このページでは、学生時代に国語が苦手だった筆者が、この順番で学べば文章の内容が分かるようになり、一気に得意科目にできたという経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「これなら古文が理解できる!」という学ぶ手順を具体的に紹介していきます。読んでいくだけで、文章の内容が分かるようになります。
はじめに
今回は『枕草子』175段「村上の先帝の御時に」です。 『枕草子』は平安時代中期、11世紀初頭(西暦1001年ころ)に成立した、いわゆる「三大古典随筆」の一つです。『枕草子』は以下のページで詳しく解説しているので、そちらをご覧ください。

「村上の先帝の御時に」は(3)の「日記的(回想的)章段」の一節になります。「日記的(回想的)章段」は、作者清少納言が中宮定子に仕えた華やかな宮廷生活を描いたものです。今回は、登場人物が「村上天皇」と「兵衛の蔵人」の二人になります。なぜこの二人の話を作者が書いたのか、それは想像するしかありませんが、後に解説していきたいと思います。
「村上の先帝の御時に」要点・あらすじ・現代語訳
古文を読解する5つのコツをお話しましょう。以下の順に確認していくと以前よりも飛躍的に古文が読めるようになるはずです。飛躍的に古文が読めるようになるはずです。
何度も本文を読んでみて(できれば声に出して)、自分なりに文章の内容を想像してみます。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」「どのようなことを言っているか」「どのような行動をしているか」を考えていきます。

本文にどのような人物が出てきているか、確認します。紙で文章を読むときは、鉛筆などで▢をつけるとよりよいでしょう。
簡単でもよいので、誰かに「こんなお話」だと説明できる状態にします。ここでは、合っているかどうかは関係ありません。今の段階で、こんな話じゃないかなと考えられることが大切なのです。考えられたら、実際にこの項目をみてください。自分との違いを確認してみましょう。
古文を読んでいると、どうしても自力では分からない所がでてきます。ちなみに、教科書などでは注釈がありますが、注釈があるところは注釈で理解して構いません。それ以外のところで、多くの人が詰まるところがありますが、丁寧に解説しているので見てみてください。

step4とstep5は並行して行います。きっと、随分と読めるようになっているはずです。
本文を読む
何度も本文を読んでみて、自分なりに文章の内容を想像してみましょう。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」、「どのようなことを言っているか」、「どのような行動をしているか」を考えていきます。

村上の先帝(せんだい)の御時(おほんとき)に、雪のいみじう降りたりけるを、様器(やうき)に盛(も)らせたまひて、梅の花をさして、月のいと明(あ)かきに、「これに歌よめ。いかが言ふべき」と、兵衛(ひやうゑ)の蔵人(くらうど)に給(たま)はせたりければ、「雪・月・花の時」と奏(そう)したりけるをこそ、いみじうめでさせたまひけれ。 「歌などよむは世の常なり。かく折(をり)に合ひたる事なむ、言ひがたき」とぞ仰(おほ)せられける。(『枕草子』より)
登場人物の確認
- 村上の先帝(村上天皇)
- 兵衛の蔵人(女性、天皇に仕える下級の女官)

今回は「日記的章段」ですが、作者と中宮定子は出てきません。
お話を簡単に理解(あらすじ)
・時は村上天皇の時代(一条天皇の二代前)
・雪が降っていたのを器に盛り、梅の花を挿す。
・月が明るい時に、帝は兵衛の蔵人へ歌を詠むよう指示する。
・兵衛の蔵人は「雪・月・花の時」と奏上する。
・帝はそれを絶賛する。
理解しにくい箇所の解説を見る
本文を読んで自分で内容を考えていったときに、おそらく以下の箇所が理解しにくいと感じたでしょう。その部分を詳しく説明します。解説を読んで、理解ができたら改めて本文を解釈してみてください。
- これに歌よめ。いかが言ふべき。
- 雪・月・花の時
- 奏したりけるをこそいみじうめでさせ給ひけれ
- 歌など詠むは世の常なり
- 折に合ひたること
《①までの解釈と現代語訳》
最初に、①までの文章を解釈してみましょう。
村上の先帝の御時に、雪のいみじう降りたりけるを、様器に盛らせたまひて、梅の花をさして、月のいと明かきに、
(訳)はこちら(タップで表示)
村上の帝の御代に、雪がとても深く降ったのを、白い器に盛らせなさって、それに梅の花を挿して、月がたいへん明るい時に、
ここで、前提を少しお話しておきます。
このお話は、宮仕えをはじめた清少納言が緊張してかたくなっていた時に、中宮定子が話してくれた内容を書きつけたものだと思われます。清少納言と兵衛の蔵人を重ね合わせ、清少納言の機知に富んだ性格や豊富な漢詩文の知識を遺憾無く発揮し、清少納言が自信を持って宮仕えを行ってもらえるように中宮定子が話してくれたのでしょう。そんな中宮定子に対する敬意と、当時の才女であった兵衛の蔵人への共感によって、作者清少納言がこの話を書き留めたのだと考えられます。そのような村上天皇に仕える兵衛の蔵人が持つ「才女の条件」を今回の主題として、このお話を読み取っていきましょう。
①これに歌よめ。いかが言ふべき。
(訳)はこちら(タップで表示)
「これについて歌を詠みなさい。 どのように詠むのがよいか」


これは、村上天皇が兵衛の蔵人に命令した時の言葉です。雪がとても深く降った時に、その雪を白い器に盛らせて、そこに梅の花を挿しました。その時外は月が出てたいへん明るかったのです。
そのような風流な様子に、自分の信頼する使用人である兵衛の蔵人ならどのような回答を出すか。天皇は期待して、兵衛の蔵人にお題をだしたのでしょう。
「いかが言ふべき」の「いかが」は「いかにか」がつづまった形なので、原則として疑問詞全般を指しますが、ここでは「どのように」という意味になります。また、「言ふべき」の「べき」は「べきだ」と当然に取ったり、「できる」と可能の意味として考えることもできますが、ここでは適当の助動詞「べし」の連体形として、「どのように詠むのがよいか」と解釈しておきます。あと、「べし」が連体形なのは、係り結びの法則(疑問詞の結びは連体形)によります。
②雪・月・花の時


村上天皇から「どのように詠むのがよいか」とお題を出されたときに、兵衛の蔵人が答えたものです。
兵衛の蔵人の答えは「雪・月・花の時」でした。これでは、「歌を詠め」という問いに答えていないような気がします。
実は、これは白居易の詩文集『白氏文集』第25「殷協律に寄す」にある一節で、藤原公任の詩文集である『和漢朗詠集』にも掲載されているので、当時有名な漢詩であったと推測されます。全体は「琴詩酒の伴(とも)我を抛(なげう)つ。雪月花の時最も君を憶(おも)ふ」で、「琴や詩や酒の伴はみな私を見捨てて散り散りになった。雪月花の折になるごとに、特に君のことを思い出す」という意味です。兵衛の蔵人は、質問に対して漢詩で答えたのです。
兵衛の蔵人はもちろん「雪・月・花の時最も君を憶ふ」とすべて詠めたとは思いますが、あえて「雪・月・花」しか口に出しませんでした。そこにも兵衛の蔵人の配慮があります。どういうことでしょうか。
「最も君を憶ふ」というのは、もちろん兵衛の蔵人が最も伝えたいことですが、それをあえて言わないことで相手に想像させるという高度な技を使ったと考えることができます。確かにそれもあるのですが、兵衛の蔵人は自分の立場をわきまえています。下級の女官である兵衛の蔵人が目の前の村上天皇にこの言葉を口にすることは身分不相応で、出過ぎたことだと考え、あえて口にださなかったのです。このような「女性としての控えめな態度」を見せるところに、村上天皇は信用を置いていたのでしょう。
③奏したりけるをこそ、いみじうめでさせ給ひけれ
(訳)はこちら(タップで表示)
と奏上した(帝に申し上げた)のを、帝はたいそうお褒めになったのだった


兵衛の蔵人の回答を帝が絶賛する場面です。
「奏したりけるを」の「奏し」は絶対敬語で、「帝に申し上げる/奏上する」と解釈します。絶対敬語は以下のページで詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。
また、「奏したりけるを」の「たり」は完了の助動詞「たり」の連用形、「ける」は過去の助動詞「けり」の連体形です。この文は、作者が直接見たわけではない話なので、「けり」がよく使われています。
「いみじう」はシク活用の形容詞「いみじ」の連体形(ウ音便)ですが、「いみじく」となる場合は、たいてい「程度のはなはだしさ」を表すので「たいそう/非常に/ひどく」などと訳すことが多いです。次に、「めでさせ給ひけれ」の「めで」ですが、これは重要単語「めづ」という動詞の連用形です。
「めづ(愛づ/賞づ)」(動・ダ下二)
=愛する/称賛する/ほめる
「させ」は主語が帝で、かつ下に「給ひ」があるので、尊敬の助動詞「さす」の連用形ととって間違いないでしょう。「給ひ」は尊敬語の補助動詞です。また「けれ」は過去の助動詞「けり」の已然形ですが、直前の係助詞「こそ」の結びになっています。
以上をまとめると、「(と)帝に申し上げたのを、帝はたいそうお褒めになった(のだった)」と解釈できます。
④歌など詠むは世の常なり
(訳)はこちら(タップで表示)
(こういう場合、)歌など詠むのは、(この世の中では)ありきたりなことだ。


兵衛の蔵人が天皇のお題に対して、漢詩の一部を引用した回答をしたことに対して、感想を述べている場面です。
「歌よめ」と言った帝に対して、兵衛の蔵人は自信の思いが最も伝わるのはこの漢詩だと考えて詠みました。それに対して、帝は絶賛しています。ここに天皇の考え方が見え隠れします。
天皇は、「歌よめ」とは言いましたが、和歌を詠むことに限定しているわけではなく、和歌よりももっとすばらしい自己表現が見つかれば、和歌に固執しない柔軟な対応をしてもよいと考えていたことがわかります。そのような柔軟な対応ができる兵衛の蔵人はやはり才女であると認めているのです。
当時は一般的に女性が漢詩をひけらかすことはためらわれる時代です。それでも、村上天皇はそんなことは気にもとめず、臨機応変な対応を絶賛しています。この様子を中宮定子が作者清少納言に話すのは、清少納言への気遣いがあるはずです。清少納言は漢詩漢文の知識に長けており、そのことを隠す必要はないよ、あなたらしく仕えたらいいよということを中宮が言ってくれていると感じたことと思います。そんな中宮定子への思いを込めたこの章段なのだと考えると、なんだか温かい気持ちになれますね。
作者と中宮定子が今回のような白居易の漢詩文を用いてやり取りをしている文章がこちらに見えます。
280段「雪のいと高う降りたるを」もぜひご覧ください。
⑤折に合ひたること
(訳)はこちら(タップで表示)
その時にぴったりなこと


兵衛の蔵人のような「折に合ひたること」はなかなか言えるものではない、と天皇は褒め称えていますが、「折に合ふ(ちょうどその時にぴったりである)」とありますが、どのような点でぴったりだったのでしょうか。
「雪が積もっていたのを集めて器に盛った」「それに梅の花を挿した」「そのとき月が明るかった」この条件を考えて、兵衛の蔵人は「雪」「梅」「月」の三つを表し、かつ自分の思いを伝えられるような和歌をまず考えた(A)でしょう。でも、とっさにはそれを作るよりも、白居易の漢詩を詠むほうがこの時は適切だと考えた(B)。白居易の漢詩に、現在の状況を的確に表し、かつ自分の思いを伝えられるものがある、迷わず兵衛の蔵人はその漢詩を口に出しました。しかも、その漢詩の後半部「最も君を憶ふ」を敢えて言わないという、自分の立場や関係性を考えて行動をすることができる(C)。そのような兵衛の蔵人の態度をすばらしいと思い、常にそばに置いておきたいと考えたのではないでしょうか。
以上をまとめると、この本文に現れている帝の求める才女の条件とはこのようなものと考えることができます。
1.女性らしい控えめな態度(C)
2.臨機応変で柔軟な対応(B)
3.状況を総合的に判断する能力(A)


《①以降の解釈と現代語訳》
最後に、①以降の内容を解釈してみましょう。(①〜⑤の内容も含みます)
「これに歌よめ。いかが言ふべき」と、兵衛の蔵人に給はせたりければ、「雪月花の時」と奏したりけるをこそ、いみじうめでさせたまひけれ。「歌などよむは世の常なり。かく折に合ひたる事なむ、言ひがたき」とぞ仰せられける。
(訳)はこちら(タップで表示)
「これについて歌を詠みなさい。 どのように詠むのがよいか」と兵衛の蔵人にお下しになったところが、「雪月花の時」と奏上したのを、帝は非常にお褒めになったのだった。「こういう場合、歌など詠むのは、(この世の中では)ありきたりなことだ。こんなふうに、その時にぴったりなことは、なかなか言えないものだ」と仰せになった。
おわりに
テスト対策へ
今回は、『枕草子』の「村上の先帝の御時に」についてお話しました。今度はテスト対策編もご覧ください。テスト対策は鋭意作成中です。
定期テスト対策が終わった後は、本格的な受験対策も考えないと……。かといって、学習塾へ行くのは時間がない。でも、もっとハイレベルな学習をしたい!という人には以下をオススメします。まずは資料請求をして、内容を確認してみましょう!【Z会の通信教育 高校生向けコース】
『枕草子』は初見では非常に難しいので、「ビギナーズ・クラシックス」などで多くの文章に触れておきたいですね。他にも、『桃尻語訳・枕草子』などもおもしろいです。興味があれば読んでみてください。
読んでいただきありがとうございます!
この記事が役に立ったと思ったら、ぜひ他の記事もご覧ください。
もしよければ、友だちにもシェアしていただけるとうれしいです😊


コメント