「雪のいと高う降りたるを」『枕草子』読解のコツ&現代語訳|スマホで学ぶ古文

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 このページでは、学生時代に国語が苦手だった筆者が、この順番で学べば文章の内容が分かるようになり、一気に得意科目にできたという経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「これなら古文が理解できる!」という学ぶ手順を具体的に紹介していきます。読んでいくだけで、文章の内容が分かるようになります。

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目次

はじめに

 今回は『枕草子』280段「雪のいと高う降りたるを」です。 今回は枕草子』第九十八段、通称「中納言参り給ひて」です。『枕草子』は平安時代中期、11世紀初頭(西暦1001年ころ)に成立した、いわゆる「三大古典随筆」の一つです。『枕草子』の特徴をまとめたものを、以下に示しておきます。

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今回の「雪のいと高う降りたるを」は(3)の「日記的(回想的)章段」の一節になります。「日記的(回想的)章段」は、作者清少納言が中宮定子に仕えた華やかな宮廷生活を描いたもので、本文に「宮(中宮)」とはっきり明示されていなくても、中宮の存在を考える必要があります。また、作者清少納言は中宮には一段敬意の高い表現を使っているので、その存在はすぐに分かることになります。実際の文章で確認してみましょう。

「雪のいと高う降りたるを」読解のコツ&現代語訳

 古文を読解する5つのコツをお話しましょう。以下の順に確認していくと以前よりも飛躍的に古文が読めるようになるはずです。飛躍的に古文が読めるようになるはずです。

STEP
本文を読む

何度も本文を読んでみて(できれば声に出して)、自分なりに文章の内容を想像してみます。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」「どのようなことを言っているか」「どのような行動をしているか」を考えていきます。

STEP
登場人物を確認する

本文にどのような人物が出てきているか、確認します。紙で文章を読むときは、鉛筆などで▢をつけるとよりよいでしょう。

STEP
内容を大まかに把握し、説明する

簡単でもよいので、誰かに「こんなお話」だと説明できる状態にします。ここでは、合っているかどうかは関係ありません。今の段階で、こんな話じゃないかなと考えられることが大切なのです。考えられたら、実際にこの項目をみてください。自分との違いを確認してみましょう。

STEP
理解しにくい箇所の解説を見る

古文を読んでいると、どうしても自力では分からない所がでてきます。ちなみに、教科書などでは注釈がありますが、注釈があるところは注釈で理解して構いません。それ以外のところで、多くの人が詰まるところがありますが、丁寧に解説しているので見てみてください。

STEP
改めて本文を解釈する

step4とstep5は並行して行います。きっと、随分と読めるようになっているはずです。

本文を読む

 何度も本文を読んでみて、自分なりに文章の内容を想像してみましょう。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」、「どのようなことを言っているか」、「どのような行動をしているか」を考えていきます。

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 (ゆき)のいと(たか)()りたるを、(れい)ならず()(かう)()(まゐ)りて、()(びつ)()おこして、(もの)(がたり)などして(あつ)まり(さぶら)ふに、「(せう)()(ごん)よ。(かう)()(ほう)(ゆき)いかならむ。」と(おほ)せらるれば、()(かう)()あげさせて、()()(たか)くあげたれば、(わら)はせ(たま)ふ。(ひと)(びと)も「さることは()り、(うた)などにさへうたへど、(おも)ひこそ()らざりつれ。なほ、この(みや)(ひと)にはさべきなめり。」と()ふ。(『枕草子』より)

登場人物の確認

  • この宮(中宮定子)
  • 少納言(作者)
  • 人々(他の女房たち)

会話文の中に出てくる「少納言」が作者のことで、「この宮」というのが中宮定子のことです。

お話を簡単に理解

・雪が深く積もっていたとのに、格子は下がっていた
・女房たちが中宮のもとに集まった
・中宮が作者に「香炉峰の雪はどうか」と尋ねる
・作者は格子を上げさせて、御簾を高く上げる
・中宮は納得して笑う
・周りの女房たちは作者を称賛する

理解しにくい箇所の解説を見る

 本文を読んで自分で内容を考えていったときに、おそらく以下の箇所が理解しにくいと感じたでしょう。その部分を詳しく説明します。解説を読んで、理解ができたら改めて本文を解釈してみてください。

  • 例ならず御格子参りて
  • 物語などして集まり候ふに
  • 「少納言よ。香炉峰の雪はいかならむ。」と仰せらるれば
  • 笑わせ給ふ
  • さることは知り、歌などにさへうたへど、思ひこそ寄らざりつれ
  • なほ、この宮の人にはさべきなめり

①例ならず御格子参りて

(訳)はこちら(タップで表示)

いつもと違って御格子を下ろし申し上げて

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題名にある通り、「雪がとても高く降り積もっているのに」御格子がどうなっているのかを表す表現になっています。ちなみに、「御格子」とは「格子」の尊敬語ですが、中宮の部屋にあるものなので「御」がつけられています。ところで、「格子」と、後に出てくる「簾」がどんなものかイメージがつかない人は下の写真を見てください。真ん中から上に上がって固定されている、細い木を縦横に組み合わせて板を張ったものが格子、巻き上げられているものが簾です。

「例ならず」の「例」は「いつもの」という意味です。よって「例ならず」は「いつもと違って」と訳します。「御格子参る」は重要表現です。

「御格子参る」
 1御格子をお上げする
 2御格子をお下げする

格子を上げるのか、下げるのかは場面に応じて考える必要があります。一般的には、「朝に格子を上げる」「夕方に格子を下げる」のですが、今が朝なのか夕方なのかは文章からは分かりません。ですが、後で「御格子をあげさせて」とあるので、現状は「格子が下がっている」状態であることが分かります。よって、「いつもと違って御格子をお下げして(下ろし申し上げて)」と訳すことになります。

②物語などして集まり候ふに

(訳)はこちら(タップで表示)

(女房たちが)いろいろな世間話などをして(中宮定子のもとに)集まりお仕えしていると

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平安時代の冬は私たちの時代よりも、もっと寒かったようです。寒いので火鉢に火をおこすと、暖を取りに女房たちが集まってきます。

「物語」は私たちの感覚では「昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。⋯⋯」というようなものを思い浮かべそうですが、古文単語の「物語」は「話すこと」を表し、「世間話」という意味を示します。女房たちが世間話などをして中宮のもとに集まってきます。「候ふ」は、謙譲語で「お仕えする」という意味です

③「少納言よ。香炉峰の雪はいかならむ。」と仰せらるれば

(訳)はこちら(タップで表示)

「少納言よ。香炉峰の雪はどうだろうか。」と(中宮様が)おっしゃるので、

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中宮定子が清少納言にかけた言葉です。「いかならむ」の「いかなら」は疑問を尋ねる「いかなり」で、「どのように」「どのようだ」という意味です。「む」は推量の助動詞「む」の連体形です。疑問詞が上にあるので、係り結びの法則によって連体形になっています。「どうだろうか」と訳すとよいでしょう。

「仰せらるれば」の「仰せ」は「言ふ」の尊敬語「仰す」尊敬の助動詞「らる」の已然形がついたものです。敬語を二つ重ねた二重尊敬と言われるものです。ここまでを解釈すると、「少納言よ。香炉峰の雪はどうだろうか。」と(中宮様が)おっしゃるので、となります。

つぎに、「香炉峰の雪はどうだろうか」とはどういうことかについて考えます。これは「香炉峰の雪」というのが、「白氏文集」という白居易(はくきよい)の漢詩文からの一節であることが分かる必要があります。以下に「香炉峰の雪」が書かれている漢詩を確認します。七言律詩ですが、押韻は「寒」「看」「官」「安」の偶数句末のみです。また、三句目四句目・五句目六句目がそれぞれ対句になっています。書き下し文と現代語訳は下記をご覧ください。

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 (かう)()(ほう)()(あら)たに(さん)(きよ)(ぼく)し、(さう)(だう)(はじ)めて()り、(たまたま)(とう)(へき)(だい)

    ()(たか)(ねむ)()りて()()くるに(ものう)し 
 (せう)(かく)(ふすま)(かさ)ねて(さむ)きを(おそ)れず
 ()(あい)()(かね)(まくら)(そばだ)てて()き 
 (かう)()(ほう)(ゆき)(すだれ)(かか)げて()
 (きやう)()便(すなは)()()(のが)るるの() 
 ()()()(らう)(おく)るの(くわん)たり
 (こころ)(やす)()(やす)きは()()(しよ)なり
 ()(きやう)(なん)(ひと)(ちやう)(あん)()るのみならんや

(訳)はこちら(タップで表示)

香炉峰のふもとに、新しく山中に家を建てるために土地の吉凶を占い、草庵がやっと完成した時に、たまたま東の壁に書きつけた詩

日が高く上り、睡眠は十分足りているが、それでもなお起きるは面倒である。
ささやかな家で布団を重ねてかけているので、寒さの心配はない。
遺愛寺の鐘の音は、寝たまま枕を傾けて高くして聴き、
香炉峰に降り積もる雪は、すだれを持ち上げて眺める。
ここ廬山こそは世間的な名誉や利害から逃れられる地であり、
司馬という職は、やはり老後を送るのにふさわしい官職である。
心が安らぎ、体も安寧でいられる所こそ、本来の帰るべき場所である。
故郷(のように心安らぐ地)はどうして長安だけにあるだろうか、いや長安だけにあるのではない。

この漢詩にある「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」の一節を中宮定子が言っていることを、清少納言は瞬間で気がついて、女官に格子を上げさせ、自分は御簾を高く上げたというわけです。ちなみに「御簾」は「すだれ」のことですが「みす」と読むことは絶対に覚えておいてください。

④笑はせ給ふ

(訳)はこちら(タップで表示)

(中宮様は自分の意図を理解してくれたと)お笑いになる。

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「笑はせ給ふ」と二重尊敬になっている(「せ」が尊敬の助動詞「す」の連用形、「給ふ」が尊敬語の補助動詞)ことから、中宮定子が笑っている理由を考え場面です。

笑っている根拠は、「清少納言が御格子を上げさせて、御簾を高く上げた」ことにあります。中宮が清少納言に掛けた言葉は「香炉峰の雪はどうだろうか」でしたから、その言葉を聞いて白居易の漢詩を思い出し、行動に移した清少納言を見て、中宮定子は自分の意図を理解してくれたと思い、笑ったと考えられます。

《④までの解釈と現代語訳》

では、④までの文章を改めて解釈してみましょう。

 雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子参りて、炭櫃に火おこして、物語などして集まり候ふに、「少納言よ。香炉峰の雪いかならむ。」と仰せらるれば、御格子あげさせて、御簾を高くあげたれば、笑はせ給ふ。

(訳)はこちら(タップで表示)

 (外では)雪がたいそう高く降り積もっているのに、いつもと違って御格子を下ろし申し上げて、(暖をとるために)火鉢に火をおこして、(女房たちが)いろいろな世間話などをして(中宮定子のもとに)集まりお仕えしていると、「少納言よ。香炉峰の雪はどうだろうか。」と(中宮様が)おっしゃるので、(私が女官に)御格子を上げさせて、(自ら中宮の御前の)御簾を高く掲げたところ、(中宮様は自分の意図を理解してくれたと)お笑いになる。

⑤さることは知り、歌などにさへうたへど、思ひこそ寄らざりつれ

(訳)はこちら(タップで表示)

「(他の女房たちも)そういうことは知っているし、和歌などにまで詠むけれども、思いつきもしなかった。

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ここは、周囲の女房たちの言葉です。清少納言が中宮定子の言葉を聞いて、漢詩文を思い出して行動したことを褒めている場面になりますが、まずは女房たちの「言い訳」になります。

「さること」は「そのようなこと」という意味ですが、具体的には「香炉峰の雪」の漢詩を指します。女房たちは「その漢詩は知っていて、和歌などでも(その内容を)歌っているが、気がつかなかった。」などという意味になりそうです。その前提で、文法を理解すると、はっきり内容が分かります。

「さへ」は添加を表す副助詞です。「〜までも」と訳します
「思ひこそ寄らざりつれ」の「ざり」は打消の助動詞「ず」の連用形、「つれ」は完了の助動詞「つ」の已然形ですので、「思いもよらなかった」という意味になります。何が「思いもよらなかった」のかというと、「中宮定子の『香炉峰の雪はどうですか』という言葉が、「格子・簾を上げよ」ということを表している」ということです。そんなことに気が付かなかった自分を女房たちは少し恥ずかしく思い、ここで言い訳しているのですね。

⑥なほ、この宮の人にはさべきなめり

(訳)はこちら(タップで表示)

やはり、この中宮様にお仕えする人(女房)としてはふさわしい方であるようだ。

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⑤の続きです。「なほ」は「やはり」という意味、「この宮の人」とは、「中宮定子にお仕えする人」という意味です。「さべきなめり」はなんと撥音便の無表記が2箇所も使われています。「さんべきなんめり」と読みますが、元の形は「さるべきなるめり」です。「撥音便の無表記」の説明については以下をタップしてご覧ください。

「さべき」は元の形が「さるべき」であると先程述べましたが、「さるべき」は重要表現です。

「さるべき」
 1そうなるはずの(運命)
 2適当な/ふさわしい
 3立派な/相当な

ここでは2の「ふさわしい」という意味が妥当ですね。「なめり」の前に「人」を補うともっと分かりやすくなります。「なめり」は「な(る)」が断定の助動詞「なり」の連体形、「めり」が推定の助動詞「めり」の終止形で、「〜であるようだ」と訳す典型例です。

以上をまとめると、「やはり、この中宮様にお仕えする人(女房)としてはふさわしい方であるようだ。」となります。

おわりに

テスト対策へ

今回は、『枕草子』の「雪のいと高う降りたるを」についてお話しました。今度はテスト対策編もご覧ください。

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『枕草子』は初見では非常に難しいので、「ビギナーズ・クラシックス」などで多くの文章に触れておきたいですね。他にも、『桃尻語訳・枕草子』などもおもしろいです。興味があれば読んでみてください。

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