動詞について(発展編)活用の種類の見分け方

文法 基本

はじめに

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動詞って何?、四段活用って何?、という方は以下のページをご覧ください。

基本編第1回 古文文法 基礎事項の確認
 ・五十音 ・活用形 
 ・係り結びの法則
基本編第2回 動詞について(基本編)①
 ・動詞とは
 ・活用の種類について
  四段活用 上二段活用 下二段活用
基本編第3回 動詞について(基本編)②
 ・活用の種類について
  上一段活用 下一段活用
  カ行変格活用 サ行変格活用 
  ナ行変格活用 ラ行変格活用

動詞の活用の種類の見分け方

活用の種類は、「覚えた方が良い」もの「理屈を知っておいた方が良い」ものとに分かれます。前者が「上一段・下一段・カ変・サ変・ナ変・ラ変」の活用をするもの、後者が「四段・上二段・下二段」の活用をするものです。前者でも「上一段」の活用をするものと、「下一段・カ変・サ変・ナ変・ラ変」の活用をするものとに分けて解説します。

下一段活用・変格活用

まずは下の板書を見てください。正格活用、変格活用のうち、「下一段活用」「カ行変格活用」「サ行変格活用」「ナ行変格活用」「ラ行変格活用」は、数が非常に少ないので、覚える方が早いです。

下一段活用は「蹴る」の一語
カ行変格活用は「来」の一語。ただし、「走り来」などの複合語を含みます。
サ行変格活用は「す」「おはす」の二語。ただし、「おはす」は四段活用や下二段活用になることもあります。また、「す」は主に漢語(音読みの語)について、例えば「具す」「感ず」などの複合語になることも非常に多いです。
ナ行変格活用は「死ぬ」「ぬ(ぬ)」の二語です。「いぬ」であって「ゐぬ」ではないことを知っておくと、大学入試の「なむ」の識別で助かります。今のうちに「いぬ」だと覚えておきましょう。
ラ行変格活用は「あり」「をり」「はべり」「いまそかり」の四語です。後ろの3語はいずれも「あり」を敬語にしたものです。「いまそかり」は「みまそかり」となったり「いますがり」になったりしますが、同じものとして判断してください。

上一段活用

次に上一段活用です。これも数は少ないのですが、全部で十数語あります。すべて覚えるのは現実的ではないし効率も悪いので、まずは基本の形を挙げます。

カ行=「着る」 ナ行=「似る」
マ行=「見る」 ハ行=「る」
ヤ行=「る」 ワ行=「る」「る」

「干る」は「ひる」と読みますが、現代語ではあまり使いません。この際覚えておいた方がよいでしょう。また、ヤ行とワ行が厄介で、「射る」は「いる」、「率る」「居る」は「ゐる」です。この3語は読解上よく出てくるので、読解問題の一部として出題されることもあります。必ず覚えておくべき語です。

下の板書を見てください。上記で示した基本の形以外にも、様々な語が上一段活用として存在します。見たことがある程度にはしておいてください。ちなみに「かえりみる」「かんがみる」「る」は漢字の読み書きでもよく出題されますよ。

上一段活用は「きる・にる・みる・ひる・いる・ゐる」と口に出して覚えてしまえばいいと私は考えていますが、一応、よく使われる語呂合わせがありまして、「ひゐきにみいる」というのがあります。上一段活用の上の文字「ひ・ゐ・き・に・み・い」が下の文字「る」に係っていくようにしているわけです。どのような覚え方でもかまいませんが、まずは基本の7語を覚えてしまいましょう。

四段活用・上二段活用・下二段活用

先ほど説明した6つの活用の種類は、「覚えた方が良い」ものでした。ここからは「理屈を知っておいた方がよい」ものです。四段活用・上二段活用・下二段活用は非常に語数が多いので、一つ一つ覚えるのは無理です。ではどうしたらよいかというと、活用の仕方の特徴を考えるのです。

下の板書を見てください。四段活用と上二段活用と下二段活用を並べています。そこで未然形に注目しますと、活用の仕方が大きく異なることが分かります。四段活用は「ア段」上二段活用は「イ段」下二段活用は「エ段」となっていますね。

つまり、これらを見分けるためには「未然形」にすればよいということが分かるわけです。というわけで、代表選手である「ず」を用いて、それぞれの動詞の下に「ず」をつけるという作業を行うと、四段・上二段・下二段のそれぞれの活用が見分けられるということになります。まとめると以下の板書のようになります。

ここで一つ注意。例えば「読む」を例にして、「ず」をつけると、「読まず」ですが「読めず」でもいいのではと思った人もいるのではないでしょうか。「読めず」の「読め」は現代語では「読める」という動詞です。これは「読む」という動詞に可能の助動詞「れる(古文では「る」)」を加えたもので「読まれる」がつづまった形だと考えられています。この「読める」は「可能動詞」と呼ばれるもので、江戸時代に使われ始めたと言われています。ですので、古文の世界では「可能動詞」はないものとして扱われます。四段活用か下二段活用か迷った場合は、可能動詞かそうでないかを考えるようにしてください。

試験によく出る、難易度の高い動詞

ここまで、動詞について解説をしてきましたが、この先は試験によく出る、間違えやすい動詞について学習していきます。

「飽く」「借る」「足る」

く」「る」「る」と読みます。現代語ではそれぞれ「飽きる」「借りる」「足りる」です。これに「ず」をつけるとどうなりますか。「飽きず」「借りず」「足りず」という人も多いのではないでしょうか。実は、古文では「飽かず」「借らず」「足らず」になります。関西方面に住んでいる人は違和感なくできますか?
というわけで、「飽く」「借る」「足る」はいずれも四段活用になります。

「飽く借る・足る」は四段活用

「恨む」(怨む・うらむ)

これは知らないと無理です。「恨む」は「ず」をつけると、古文では「恨みず」となります。つまり、マ行上二段活用の動詞です。これは覚えてしまいましょう。

「うらむ」(恨む・怨む)は上二段活用

「老ゆ」「悔ゆ」「報ゆ」

ゆ」「ゆ」「むくゆ」と読みます。現代語では「老いる」「悔いる」「報いる」で、「ず」をつけると「老いず」「悔いず」「報いず」となることは、特に悩むこともありません。ただし、終止形が「老ゆ」とあることから、「老いず」の「い」はヤ行であり、ヤ行上二段活用になります。ここで一つ知っておきましょう、「ア行◯◯活用」というのは、後で出てくる「得」だけです。ですので、例えば「悔いて」とあった場合、「悔い」はア行ではなく、ヤ行下二段活用です。

「老ゆ・悔ゆ・報ゆ」はヤ行、、上二段活用

「植う」「飢う」「据う」

う」「う」「う」と読みます。現代語では「植える」「飢える」「据える」です。しかし、先程も説明したように、「ア行〇〇活用」は「得」だけなので、未然形にすると、古文では「植ゑず」「飢ゑず」「据ゑず」となります。つまり、ワ行下二段活用になります

「植う・飢う・据う」はワ行、、下二段活用

「得」「心得」

」はア行の動詞です。これはもう3度めになります。「得」は唯一のア行動詞としてしっておく必要があります。ただ、「得」は接頭語がついて「心得こころう」「所得ところう」「おも」などとなることもあります。現代語でも「心得る」という語は残っていますので、「心得」は別の一単語としてここに書いているわけです。未然形にすると「えず」「こころえず」なので、「得」「心得」はア行下二段活用と理解しておきましょう。

「得」「心得」はア行、、下二段活用

「得」「寝」「経」

最後に、「」「」「」です。これらは現代語では「得る」「寝る」「る」ですが、古文にすると一文字の動詞になります。未然形にすると「えず」「ねず」「へず」となり、いずれも下二段活用です。カ行変格活用の「来」サ行変格活用の「す」とともに、一文字の動詞は読解の時に見つけにくいので気をつけてください。

「得・寝・経」は下二段活用
字の動詞は「来」「す」「得」「寝」「経」

以上をまとめたものが、下の板書になります。

これで、動詞はすべてマスターです。次はいよいよ助動詞ですね。その前に練習問題を少しだけやっておきましょう。

練習問題

ここでは、動詞の活用の種類と活用形が答えられるようになるための練習をします。

[問]青太字イ~ホの動詞の活用の行、活用の種類、活用形は何か。
勤むるさま  
・そねみ(=嫉妬)をおひ、  
見る折々   
おきてはべる。『源氏物語』
忍ぶるも苦し。『栄華物語』

【解答】(イ)マ行下二段活用・連体形
(ロ)ハ行四段活用・連用形
(ハ)マ行上一段活用・連体形
(ニ)カ行上二段活用・連用形
(ホ)バ行上二段活用・連体形

【解説】
まずは、(イ)〜(ホ)です。まず、「覚えるべき動詞」かどうかを見ると、(ハ)がそれに該当します。
「見る」はマ行上二段活用です。それ以外は未然形にして考えましょう(イ)は「勤めず」なのでマ行下二段活用、(ロ)は「負はず」なのでハ行四段活用、(ニ)は「起きず」なのでカ行上二段、難しいのが(ホ)で、「忍ぶ」は「忍ばず」も「忍びず」もあります。傍線部に戻ってみると「忍ぶる」となっていますが、四段活用に「ウる」はありません。よって、これはバ行上二段活用です。

次に活用形を考えていきます。原則は下を見て決める、それでもわからない場合は活用の種類で判断する、その順番で検討していきます。(イ)(ハ)は下に名詞(体言)が来ているので連体形ですね。(ロ)は、「、」が下に来ています。このときは「て」が補えるかを考えてみてください。それが可能なら連用形です。今回は「そねみをおいて」とできるので、連用形です。同じように(ニ)も下に「て」があるので連用形です。(ホ)は「時」という名詞が省略されていると考えるてもよいですし、活用の種類で「忍ぶる」は連体形だと判断することもできます。いずれにしても連体形です。

次に、ヘ〜ヲまでの問題も同じように解いていきます。

[問]青太字ヘ~ヲの動詞の活用の行、活用の種類、活用形は何か。
・出だして求むれど、「たまへ(=お与えください)、その数珠しばし。……。」とかるとて大夫殿のみさせ給へるを、『枕草子』
・ことにふれて、粟田殿にはさせ給ひて、夜の御殿(=天皇の寝室)にいらせ給ひて泣きまどひけむこそ、『大鏡』

【解答】(ヘ)マ行下二段活用・已然形
(ト)ラ行四段活用・終止形 
(チ)ワ行上一段活用・連用形
(リ)ラ行下二段活用・連用形
(ヌ)サ行変格活用・未然形
(ル)ラ行四段活用・未然形 
(ヲ)ハ行四段活用・連用形

【解説】「覚えるべき動詞」は(ト)(チ)(ヌ)です。(ト)は、「借る」です。カ行四段活用の動詞でしたね。(チ)は「ゐる」です。ワ行上一段活用の動詞です。(ヌ)はサ行変格活用の動詞「す」ですね。このように、「覚えるべき動詞」は覚えておかないと、ほぼ解けなくなります。残りの(ヘ)(リ)は未然形にしてみましょう。(ヘ)は「求めず」なので、マ行下二段活用、(リ)は「ふれず」なので、ラ行下二段活用です。

次に活用形です。一つずつ解答していきます。(ヘ)は「ど」の上にあるので已然形、(ト)は「と」の上なので終止形だと考えられますが、係り結びの法則がないかを確認してみてください。ありませんね。よって、終止形です。(チ)は「見る」(動詞・用言)の上なので連用形、(リ)は「て」の上なので連用形、(ヌ)はサ変動詞なので「せ」は未然形とするか、使役の助動詞「さす」の上なので未然形と考えるか、どちらでもかまいません。

おわりに

今回は、今まで習ったきた活用形や動詞の知識を文章の中で説明できるようになるための学習でした。
活用の種類と活用形を答える問題は、何度も練習が必要です。読解の「復習編」でもたくさん取り上げているので、ぜひ解答してみてください。練習問題を下に挙げておきます。

次回は形容詞と形容動詞です。これで基礎編は最後になります。では、またお会いしましょう。

今回の内容を動画で確認したい人は以下をどうぞ。

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