「筒井筒」『伊勢物語』読解のコツ&現代語訳

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 このページでは、学生時代に国語が苦手だった筆者が、この順番で学べば文章の内容が分かるようになり、一気に得意科目にできたという経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「これなら古文が理解できる!」という学ぶ手順を具体的に紹介していきます。読んでいくだけで、文章の内容が分かるようになります。

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目次

はじめに

 今回は『伊勢物語』第二十三段です。多くの教科書が「筒井筒」という題名で載せています。「伊勢物語」については第六段「芥川」の「はじめに」で説明していますので、詳細はそちらをご覧ください。

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「筒井筒」読解のコツ&現代語訳

 古文を読解する5つのコツをお話しましょう。以下の順に確認していくと以前よりも飛躍的に古文が読めるようになるはずです。

STEP
本文を読む

何度も本文を読んでみて(できれば声に出して)、自分なりに文章の内容を想像してみます。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」「どのようなことを言っているか」「どのような行動をしているか」を考えていきます。

STEP
登場人物を確認する

本文にどのような人物が出てきているか、確認します。紙で文章を読むときは、鉛筆などで▢をつけるとよりよいでしょう。

STEP
内容を大まかに把握し、説明する

簡単でもよいので、誰かに「こんなお話」だと説明できる状態にします。ここでは、合っているかどうかは関係ありません。今の段階で、こんな話じゃないかなと考えられることが大切なのです。考えられたら、実際にこの項目をみてください。自分との違いを確認してみましょう。

STEP
理解しにくい箇所の解説を見る

古文を読んでいると、どうしても自力では分からない所がでてきます。ちなみに、教科書などでは注釈がありますが、注釈があるところは注釈で理解して構いません。それ以外のところで、多くの人が詰まるところがありますが、丁寧に解説しているので見てみてください。

STEP
改めて本文を解釈する

step4とstep5は並行して行います。きっと、随分と読めるようになっているはずです。

本文を読む

 何度も本文を読んでみて、自分なりに文章の内容を想像してみましょう。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」、「どのようなことを言っているか」、「どのような行動をしているか」を考えていきます。

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 (むかし)田舎(ゐなか)わたらひしける(ひと)()ども、()のもとに()でて(あそ)びけるを、大人(おとな)になりにければ、(をとこ)(をんな)も、()ぢかはしてありけれど、(をとこ)はこの(をんな)をこそ()めと(おも)ふ。(をんな)はこの(をとこ)をと(おも)ひつつ、(おや)のあはすれども、()かでなむありける。さて、この(となり)(をとこ)のもとより、かくなむ。
  (つつ)()(づつ)()(づつ)にかけしまろがたけ()ぎにけらしな(いも)()ざるまに
(をんな)(かへ)し、
  くらべこし()()(がみ)(かた)()ぎぬ(きみ)ならずしてたれか()ぐべき
など()()ひて、つひに()()のごとくあひにけり。(『伊勢物語』より)

 文章を読むことができたら、下の「登場人物の確認」「内容を簡単に理解」を読んで、自分の理解と合っていたかを確認します。

本文は「つひに本意のごとくあひにけり。」の後も続きます。続きは会員限定記事になります。続きの記事の閲覧を希望される人は下記の「LINE友だち追加」または、会員登録をしてください。

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登場人物の確認

  • 男 
  • 女 
  • 女の親 

お話を簡単に理解

  • 昔、田舎暮らしをしていた人の子どもたちが井戸の近くで遊んでいた
  • その中の男の子と女の子が成人した後に、お互いに結婚したいと思っている
  • 二人は大人になって、遊ばなくなったが思いは変わらない
  • 女の親は、別の男と結婚させようとするが、女は言うことを聞かない
  • 男のもとから女のもとへ和歌が送られる
  • 女も男へ返歌する
  • 二人は結ばれる

理解しにくい箇所の解説を見る

 本文を読んで自分で内容を考えていったときに、おそらく以下の箇所が理解しにくいと感じたでしょう。その部分を詳しく説明します。解説を読んで、理解ができたら改めて本文を解釈してみてください。

  • 親のあはすれども、聞かでなむありける
  • 筒井筒井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに
  • くらべこし振り分け髪も肩過ぎぬ君ならずしてたれか上ぐべき
  • 本意のごとくあひにけり

《①までの本文解釈と現代語訳》

①までの本文を解釈してみましょう。

昔、田舎わたらひしける人の子ども、井のもとに出でて遊びけるを、大人になりにければ、男も女も、恥ぢかはしてありけれど、男はこの女をこそ得めと思ふ。女はこの男をと思ひつつ、

(訳)はこちら(タップで表示)

昔、田舎で生計を立てて暮らしていた人の子供たちが、井戸のそばに出て遊んでいたが、大人になってしまったので、男も女も互いに恥ずかしく思うようになっていたけれども、男はぜひこの女を妻にしようと思う。女は、この男を(夫にしたい)と思い続けて、

昔、田舎暮らしをしていた人の子どもたちが、井戸の近くで遊んでいました。大人になったので遊んでいた男女は会わなくなったけれども、それぞれお互いに結婚したいと思っていたのです。

①親のあはすれども、聞かでなむありける

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(訳)はこちら(タップで表示)

(女の)親が(別の男と)結婚させようとするけれども、(女は)聞かないでいた

「親の」の「の」は主格を表す格助詞で、「〜が」と訳せばよいです。文の主語が「女は」とあるので、この親は「女の親」だとわかります。
「あはす」は、「あふ」に使役の助動詞「す」がついたものですが、通常一語として考えます。「あふ」は「出会う」という意味ももちろんありますが、古文で大事になるのは「契る/結婚する」という意味です。ですので、ここでは「結婚させる」という意味にとるとよいでしょう。「女の親」が結婚させるのは、「別の男」となります。

「あふ」(動・ハ四)
 1出会う 2契る/結婚する

「聞かで」の「で」は、打消の接続助詞で、「〜ないで」と訳します。また、「なむありける」の「なむ」は係り結びを作る助詞(係助詞)で、文末を連体形にします。そのため、過去の助動詞「けり」は連体形になっているわけです。よって、「聞かでなむありける」は「聞かないでいた」と解釈できるわけです。

そんなときに、隣の家の男から一つの和歌が届きました。ちなみに「かくなむ」は「かく」が「このように」を表す指示副詞、「なむ」は係り結びをつくる助詞(係助詞)ですが、後ろが省略されています。このようなときは、「ありける」を入れるとよいと知っておいてください。つまり「このような(歌が)あった」となります。

《②までの本文解釈と現代語訳》

では、②までの本文を改めて解釈してみましょう。

親のあはすれども、聞かでなむありける。さて、この隣の男のもとより、かくなむ。

(訳)はこちら(タップで表示)

女の)親が(別の男と)結婚させようとするけれども、(女は)聞かないでいた。そうするうちに、この隣の男のところから、このように(歌を贈ってきた)。

②《和歌》筒井筒井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに

歌訳はこちら

円い枠をつけた井戸の囲いで高さを比べあって遊んだ私の背丈も、きっと井筒を越すほどに大きく成長しているらしいよ。あなたを見ないうちに。

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「筒井筒」は、教科書によっては「筒井つの」になっているものもありますが、この場合の「つ」は実はよくわかっていません。「筒井」は教科書に注があると思いますが、円い枠をつけた井戸のことです。「井筒」は井戸の囲いのことですが、これも注があるでしょう。ここまでで、「円い枠をつけた井戸の囲い」となります。

次に、この場面の「かく(掛く)」は「比べる」という意味になりますが、これもかなり難易度が高いので、多くの教科書には注があります。「かけし」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形です。何を比べたかというと、後ろにある「まろがたけ」がヒントになります。「まろ」は一人称の代名詞(=私)で、くだけた場面で使われる言葉です。この「が」は連体修飾恪の格助詞で、「〜の」と訳すものです。また、「たけ」は漢字で「丈」と表し、「背丈(=身長)」のことを表します。つまり、「小さな男女が井戸の囲いで背丈を比べあった」ということです。

「過ぎにけらしな」に移ります。「過ぎにけらし」は「過ぎにけるらし」がつづまった形です。ここの「に」「ける」「らし」がそれぞれ助動詞であることに気がつきたいですね。「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「ける」は過去の助動詞「けり」の連体形、「らし」は推定の助動詞「らし」の終止形です。また、「な」は詠嘆を表す終助詞で、「〜(こと)よ」と理解しておけばよいでしょう。あとは、何が何に「過ぎ」てしまったのかということが分かればよいのですが、これは「まろがたけ」が「井筒」に「過ぎ」たということで、「私の身長は井筒を越えるほどに成長した(らしいよ)」と訴えている場面であると分かります。

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ここでは、もうひとつ注目すべきところがあって、「過ぎにけらしな」は言葉がここで一度完結しています。つまり、四句切れの和歌であるということになります。

最後に、「妹見ざるまに」です。「妹」は重要古語です。「いも」と読みます通常、男性が女性を親しんで呼ぶ言葉ですが、逆の場合もあります。ここは、「男」の和歌なので、「女」を呼ぶ言葉になります。

いも恋人・姉妹
  
※通常、男性から女性を親しんで呼ぶ

「見ざる」の「ざる」は打消の助動詞「ず」の連体形、「ま」は「間」です。これらをまとめると、「あなたを見ない間に」となります。これですべて説明しましたが、まとめると以下の訳になります。

→(歌訳)円い枠をつけた井戸の囲いで高さを比べあって遊んだ私の背丈も、きっと井筒を越すほどに大きく成長しているらしいよ。あなたを見ないうちに。

この和歌は恋の歌で、「私は成長して大人になりましたよ。だからあなたと結婚したい」ということを「男」が「女」に伝えるものです。この和歌に対して、「女」はどのように返歌したのでしょうか。

③《和歌》くらべこし振り分け髪も肩過ぎぬ君ならずしてたれかあぐべき

歌訳はこちら(タップで表示)

あなたとどちらが長いかを比べあった私の振り分け髪も、肩を過ぎるほど伸びてしまいました。あなたのためではなくて、誰のために髪を結い上げましょうか。

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「くらべこし」の「こし」が難しいですね。「こ」はカ行変格活用動詞「」の未然形、「し」は過去の助動詞「き」の連体形です。つまり、ここでは「くらべてきた」という意味になりそうです。

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「振分け髪」は左右に分けて方に垂らしたままの子どもの髪型を指します。その髪が「肩(を)過ぎぬ」と言っているわけですが。「過ぎぬ」の意味が分かりますか。これは2通り考えられます。

「ぬ」の識別

1. 打消の助動詞「ず」の連体形(髪も肩を過ぎないあなた)
2. 完了の助動詞「ぬ」の終止形(髪も肩を過ぎた。)

つまり、「ぬ」の識別問題です。

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どちらがここでの解釈にふさわしいでしょうか。じつは文法で考えることはできません。ここでは、解釈で考える必要があります。歌は②の和歌の返歌だということを考えれば、内容としては「私も大人になった」という内容になるはずです。ということは「私の髪も肩を過ぎるほど伸びた」ということを言いたいはずです。よって、「過ぎぬ」の「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」の終止形だということがわかります。また、終止形なので意味もここで切れています。三句切れの和歌だということになりますね。ここまでを解釈すると、「あなた(長さを)比べあった私の振り分け髪も、肩を過ぎるほど伸びた。」となります

後半の2句が②の和歌の答えになる箇所です。「君ならずして」の「なり」は断定の助動詞「なり」の未然形、「ず」は打消の助動詞「ず」の連用形です。「して」につながって「ずして」の形になるのは現代語でも見られます。「〜なくて」と訳すことが多いですね。「たれ」は「誰」です。古文や漢文では「たれ」と読みます。「誰か」の「か」は反語で取ると意味が通じやすいでしょう。「上ぐべき」の「上ぐ」は「上げる」ですが、「髪を結い上げ(て成人の女性にな)る」という意味で使われています「べし」は推量の助動詞としてとっておくと訳しやすいですね。以上をまとめると、「あなたのためではなくて、誰のために髪を結い上げましょうか。(いいえ、あなたのために髪を結い上げるのです。)」となります。

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もう一度和歌の訳を載せておきます。

(歌訳)円い枠をつけた井戸の囲いで高さを比べあって遊んだ私の背丈も、きっと井筒を越すほどに大きく成長しているらしいよ。あなたを見ないうちに。

女性の返事は「私はあなた以外とは結婚しない」ということになります。相思相愛の仲だったということが分かりますね。両者で歌をやりとした結果が次の文です。

④本意のごとくあひにけり

(訳)はこちら(タップで表示)

かねてからの望みどおり、二人は結婚した

本意ほい」は「ほい」と振り仮名がされているので、「ほい」と読んでよいですが、撥音便の無表記と考えて「ほんい」読むと考えることがもできます。また、形容動詞「本意なり」で出てくることもあります。意味は以下のとおりです。

本意(ほい)」=本来の意志/かねてからの望み

比況の助動詞「ごとし」

「本意のごとく」の「ごとく」は比況の助動詞「ごとし」の連用形です。助動詞「ごとし」は、ここでまとめておきます。

助動詞「ごとし」

接続=連体形・体言・助詞(の・が)
活用=形容詞型(ク活用)
意味=1比況(〜ようだ)
   2例示(〜ようだ)

「本意のごとく」は「かねてからの望みのように」つまり、「かねてからの望みどおり」と解釈すればいいわけです。

「あひにけり」ですが、「あひ」は「あふ」の連用形です。これは①「親のあはすれども」で説明した通り「結婚する」でいいでしょう。「にけり」の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「けり」は過去の助動詞「けり」の終止形です。特に「〜にけり」はよく出てくるので、この「に」が完了の助動詞「ぬ」であることを確実に理解しておきましょう。定期テストでもよく出題されます。ここはもちろん、「二人は結婚した」でいいわけです。

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《②以降の本文解釈と現代語訳》

では、②から後の本文を改めて解釈してみましょう。

  筒井筒井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな(いも)見ざるまに
女、返し、
  くらべこし振り分け髪も肩過ぎぬ君ならずしてたれか上ぐべき
など言ひ言ひて、つひに(ほ)(い)のごとくあひにけり。

(訳)はこちら(タップで表示)

 (和歌)円い枠をつけた井戸の囲いで高さを比べあって遊んだ私の背丈も、きっと井筒を越すほどに大きく成長しているらしいよ。あなたを見ないうちに。
女が返事の歌を、
 (和歌)あなたとどちらが長いかを比べあった私の振り分け髪も、肩を過ぎるほど伸びてしまいました。あなたのためではなくて、誰のために髪を結い上げましょうか。
などと歌のやりとりを続けて、ついにかねてからの望みどおり、二人は結婚した

おわりに(テスト対策へ)

テスト対策へ

今回は、『平家物語』の「木曽殿の最後」の前半部についてお話しました。一通り学習を終えたら、今度はテスト対策編もご覧ください。

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お話の続き(第2回)について

本文はこの後、男がわけあって別の女のもとへ通うことになります。この続きは第2回にお話しましょう。第2回は会員限定記事になります。続きの記事の閲覧を希望される人は下記の「LINE友だち追加」をしてください。

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