このページでは、学生時代に国語が苦手だった筆者が、この順番で学べばテストで点数が取れ、一気に得意科目にできたという経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「これなら古文が理解できる!」という学ぶ手順も具体的に紹介していきます。「テスト対策」では、テスト前に「これだけは覚えておいてほしい」という項目をできるだけ絞って説明しています。読み終わる頃には、テストに十分対応できる力がついていることでしょう。

「神無月のころ」テスト対策
『徒然草』第11段「神無月のころ」において、テストに出そうな内容にできるだけ絞ってお話しましょう。テスト対策は次のような流れで行うとよいでしょう。このサイトは下記の流れで解説をしています。
テスト直前でもすべきことの基本は、「本文を読むこと」です。これまで学習した内容をしっかり思い出しながら読みましょう。
古文の問一は「よみ」の問題であることが多いですね。出題されるものは決まっているので、ここで落とさないように、しっかり確認しておくことです。
「どのような話」か、簡単に説明できる状態にしましょう。
ここでのメインになります。古文はどうしても「知識」を問う必要があるので、問われる箇所は決まってきます。それならば、「よく問われる」出題ポイントに絞って学習すれば、大きな失点は防げそうですね。このサイトでは「よく問われる」箇所のみを説明していますので、じっくり読んでみてください。
いわゆる「文学史」の問題です。テスト対策としては、それほど大きな点数にはならないのですが、確実に得点したいところです。
本文読解の一問一答を解答し、古典文法の問題を解答します。文法の問題は必ず出題されます。それは、直接「動詞の活用」や「助動詞の意味」を問うような問題だけでなく、現代語訳や解釈の問題などでも出題されます。必ず問題を解いて、できるようになっておきましょう。「スマホで学ぶ古文」は文法事項の説明も充実しているので、詳しく知りたいときは、ぜひそれぞれの項目に進んで学習してみてください。
本文の確認
テスト直前でもすべきことの基本は、「本文を読むこと」です。これまで学習した内容をしっかり思い出しながら読みましょう。「テスト対策」はあえてふりがなをつけていません。不安な場合は、「読解のコツ」の「本文を読む」で確認してみてください。
神無月のころ、栗栖野といふ所を過ぎて、ある山里に尋ね入ること侍りしに、遥かなる苔の細道をふみわけて、心細く住みなしたる庵あり。木の葉に埋もるる懸樋の雫ならでは、つゆおとなふものなし。閼伽棚に菊・紅葉など折り散らしたる、さすがに住む人のあればなるべし。
かくてもあられけるよと、あはれに見るほどに、かなたの庭に、大きなる柑子の木の、枝もたわわになりたるが、まはりをきびしく囲ひたりしこそ、少しことさめて、この木なからましかばと覚えしか。(『徒然草』より)
読みで問われやすい語
青線部の読みができるようになっておきましょう。
- 栗栖野といふ所を過ぎて
- 木の葉に埋もるる懸樋の雫ならでは
- 閼伽棚に菊・紅葉など折り散らしたる
- 大きなる柑子の木の
解答はこちら(タップで表示)
「栗栖野」は「くるすの」、「懸樋」は「かけい」、「雫」は「しずく」、「閼伽棚」は「あかだな」、「紅葉」は「もみじ」、「柑子」は「こうじ」です。「閼伽棚」はよく出ます。現代仮名遣いでの解答になります。
あらすじの確認
・旧暦十月のころに、ある山里に行くことがあった
・そこにはもの寂しい様子で住んでいる庵があった
・周囲は静かで、筧に水の流れる音以外には音もしない
・その庵には風流な閼伽棚があったので誰か住んでいるのだろう
・作者はそこでの生活している人を想像し感動する
・ふと近くを見ると、実がたわわになった柑子の木がある
・その木は(実をとられないよう)周りを厳しく囲ってあった
・作者はがっかりして、興ざめした
「神無月」は旧暦10月のことです。月の異名は1月から12月まで漢字で書けるようにしておきましょう。

出題ポイント
以下の5項目が何も見ずに訳すことができるか。確認してください。
- 懸樋の雫ならでは、つゆおとなふものなし
- さすがに住む人のあればなるべし
- かくてもあられけるよ
- 大きなる柑子の木の、枝もたわわになりたるが
- この木なからましかばと覚えしか
懸樋の雫ならでは、つゆおとなふものなし
(訳)はこちら(タップで表示)
懸樋の雫の音の他には、まったく音を立てるものがない
・「雫ならでは」の「なら」と「で」の品詞と文法的意味の指摘
・「つゆ」がかかっていく語の指摘
・「おとなふ」の意味
「懸樋」とは、「泉から水を引くために架け渡してある竹や木で作った樋(とい)」のことですが、その「樋」からみずが(チョロチョロと)流れる音だけが聞こえて、人の気配もしない様子を表しています。
「雫ならでは」の「なら」は断定の助動詞「なり」の未然形、「で」は「打消」を表す接続助詞です。「で」は助動詞ではなく、助詞で、訳は「〜ないで」となります。直訳すると「雫でないでは」となりますが、ちょっと気持ち悪いので、「雫の他には」などと訳すとよいでしょう。
「つゆ〜打消」は「全否定(全部否定/全体否定)」を表し、「全く/決してーーない」という意味になります。「打消」を表す語は「なし」なので、「つゆ」は「なし」にかかっています。また、「おとなふ」は「音をたてる」という意味です。よって「まったく音を立てるものがない」と解釈できることになります。
さすがに住む人のあればなるべし
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そうはいってもやはり、住む人がいるからであろう
・「さすがに」の意味
・「あればなるべし」の訳
作者兼好法師がたどりついた山里の庵は、人の気配もなく、「懸樋」の水の音が聞こえるだけだったのですが、そばにあった「閼伽棚(あかだな)」(仏に供える浄水(閼伽)を入れた容器などを置く棚)には趣深く菊や紅葉などを折って散らしていました。そこでの作者の感想です。
「さすがに」は重要単語です。「そうはいってもやはり」と覚えましょう。「住む人のあればなるべし」は、「住む人の」の「の」が主格の「の」で「〜が」、「あれば」は「あれ」がラ行変格活用の已然形で、それに順接仮定条件を表す接続助詞「ば」が接続しているので、基本的には「あるので」と訳せばよいわけです。ですが、後に断定の助動詞「なり」(〜である)と推量の助動詞「べし」(だろう)がついているの少し訳しにくいです。ここは「ので」を「から」と言い換えて、「(住む人が)いるからであるだろう」、もう少し言い換えて、「(住む人が)いるからであろう」とするのがよいでしょう。
かくてもあられけるよ
(訳)はこちら(タップで表示)
このようにしても生活することができるのだなあ
・「かくて」の意味
・「かくて」が指している内容
・「あられけるよ」の訳
「かくて」は、「かく」が「このように」「このような」という意味ですから、「このようにして」と訳せばよいでしょう。作者兼好法師はこのような生活に憧れを抱いています。「かくて」は「山の中の人の気配がない場所で、風流に生きていること」を指していると考えられます。
「あられけるよ」の「あら」はラ行変格活用動詞「あり」の未然形ですが、ここは「生活する」「住む」「暮らす」などの意味として使われています。つぎに「れ」ですが、結論を言うと、これは可能の助動詞「る」の連用形です。『徒然草』は鎌倉時代末期の作品のため、「「可能」は下に「打消」が来るとき」というルールが、もはや曖昧になっています。ですので、「可能」だとしても問題ないのです。
「ける」は、作者の感想を述べて箇所ですから、詠嘆の助動詞「けり」の連体形となります。「よ」は間投助詞で詠嘆を表します。よって、「生活することができるのだなあ」と訳すことができるわけです。
大きなる柑子の木の、枝もたわわになりたるが
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大きな蜜柑の木で、枝もたわむほどに(実がたくさん)なっている木が
・「木の」の「の」の用法
・全体の現代語訳
作者兼好法師が、山の庵の様子に感激していたとき、ふと横をみると柑子(こうじ)(蜜柑の一種)の木がありました。
ここのポイントは「柑子の木の」の2番めにある「の」です。これは同格の格助詞と呼ばれるものです。ここは「大きなる柑子の木」と「枝もたわわになりたる(木)」が同じ「木」を指していることが分かります。「なりたる」と連体形になっているところに「の」の直前の名詞(木)を補って、「の」を「〜で」と訳すと訳としては成立します。また、「なりたる」の「たる」は存続の助動詞「たり」の連体形で「〜ている」と訳すことも忘れないでください。以上をまとめると、「大きな蜜柑の木で、枝もたわむほどに(実がたくさん)なっている木が」と訳せることになります。
この木なからましかばと覚えしか
(訳)はこちら(タップで表示)
この木がなかったならば(よかっただろうに)と、思われた。
・「ましか」の文法的意味
・「ましかば」の後に省略されている言葉の指摘
・「覚えしか」の意味
柑子の木が厳重に囲いがされています。もちろん、柑子の実を取られないようにするためです。作者兼好法師はがっかりします。
「この木なからましかば」の「ましか」は反実仮想の助動詞「まし」の未然形です。助動詞「まし」が「反実仮想」(もし〜だったら⋯だろうに)の意味になる時は、「〜ましかば⋯まし」などの構文を作ることが非常に多いです。
「ましかば」の後は言葉が省略されています。「もしこの木がなかったならば⋯⋯」ですから、「風流だったのに囲いがあるためにその風流が台無しになった」という内容が省略されているのでしょう。これをものすごく簡単に言うと、「もしこの木がなかったならばよかったのに」ということになるので、「この木なからましかば」の後には「よからまし」が省略されていると考えます。
最後に「覚えしか」は「覚え」がヤ行下二段活用動詞「おぼゆ」の連用形です。「おぼゆ」は漢字で「思ゆ」とも書きますので、「思われる」「思い出される」という意味になります。また、「しか」は過去の助動詞「き」の已然形です。係り結びの法則により已然形になっています。以上から「思われた。」と訳ができます。
文学史の確認
今回の出典である『徒然草』は、古典三大随筆の一つで、兼好法師が独自の無常観に基づいて書いた、鎌倉時代末期の随筆です。「徒然草」特徴をまとめたものを、以下に示しておきます。

練習問題(読解一問一答&文法問題)
では、上記の内容が本当に理解できたか、実際に問題を解きながら確認してみましょう。
読解一問一答 5選
1「つゆおとなふものなし」を現代語訳しなさい。
解答(タップで表示)
まったく音を立てるものがない
2「さすがに住む人のあればなるべし」を現代語訳しなさい。
解答(タップで表示)
そうはいってもやはり、住む人がいるからであろう
3「かくてもあられけるよ」を現代語訳しなさい。
解答(タップで表示)
このようにしても生活することができるのだなあ
4「大きなる柑子の木の、枝もたわわになりたるが」の2つの「の」の用法を答えなさい。
解答(タップで表示)
「柑子の」:連体修飾格 「木の」:同格
※「の」は「1主格(〜が)2連体修飾格(〜の)3同格(〜で)4体言の代用(〜のもの)5比喩(〜のように)」の5用法を覚えておきましょう。
5「この木なからましかば」の後に省略されている言葉は何か。
解答(タップで表示)
よからまし
文法問題
今回は助動詞の問題です。さまざまな助動詞に慣れていきましょう。
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【問】本文中の青線部の助動詞の意味と活用形を答えなさい。
神無月のころ、栗栖野といふ所を過ぎて、ある山里に尋ね入ること侍り①しに、遥かなる苔の細道をふみわけて、心細く住みなし②たる庵あり。木の葉に埋もるる懸樋の雫③ならでは、つゆおとなふものなし。閼伽棚に菊・紅葉など折り散らし④たる、さすがに住む人のあれば⑤なる⑥べし。
かくてもあら⑦れ⑧けるよと、あはれに見るほどに、かなたの庭に、大きなる柑子の木の、枝もたわわになり⑨たるが、まはりをきびしく囲ひ⑩たり⑪しこそ、少しことさめて、この木なから⑫ましかばと覚え⑬しか。
解答・解説はこちら(タップで表示)
①過去・連体形 ②存続(完了)・連体形 ③断定・未然形 ④存続(完了)・連体形 ⑤断定・連体形 ⑥推量・終止形 ⑦可能・連用形 ⑧詠嘆・連体形 ⑨存続(完了)・連体形 ⑩存続(完了)・連用形 ⑪過去・連体形 ⑫反実仮想・未然形 ⑬過去・已然形
おわりに
今回は『徒然草』の第11段、「神無月のころ」についてお話しました。テスト直前でも時間をかけて復習するのは本文の内容ですよ。だって、一番配点が大きいのはそこですからね。『徒然草』は他にも面白い文章がたくさん出てきます。できれば、「ビギナーズ・クラシックス」などで、他の文章にも触れてもらいたいですね。他にも解説してほしい、テスト対策としてまとめてほしいという文章があれば以下からご連絡ください。
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