このページでは、学生時代に国語が苦手だった筆者が、この順番で学べば文章の内容が分かるようになり、一気に得意科目にできたという経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「これなら古文が理解できる!」という学ぶ手順を具体的に紹介していきます。読んでいくだけで、文章の内容が分かるようになります。
はじめに
今回は『源氏物語』「若紫」(小柴垣のもと)の第4回です。前回は尼君が若紫の将来を心配するシーンでした。今回は新しく僧都が出てきます。これについて読んでいきましょう。
『源氏物語』について
『源氏物語』については別のページで詳しく説明していますので、そちらをご覧ください。


前回の復習
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「若紫」(小柴垣のもと)読解のコツ 第4回
では、始めていきましょう。今回も古文を読解する5つのコツをお話します。以下の順に確認していくと以前よりも飛躍的に古文が読めるようになるはずです。
何度も本文を読んでみて(できれば声に出して)、自分なりに文章の内容を想像してみます。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」「どのようなことを言っているか」「どのような行動をしているか」を考えていきます。

本文にどのような人物が出てきているか、確認します。紙で文章を読むときは、鉛筆などで▢をつけるとよりよいでしょう。
簡単でもよいので、誰かに「こんなお話」だと説明できる状態にします。ここでは、合っているかどうかは関係ありません。今の段階で、こんな話じゃないかなと考えられることが大切なのです。考えられたら、実際にこの項目をみてください。自分との違いを確認してみましょう。
古文を読んでいると、どうしても自力では分からない所がでてきます。ちなみに、教科書などでは注釈がありますが、注釈があるところは注釈で理解して構いません。それ以外のところで、多くの人が詰まるところがありますが、丁寧に解説しているので見てみてください。

step4とstep5は並行して行います。きっと、随分と読めるようになっているはずです。
本文を読む
何度も本文を読んでみて、自分なりに文章の内容を想像してみましょう。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」、「どのようなことを言っているか」、「どのような行動をしているか」を考えていきます。


僧都(そうづ)あなたより来て、「こなたはあらはにや侍(はべ)らむ。今日しも端(はし)におはしましけるかな。この上(かみ)の聖(ひじり)の方(かた)に、源氏の中将の、わらは病(や)みまじなひにものし給ひけるを、ただ今なむ聞きつけ侍る。いみじう忍び給ひければ知り侍らで、ここに侍りながら、御(おほん)とぶらひにもまうでざりける。」とのたまへば、「あないみじや。いとあやしきさまを人や見つらむ。」とて簾(すだれ)下ろしつ。「この世にののしり給ふ光源氏、かかるついでに見奉(みたてまつ)り給はむや。世を捨てたる法師(ほふし)の心地(ここち)にも、いみじう世の愁(うれ)へ忘れ、齢(よはひ)延(の)ぶる人の御ありさまなり。いで御消息(おほんせうそこ)聞こえむ。」とて立つ音すれば、帰り給ひぬ。
あはれなる人を見つるかな、かかれば、このすき者どもは、かかる歩(あり)きをのみして、よくさるまじき人をも見つくるなりけり。たまさかに立ち出づるだに、かく思ひのほかなることを見るよ、とをかしう思(おぼ)す。さても、いとうつくしかりつる児(ちご)かな、何人(なにびと)ならむ、かの人の御代はりに、明け暮れの慰めにも見ばや、と思ふ心深う付きぬ。
(『源氏物語』より)
これより前の文章は第1回、第2回、第3回をそれぞれご覧ください。
登場人物の確認
・光源氏 ・尼君
・僧都 ・女子(若紫)
※今回は「僧都」以外、動作主(主語)としてはっきりと名前が出てきているわけではありません。文章を詠みながら、丁寧に場面を追っていきましょう。
お話を簡単に理解(あらすじ)
・尼君の兄である僧都がやってきて、外から丸見えであることを注意する
・光源氏がこの山の聖の坊に病気の祈祷をしにやってきているということを僧都が聞きつけた
・僧都は、光源氏がお忍びでやってきているのでご挨拶にも行っていない
・それを聞いた尼君は慌てて簾を下ろす
・僧都は尼君に光源氏に会うことをお勧めする
・会うだけで寿命が伸びそうに思う光源氏に、僧都はあいさつをしようとこの場を立つ
・光源氏は自分の姿を悟られないように尼君の家から去る
・尼君の家にいた女の子を思い出して、忍び歩きについて考える
・光源氏は、会えない藤壺の宮の身代わりとして女の子を見続けたいと強く思う
理解しにくい箇所の解説を見る
本文を読んで自分で内容を考えていったときに、おそらく以下の箇所が理解しにくいと感じたでしょう。その部分を詳しく説明します。解説を読んで、理解ができたら改めて本文を解釈してみてください。
⑭御とぶらひにもまうでざりける
⑮見奉り給はむや
⑯いで御消息聞こえむ
⑰このすき者どもは、かかる歩きをのみして、よくさるまじき人をも見つくるなりけり
《⑭までの本文解釈と現代語訳》
では、⑪までの文章を解釈してみましょう。
僧都あなたより来て、「こなたはあらはにや侍らむ。今日しも端におはしましけるかな。この上の聖の方に、源氏の中将の、わらは病みまじなひにものし給ひけるを、ただ今なむ聞きつけ侍る。
(訳)はこちら(タップで表示)
僧都が向こうから来て、「こちらは(外から)丸見えではございませんか。今日に限って端にいらっしゃることですね。この(山の)上の(北山の)聖の坊に、源氏の中将が、わらわ病みの祈祷をするためにいらっしゃったということを、たった今聞きつけました。
⑭御とぶらひにもまうでざりける
(訳)はこちら(タップで表示)
お見舞いにも参上しなかったことよ。

僧都は、この北山に光源氏が病気の祈祷をしに来ていることを知りました。一方でお忍びで来ていたために、光源氏とはお会いできていませんでした。
「とぶらひ」は名詞ですが、これはハ行四段活用動詞「とぶらふ」が名詞化したものと考えます。「とぶらふ」は重要単語ですので、覚えておきましょう。
「とぶらふ」(動・ハ四)
1(訪ふ)訪問する/見舞う
2(弔う)人の死を悼む/とむらう
ここは「見舞う」という意味です。これを名詞化したものなので、「見舞い」とすればよいでしょう。
次に「まうでざりける」ですが、「まうで」はダ行下二段活用動詞の未然形で、「参上する」という意味です。敬語動詞で謙譲語になります。「ざり」は打消の助動詞「ず」の連用形、「ける」は詠嘆の助動詞「けり」の連体形です。
以上をまとめると、「お見舞いにも参上しなかったことよ。」と訳すことができます。
《⑮までの本文解釈と現代語訳》
では、⑮までの文章を解釈してみましょう。(⑭の内容も含みます)
いみじう忍び給ひければ知り侍らで、ここに侍りながら御とぶらひにもまうでざりける」、とのたまへば、「あないみじや。いとあやしきさまを人や見つらむ。」とて簾下ろしつ。「この世にののしり給ふ光源氏、かかるついでに
(訳)はこちら(タップで表示)
たいそうお忍びでいらっしゃったので知りませんで、ここにおりますのに、お見舞いにも参上しなかったことよ」、とおっしゃるので、「まあ大変だわ。本当に見苦しい姿を誰かが見てしまっているだろうか。」と言って簾を下ろしてしまった。「世間で評判が高くていらっしゃる光源氏を、このような機会に

「いみじ」「あやし」「ののしる」「ついで」と重要単語がたくさん出ています。ただ、「いみじ」「あやし」は意訳してあります。
⑮見奉り給はむや
(訳)はこちら(タップで表示)
拝見なさったらいかがですか


僧都は尼君に、光源氏と会うことを勧める場面です。
「見奉り給はむや」は「奉り」が謙譲語の補助動詞の連用形、「給は」が尊敬語の補助動詞の未然形です。二方面敬語ですので、まずはそれぞれの敬意の方向を考えましょう。
この文は僧都が尼君に話をしているのですから、「尼君が源氏を見る」ように勧めている場面だと分かれば、「奉り(謙譲語)」が「僧都から源氏」への敬意、「給は(尊敬語)」が「僧都から尼君」への敬意だと分かります。
次に、「見奉り給はむや」の「む」です。助動詞「む」は通常、意志か推量になることが多いですが、ここでは別の意味になります。繰り返しになりますが、ここは尼君に光源氏と会うことを勧めている場面ですので、この助動詞「む」の文法的意味は「勧誘」になります。
「や」は係助詞で、疑問を表すので、「(光源氏を)見申し上げなさったらいかがですか」と訳出できます。
《⑯までの本文解釈と現代語訳》
では、⑯までの文章を解釈してみましょう。
世を捨てたる法師の心地にも、いみじう世の愁へ忘れ、齢延ぶる人の御ありさまなり。
(訳)はこちら(タップで表示)
世を捨てた法師の気持ちにも、たいそう世の中のつらさを忘れ、寿命も延びる(ような)あの方のご様子です。
⑯いで御消息聞こえむ。
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さあご挨拶を申し上げよう。


先ほど、尼君にも光源氏に会うことを勧めましたが、自分も挨拶をしに行こうと言っている場面です。
「いで」は感動詞ですが、相手に行動を促したり、自分が思い立って行動するときに発する語です。ここは自分のことですので、「さあ」と訳しておきます。
次に「消息」です。ふりがなは「せうそこ」ですが、読みは「ショーソコ」となります。もともと人の安否を確認する意味の語です。「安」が「息」、「否」が「消」です。これは重要単語なので覚えましょう。
「せうそこ(消息)」(名)
1手紙
2訪問(の申し入れ)/挨拶
光源氏に直接会いにいくわけですから、この「消息」は「挨拶」という意味になります。「聞こえむ」の「聞こえ」は謙譲語の動詞「きこゆ」です。「言う」の謙譲語で、意味は「申し上げる」となります。「む」は意志の助動詞「む」の終止形です。
以上をまとめると、「さあご挨拶を申し上げよう。」と訳出できます。
《⑰までの本文解釈と現代語訳》
では、⑰の手前までの文章を解釈してみましょう。(⑯の内容も含みます)
いで御消息聞こえむ。」とて立つ音すれば、帰り給ひぬ。
(訳)はこちら(タップで表示)
さあご挨拶を申し上げよう。」といって法師の立つ音がするので、(源氏は)お帰りになった。
⑰このすき者どもは、かかる歩きをのみして、よくさるまじき人をも見つくるなりけり
(訳)はこちら(タップして表示)
この風流を愛する者たちは、このような忍び歩きばかりをして、めったに見つけられないような人をもよく見つけていたのだなあ。


光源氏が、尼君の家を去って滞在先に戻るときに考え事をしている場面です。この直前に「あはれなる人を見つるかな」とあります。光源氏は、「しみじみかわいらしい人を見てしまったよ」と女の子のことが頭から離れないようです。
「このすき者ども」は、「すき者」が「色好みの人」や「風流を愛する人」を表すのですが、これは光源氏の友人たちと雨の夜にさまざまな女性の品評をする機会があったところから来ています。これを「雨夜の品定め」というのですが、このときに他の男たちが、忍び歩きをして様々な女性たちと交際してきたことが語られています。詳しくはこちらで確認してみてください。また、「ども」は複数を表します。
「かかる歩き」の「歩き」は先ほども述べたように「忍び歩き」で、全体としては「このような忍び歩き」という意味です。「のみ」は限定を表す副助詞で「〜ばかり」です。現代語と同じですね。
「さるまじき人」は、「さる」が指示語で「そのような」、「まじき」が打消当然の助動詞「まじ」の連体形で、「〜はずがない」という意味なので、直訳すると「そのようであるはずがない人」なのですが、後ろに「みつくる」(見つける)とあるので、「めったに見つけられない人」などと意訳する必要があります。教科書では注がついているものも多いでしょう。
「みつくるなりけり」の「なり」は断定の助動詞「なり」の連用形、「けり」は詠嘆の助動詞「けり」の終止形です。よって、「見つけるのだなあ」と訳出できます。
風流を愛する色好みの友人たちは、忍び歩きをしてめったに見つけられないような美しい人を見つけていたのかと、光源氏が女の子を見つけたことで、自分も同じ体験ができたと感心しているのです。
《最終段落の本文解釈と現代語訳》
最後に、⑱を含む最終段落の文章を解釈してみましょう。
あはれなる人を見つるかな、かかれば、このすき者どもは、かかる歩きをのみして、よくさるまじき人をも見つくるなりけり。たまさかに立ち出づるだに、かく思ひのほかなることを見るよ、とをかしう思す。さても、いとうつくしかりつる児かな、何人ならむ、かの人の御代はりに、明け暮れの慰めにも見ばや、と思ふ心深う付きぬ。
(訳)はこちら(タップで表示)
『しみじみかわいらしい人を見てしまったよ、こうだから、この風流を愛する者たちは、このような忍び歩きばかりをして、めったに見つけられないような人をもよく見つけていたのだなあ。たまたま出ていった時でさえ、このように思いもかけないことを目にするものだ』と(光源氏は)おかしくお思いになる。『それにしても、たいそうかわいらしい女の子だったなあ、どのような人であろうか、あの藤壺の宮の身代わりとして、明け暮れ心の慰めに見たいものだ、』と思う気持ちが深くついてしまう。
おわりに
テスト対策へ
今回は、『源氏物語』の「若紫」の巻の、「尼君」と「僧都」のやりとりと、光源氏が若紫を回想するシーンについてお話しました。今度はテスト対策編もご覧ください。第四回のテスト対策は鋭意作成中です。


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『源氏物語』はあらすじだけでも知っておいてほしい物語です。あらすじと『源氏物語』を簡単に説明したページもあるので、またご覧ください。あと、あらすじを知るのはマンガも有効です。「あさきゆめみし」(大和和紀作)をぜひ読んでみてください。
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