このページでは、学生時代に国語が苦手だった筆者が、この順番で学べば古典文法が分かり、一気に得意科目にできた経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「理解しやすい学ぶ手順」を紹介していきます。
- 「使役」という言葉の意味が分かる!
- 助動詞「す」「さす」「しむ」の接続の違いが分かる!
- 助動詞「す」「さす」「しむ」の活用の仕方の共通点が分かる!
- 助動詞「す」「さす」「しむ」の2つの意味の見分ける方法が分かる!
- 助動詞「す」「さす」「しむ」に関する基本的な問題が解けるようになる!
はじめに

「す」「さす」「しむ」って「〜させる」という意味の助動詞ですよね。「使役」という意味らしいのですが、どう読むのですか?



「しえき(使役)」って言うよ。読みが難しいね。今回はこの「使役の助動詞」について、古文独特の使われ方も含めて説明していくよ!
助動詞「す」「さす」「しむ」の学習ポイント|接続・活用・意味
今回学習することの要点を示します。




助動詞「す」「さす」「しむ」について
これから学んでいく助動詞「す」「さす」「しむ」は、現代語でいうと「せる」「させる」です。「誰かを使って(指示、命令して)何かをさせる」という意味を持ちます。これを「使役」といいます。今回はその「使役」の意味を持つ助動詞について説明していきます。
接続、活用表、意味
まず、例文を使って「す」という助動詞を理解していきます。
(例文)(かぐや姫を)妻の嫗に預けて養はす。
現代語に改めると、「かぐや姫を妻のおばあさんに預けて、姫を養わせる」となります。この「〜(さ)せる」というのを、文法的には「使役」といいます。
「す」についている動詞を確認すると、「養は」とハ行四段活用の未然形になっていますので、接続は未然形であることが分かります。
これらをもとに、助動詞「す」「さす」「しむ」を整理していきます。
先程の例文からも分かった通り、「す」(「さす」「しむ」)の接続は未然形です。では、「す」「さす」「しむ」の使い分けを考えます。まず、「す」と「さす」の違いですが、これは助動詞「る」「らる」と考え方は同じです。直前が「ア段」であるものは「す」、それ以外は「さす」、文法的に説明すると、「す」は「四段活用・ナ行変格活用・ラ行変格活用」の未然形に接続し、「さす」はそれ以外の未然形に接続します。また、「しむ」はそのような違いはなく、すべての動詞の未然形に接続しますが、漢文訓読調の文章(漢文の書き下し文のような文章)でしか表れませんので、読解ではあまり見ることがありません。



「しむ」は、漢文の教科書によく出てくるよ。「AをしてB(せ)しむ」って何度も見ることになるからね。


「す」「さす」「しむ」の接続
「す」:「未然形がア段(四段・ナ変・ラ変)」の未然形に接続する
「さす」:「未然形がイ段・エ段・オ段」の未然形に接続する
「しむ」:すべての未然形に接続する
次に、活用です。これも助動詞「る」「らる」と同じで、動詞の下二段活用と同じ活用をする下二段型の助動詞です。
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「す」「さす」「しむ」の活用
=下二段型
「す」「さす」「しむ」は使役の助動詞ですが、直後に「給ふ」などの尊敬の補助動詞が来ると、尊敬の意味を持つことが多くなります。高貴な人が自分で行動したり、身分の低い者と話したりすることはほとんど無く、常にお付の者を通して行いますが、それを高貴な人自身の行動として表現するからです。例えば、「(中宮様が)絵など取り出でて見せさせ給ふ」のように、「尊敬の助動詞+尊敬の補助動詞(〜(さ)せ給ふ)」の形を最高敬語と言います。
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「す」「さす」の文法的意味
「使役」(ーー(さ)せる)
「尊敬」(おーーになる
ーーなさる)
「使役」・「尊敬」の使い分けの目安


「す」「さす」「しむ」は使役の助動詞です。ですので、ほとんとが「使役」になるのですが、先程も述べました通り、直後に「給ふ」や「おはす」などの尊敬の補助動詞があると、「尊敬」になることが多いです。ですので、「使役」か「尊敬」を見分ける際は、下に「給ふ」や「おはす」などがあるかを考えればよいわけです。あった場合はほぼ尊敬です。ただし、これは必ず「尊敬」というわけではなく、内容的に「使役」で考えざるを得ない場合もありますので、注意しましょう。
「せ」+給ふ、 「させ」+給ふ、 「しめ」+給ふは、ほぼ「尊敬」
このように理解しておいて、例外のときはその時に考えるというスタンスでいいと思います。



高貴な人が直接行動せず、結果的に誰かにさせているので、「す」「さす」「しむ」を使うんだね。でも、明らかに誰かにさせていることが分かる場合は「使役」になります。
テスト対策(練習問題)
助動詞「す」「さす」「しむ」について理解ができたか、実際の問題を通して確認していきましょう。
一問一答3選(超基礎編)
1. 「す」「さす」「しむ」の接続は?
2. 「す」「さす」「しむ」の文法的意味を2つ答えなさい
3. 「人に書かしむ」の「しむ」の文法的意味は?
解答(タップで表示)
1.未然形 2.使役・尊敬 3.使役
接続・活用の問題


【問一】 次の括弧に、下に示した助動詞を、適当に活用させて入れなさい。
(例)降り( させ )て…←〔さす〕
(1)伝へ( )ど…←〔さす〕
(2)食は( )事なし。 ←〔す〕
(3)受け( )むと ←〔さす〕
(4)笑は( )給ふ。←〔す〕
(5)習は( )む。←〔しむ〕
(6)我に得( )!←〔しむ〕
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【解答】問一(1)さすれ(2)する(3)させ(4)せ(5)しめ(6)しめよ
【解説】
今回の問題は「す」「さす」「しむ」のどれを入れるかが指定されているので、活用形が分かれば解答することができます。活用形は直後の語を見て判断します。
(1)伝へ( )ど・・・。←〔さす〕
直後が「ど」なので已然形。「さす」の已然形は「さすれ」
(2)食は( )事なし。 ←〔す〕
直後が「事」(体言)なので連体形。「す」の連体形は「する」
(3)受け( )むと・・・ ←〔さす〕
直後が「む」なので未然形。「さす」の未然形は「させ」
(4)笑は( )給ふ。←〔す〕
直後が「給ふ」(用言)なので連用形。「す」の連用形は「せ」
(5)習は( )む。←〔しむ〕
直後が「む」なので未然形。「しむ」の未然形は「しめ」
(6)我に得( )!←〔しむ〕
直後が「!」なので命令形。「しむ」の命令形は「しめよ」



ポイントは( )の直後を見ることだったね。
接続・活用表・意味の問題


【問二】次の文中の括弧の中に助動詞「す」または「さす」を活用させて入れ、さらにその意味を書きなさい。
(1)月の都の人まうで来ば、捕らへ( )む。
(2)いと、こまやかに、ありさまを問は( )給ふ。
(3)大井の土民におほせて、水車を造ら( )られけり。
解答・解説はこちら(タップで表示)
【解答】問二(1)させ・使役(2)せ・尊敬(3)せ・使役
【解説】
今回は、「す」または「さす」のどちらが入るかも考える必要があります。( )の直前を見て、ア段ならば「す」それ以外なら「さす」と判断すればよいでしょう。
(1)月の都の人まうで来ば、捕らへ( )む。
直前は「へ(エ段)」ですので「さす」です。直後が「む」なので未然形になります。「さす」の未然形は「させ」です。意味は原則通り「使役」と考えて訳してみると、「捕まえさせよう」と意味も通じます。
(2)いと、こまやかに、ありさまを問は( )給ふ。
直前は「は(ア段)」ですので「す」です。直後が「給ふ」なので連用形になります。「す」の連用形は「せ」です。直後に「給ふ」があるので、まずは「尊敬」と考えます。訳してみると、「ありさまを尋ねなさる」で通じるので、「せ」は「尊敬」でよいでしょう。
(3)大井の土民におほせて、水車を造ら( )られけり。
直前は「ら(ア段)」ですので「す」です。直後が「られ(らる)」なので未然形になります。「す」の未然形は「せ」です。文法的意味は難しいです。まず「られ」の意味を確認する必要があるからです。前にある「大井の土民に仰せて」は、「大井の土地の者にご命令になって」という意味なので、この文の主語は「貴人」であることが分かります。そうすると、「造らせられけり」の「られ」は「尊敬」の可能性が高くなります。「せ」の直後に「尊敬」があるので、「せ」も尊敬である可能性を探る必要があります。しかし、内容から考えて「水車を造らせ(なさっ)た」と考える方が自然ですので、結果としては、この「せ」は使役となります。



( )の直前を見て、「す」か「さす」かを判断しよう!
おわりに
以上で、「す」「さす」「しむ」は終わりです。この助動詞は原則「使役」で、後に尊敬語を伴う時に「尊敬」かどうかを検討するというものなので、「る」「らる」よりは分かりやすいと思います。次回からは、過去・完了の助動詞です。現代語ではすべて「〜た」になってしまったものが、古文では6つもあります。一つずつ整理していきたいと思います。
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