきもの、まだ見ぬ物語の一を見て、「いみじうゆかし。」とのみ思ふが、残り見出でたる。さて、心劣りするやうもありかし。
人の破り捨てたる文を継ぎて見るに、同じ続きをあまたくだり見続けたる。
「いかならむ。」と思ふ夢を見て、「おそろし。」と胸つぶるるに、ことにもあらず合はせなしたる、いとうれし。
よき人の御前に、人々あまたさぶらふ折、昔ありけることにもあれ、今聞こしめし、世に言ひけることにもあれ、語らせたまふを、我に御覧じ合はせてのたまはせたる、いとうれし。
遠き所はさらなり、同じ都のうちながらも隔たりて、身にやむごとなく思ふ人のなやむを聞きて、「いかにいかに。」と、おぼつかなきことを嘆くに、おこたりたる由、消息聞くも、いとうれし。
思ふ人の、人にほめられ、やむごとなき人などの、口惜しからぬ者におぼしのたまふ。
ものの折、もしは、人と言ひかはしたる歌の聞こえて、打ち聞きなどに書き入れらるる。自らの上にはまだ知らぬことなれど、なほ思ひやるよ。
いたううちとけぬ人の言ひたる古き言の、知らぬを聞き出でたるもうれし。後に物の中などにて見出でたるは、ただをかしう、「これにこそありけれ。」と、かの言ひたりし人ぞをかしき。
(『枕草子』より)
登場人物の確認
通常、「ものづくし」は、自然や人事を特色によって集め表現したものなので、物語や日記とは異なり、登場人物はあまり出てくることはありません。今回は、作者にとって「うれしきもの」を16個(このページは前半の8個)並べたものであり、それぞれの項目は独立したものであるため、登場する人物を挙げることに意味がないので、ここでは挙げません。
お話を簡単に理解(あらすじ)
・1物語の第一巻を見て興味を持ったものの続きを見つける
・2人が捨てた手紙をつなげて読むことができた
・3怖い夢を見たときに何事もないと夢判断をしてもらう
・4中宮さまが自分に目を合わせてお話なさる
・5遠くにいる大切な人の病気が快方に向かっている知らせを聞く
・6自分の愛する人が身分の高い人に話題にされる
・7しかるべきときに詠んだ歌が評判になって「打聞」などに書き留められる
・8親しくない人が言った自分のしらない昔の和歌や漢詩を誰かから聞き出す
次の「理解しにくい箇所の解説を見る」で、一つ一つの「うれしきもの」を解説していきます。
理解しにくい箇所の解説を見る
本文を読んで自分で内容を考えていったときに、おそらく以下の箇所が理解しにくいと感じたでしょう。その部分を詳しく説明します。解説を読んで、理解ができたら改めて本文を解釈してみてください。
- いみじうゆかし
- 昔ありけることにもあれ、今聞こしめし、世に言ひけることにもあれ、語らせたまふを、
- やむごとなく思ふ人のなやむを
- やむごとなき人などの、口惜しからぬ者におぼしのたまふ。
- なほ思ひやるよ
今回は、本文に登場する8つの「うれしきもの」を順番に見ていきながら、特に理解しにくい箇所を①〜⑤の項目ごとに解説していきます。
《1つめの「うれしきもの」》
うれしきもの、まだ見ぬ物語の一を見て、「いみじうゆかし。」とのみ思ふが、残り見出でたる。さて、心劣りするやうもありかし。
うれしいもの。まだ見たことのない物語の一巻目を見て、「とても読みたい。」とばかり思っていた、その残りを見つけたの。ところが、予想外にがっかりするようなこともある。

「いみじうゆかし」は次の項目で解説します。
①いみじうゆかし
(訳)はこちら(タップで表示)
とても読みたい


自分が読んだことのない物語の第一巻を読んで、興味を持ったときの感情を表しています。
「いみじう」は、シク活用の形容詞「いみじ」の連用形(ウ音便)です。「いみじく(いみじう)」になっている時は、たいてい後ろの語を強調する働きであることは他の記事でも述べています。ですので、「たいそう/とても/非常に」などと訳します。また、「ゆかし」は心がそのものに向かって進んで行きたくなる感じを表す語でした。これも他の記事で出てきています。「〜たい」と訳すのですが、場面に応じてどうしたいのかを考えます。ここでは「(続きを)読みたい」となります。
《2つめの「うれしきもの」》
人の破り捨てたる文を継ぎて見るに、同じ続きをあまたくだり見続けたる。
人が破り捨てた手紙をつなげて見る時に、それの続きを何行も続けて読めたの。
《3つめの「うれしきもの」》
「いかならむ。」と思ふ夢を見て、「おそろし。」と胸つぶるるに、ことにもあらず合はせなしたる、いとうれし。
「どういうことなのだろうか。」と思う夢を見て、「恐ろしいことだ。」と胸がつぶれる思いがする時に、夢解きの者が何でもないことのように夢合せをしてくれたのは、とてもうれしい。



「ことにもあらず」は「大したことではない」「何ほどのことでもない」という意味の慣用表現です。
②昔ありけることにもあれ、今聞こしめし、世に言ひけることにもあれ、語らせたまふを、
(訳)はこちら(タップで表示)
昔あったことであれ、今お聞きになり、世間で話題になったことであれ、お話しなさる時に、


「よき人(身分が高い人)」である中宮定子の御前に多くの人がお仕えしているときの中宮定子の行動について、自分がうれしいと思ったことを述べた場面です。
ここは、「語らせたまふ」が述語になっています。「よき人」が何かを語ってくださるのですが、その例として「昔ありけること」「聞こしめし、世に言ひけること」を作者は挙げています。これが例示であることを示す言葉が「にもあれ」です。二回使われているので「〜であれ、⋯であれ」と解釈して、これらが語る内容の例示であることを示すのです。
文の構造が分かれば、あとは細かい部分の解釈です。
「聞こしめし(聞こしめす)」は「聞く」の尊敬語(お聞きになる)ですが、特に身分の高い人を敬う時に使われます。「世に言いけること」は「世」が「世間」を表し、「世間で話題になっていること」と解釈します。
「語らせたまふ」は二重尊敬になっています。「せ」が尊敬の助動詞「す」の連用形、「たまふ」が尊敬語の補助動詞です。ですので、主語は「よき人」だと分かります。「よき人」が、仕えている人たち全体にお話になっているという場面です。
「を」は解釈しにくいのですが、動作の起点を表す格助詞としておきます。後とのつながりを考えて「時に」と訳しています。
「よき人」が全体に向かって話をしているときに、自分に目を合わせてくれたことがうれしいと言っているのは、次の項目で確認してみてください。
《4つめの「うれしきもの」》
よき人の御前に、人々あまたさぶらふ折、昔ありけることにもあれ、今聞こしめし、世に言ひけることにもあれ、語らせたまふを、我に御覧じ合はせてのたまはせたる、いとうれし。
身分の高い方(中宮定子)の御前に、人々がたくさん伺候している折に、昔あったことであれ、今お聞きになり、世間で話題になったことであれ、お話しなさる時に、自分にお目をお見合せになって、おっしゃってくださるのは、とてもうれしい。
③身にやむごとなく思ふ人のなやむを聞きて
(訳)はこちら(タップで表示)
自分の身にとっては特別に大切だと思う人が病気であるのを聞いて


自分にとって大切な人が病気になったのを聞いて心配する様子を表した箇所です。
「やむごとなく(やむごとなし)」は重要語ですが、漢字にすると「止む事無し」です。そのままにしておけないような大切なもの、尊重すべきものという意味を表す語です。
「やむごとなし」(形・ク活)
1捨ててはおけない/やむを得ない
2並々ではない/ひととおりではない
3尊い/高貴である/おそれ多い
「思ふ人」が「大切に思う人」ということを表すので、この「やむごとなく」は「並々ではない」という意味になります。
次に、「なやむ」を理解します。これも重要語です。現代語とややニュアンスが異なり、主に苦労や病気などの肉体的苦痛を表す語です。
「なやむ」(動・マ四)
1(肉体的・精神的に)苦しむ/困る
2病気になる/わずらう
3あれこれと非難する
ここでは、「病気になる」という意味で使われています。ついでに反対語の「病気が治る」という意味の語もここで覚えておきましょう。それは「おこたる(怠る)」です。
このように、大切に思う人が病気になったのを聞いた作者はどのようなことを考えているのか、次の項目でまとめているので、確認してみてください。
《5つめの「うれしきもの」》
遠き所はさらなり、同じ都のうちながらも隔たりて、身にやむごとなく思ふ人のなやむを聞きて、「いかにいかに。」と、おぼつかなきことを嘆くに、おこたりたる由、消息聞くも、いとうれし。
遠い所はもちろんのこと、同じ都のうちながらでも離れていて、自分の身にとっては特別に大切だと思う人が病気であるのを聞いて、「どうだろうかどうだろうか」と、不安な思いにため息をついている時に、快方に向かっているという旨の、知らせを聞くのも、とてもうれしい。



「さらなり」は『枕草子』の冒頭の「春はあけぼの」に出てくるよね。「月の頃はさらなり」で、「月の頃は言うまでもなく(もちろんのこと)」と訳したよ。詳しくはこちらを見てね!



「おぼつかなき(おぼつかなし)」は重要語です。ここでは「不安だ/気がかりだ」という意味になります。
④やむごとなき人などの、口惜しからぬ者におぼしのたまふ。
(訳)はこちら(タップで表示)
高貴な方などが、まんざらでもない者に(愛している人のことを)お思いになり口に出しておっしゃるの。


自分の愛する人が、高貴な人同士の会話に出てくることを喜ぶ様子を表した箇所です。
「やむごとなき」は先ほども出てきましたが、ここは「やむごとなき人」となっているので、「高貴な(人)」と解釈すればよいでしょう。
「などの」の「の」は主格を表す格助詞です。その「高貴な人など」が、「口惜しからぬ者」と会話をしているのです。
「口惜しからぬ者」の「口惜し(くちをし)」は、「残念だ」という意味で、「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形ですから、直訳すると「残念でない者」となります。少し分かりにくいですが、ここは「『やむごとなき人』よりもやや下がるけれども、身分が低くない人」という解釈でよいと思います。
「やむごとなき人」が「口惜しからぬ者」と話をしているときに、自分の愛する人(「思ふ人」)のことを思い出して、口に出しなさったことを作者は耳にして「うれしい」と思っているのです。
《6つめの「うれしきもの」》
思ふ人の、人にほめられ、やむごとなき人などの、口惜しからぬ者におぼしのたまふ。
自分の愛している人が、人にほめられ、高貴な方などが、まんざらでもない者に(愛している人のことを)お思いになり口に出しておっしゃるの。
《7つめの「うれしきもの」》
ものの折、もしは、人と言ひかはしたる歌の聞こえて、打ち聞きなどに書き入れらるる。自らの上にはまだ知らぬことなれど、なほ思ひやるよ。
しかるべき折(に詠んだ歌)、あるいはまた、人々が贈答した歌が世間に聞こえて、「打聞(和歌や逸話などを聞いたままに書き留めた文章)などに書きとめられるの。自分の身としてはまだ経験のないことだけれど、やはり(うれしいだろうと)推測するのだ。
⑤なほ思ひやるよ
(訳)はこちら(タップで表示)
やはり(うれしいだろうと)推測するのだよ。


「なほ」は「やはり」、「思ひやる」は「推測する」という意味を表す語で、「よ」は詠嘆を表す間投助詞なので、「やはり推測するのだよ」というのが直訳です。テーマが「うれしきもの」なので、「うれしいと推測する」となるのは明らかです。
では、なにが「うれしい」のか。それは前の項目にありますが、「打聞」に書き留められることです。「打聞(打聞)」は「和歌や逸話などを聞いたままに書き留めた文書」のことです。自分の和歌が記録に残ることに喜びを感じるところに、作者の考え方がよく表れているような気がしますね。
《8つめの「うれしきもの」》
いたううちとけぬ人の言ひたる古き言の、知らぬを聞き出でたるもうれし。後に物の中などにて見出でたるは、ただをかしう、「これにこそありけれ。」と、かの言ひたりし人ぞをかしき。
あまり親しくしていない人が言った古い和歌や漢詩などで、知らないのを誰かから聞き出したのもうれしい。その後に、何かの(本の)中などに見つけたのは、ただもうおもしろく、「(あれは)こうだったのだな」と、それを言っていたあの人がおもしろく思われる。



「古き言の」の「の」は同格の格助詞「の」で、「〜で」と訳します。
おわりに
テスト対策へ
今回は、『枕草子』の「うれしきもの」の前半部についてお話しました。一通り学習を終えたら、今度はテスト対策編もご覧ください。なお、「うれしきもの」のテスト対策は鋭意作成中です。
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また、後半部の解説は希望者が多ければ作成します。下の「続きを作成するように要望を伝える」からリクエストしてください。
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