五十音・活用形・係り結びの法則

基本事項と用言
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はじめに

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生徒
生徒

先生、これから古文を勉強しようと思うんだけど、何から始めていけばいいんですか?

先生
先生

まず、古文を学ぶ上で現代語と異なる点を知っていこうか。

五十音と活用形、係り結びの法則について勉強していくよ。

はじめに、今回学習することの要点を示します。詳しく知りたい方は項目ごとに確認してください。

【五十音(古文における)】

【活用形】

【係り結びの法則】

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五十音(古文における)

まずは、五十音図を見てください。小学校1、2年生の教室によく貼ってあるものです。

ここで、「段」と「行」についての概念を理解してください。
簡単に言うと、ア段とは、「あかさたなはまやらわ」と五十音図を横に読んだものア行とは「あいうえお」と縦に読んだものになります。この「段」と「行」は「動詞」の学習になったら出てきます。めったに聞かれませんが、例えば、「サ行でウ段の文字は何か」と問われたら「す」と答えたら良いわけです。

次に、古文の五十音図について見ていきます。基本的には変わりませんが、「ヤ行」と「ワ行」が現代語と異なります。また、先程はカタカナを載せていませんでしたが、カタカナも合わせて載せます。

「ゐ」と「ゑ」は見たことあるけど、なんて読むんだろう?

見ての通り、ヤ行は「やいゆえよ」ワ行は「わゐうゑを」ですね。「ゐ」は「ウィ」、「ゑ」は「ウェ」と読む人もいますが、現代では「ゐ」は「イ」、「ゑ」は「エ」と読むのが一般的です。つまり、ア行もヤ行もワ行も声に出すとイ段はすべて「イ」になり、エ段はすべて「エ」になります。ですので、発声では違いがわかりにくいのですが、文字は違いますので、そのことは理解しておきましょう。ア行とヤ行の「い」と「え」は文字も読みも同じですが、動詞を学習するときに、これは「ア行」、これは「ヤ行」というのが多少ですが分かるようになります。あと、ザ行とダ行にも色がついていますが、現代語で「ぢ」「づ」はあまり使いませんが、古文ではよく出てきますので、「じ」「ず」と間違えないようにという意味でそのようにしています。実際に動詞の問題などでよく間違えますよ。

また、カタカナの「ヰ」と「ヱ」は、古文の学習ではあまり出てきませんが、漢文の学習でよく見ることになると思います。書くことはあまりありませんが、かなり昔、大学入試で「ワ行をカタカナで書け」という問題が出たことがあります。

活用形の考え方

中学生の時に、現代語の文法で活用形について学習したことと思います。活用形とは、活用する言葉(動詞、形容詞、形容詞、助動詞)がどのように活用するか、その活用した形を表しています。
このときには次のように習ったはずです。

(現代語の活用形)
未然形  連用形  終止形  連体形  仮定形  命令形

それぞれ、未然形は「ナイ」連用形は「マス」終止形は「。」連体形は「トキ」仮定形は「ば」命令形は「!」を下につけたらいいよ、などと教えられたと思います。そうです。活用形は「下につく語」によって決まるものなのです。それはもちろん古文においても同じです。ただ、一つ違うところがあります。

古文では、活用形は以下のようになります。

(古文の活用形)
未然形  連用形  終止形  連体形  已然形  命令形

已然形って「いぜんけい」って読むんだって!仮定形と何が違うんだろう?

現代語では、「仮定形」だったのが、古文では「已然形」になっています。名前が違うということは、当然意味が違うということなので、それを理解するために、未然形から命令形まで、それぞれの言葉の意味を理解していきましょう。

「未然形」の「未然」は「いましからず」と読み、「まだそうなっていない」という意味を表します。「連用形」の「用」は「用言」のことで、つまり「動詞」「形容詞」「形容動詞」を表します。よって「連用」とは「用言に連なる(=続く)」という意味を表しています。「終止形」の「終止」はそのままで、「文を終止する」という意味です。「連体形」の「体」とは「体言」のことで、「連体」とは「体言に連なる」という意味です。「已然形」の「已然」は「すでに然り」と読み、「もうそうなっている」という意味を表します。「仮定」とは全く意味が異なりますね。「命令形」は「命令する形」でよいでしょう。

そのように意味を考えていくと、どうやらその言葉に続く言葉を考えていく必要がありそうです。

まずは、それぞれの活用形になる「下の語」をまず表にあるだけ覚えてください。「未然形」は「ず(ざり)」「む」、「連用形」は「用言」と「て」「けり」「たり」、「終止形」は「。」「と」「べし」、連体形は「体言」と「に」「を」、已然形は「ど」「ども」「ば」、命令形は「!」(実際に「!」はありません)です。これだけでも、読んでいくとかなり多くの活用形が分かるはずです。上の表の例を見てみると、どんな時に「何形」になるか分かってくると思います。再度言いますが、「活用形は下につく語によって決まる」ものです。

「ず」や「む」はまだ起こっていないことを表す語だから「未然形」という名前になったんだよ。「ど」や「ば」はすでに確定したことについて表す語だから「已然形」というんだね。

係り結びの法則

先程の活用形でお話しましたが、文末は終止形(命令形)になるということは分かりましたね。ただし、現代語では見られませんが、古文では文末の活用形が変わってしまうことがあります。例えば以下の形です。

(例)もと光る竹なむ一筋ありける

「ける」は、「けり」という言葉の連体形です。連体形になったのは、文の途中に「なむ」という語があり、その「なむ」を受けて文末が変化したと考えます。文中の「なむ」が文末を終止形から連体形に変えてしまうと理解してもらったらよいでしょう。「なむ」が文末の語(終止形)に「係って」いって、それを連体形で「結ぶ」ので、「係り結びの法則」というのです。
そのような、「係り結びの法則」が起こる言葉は全部で五語あります。まずはそれを覚えましょう。

(係り結びの法則が発生する語)
「ぞ」なむ」「や」「か」「こそ」

これらの五語は文末を変えてしまいますが、それらは2種類に分かれます。「ぞ」「なむ」「や」「か」は文末を連体形にし、「こそ」は文末を已然形にします。

(係り結びの法則)

(係り)「ぞ」「なむ」「や」「か」 
(結び)連体形

(係り)「こそ」
(結び)已然形

ここは知識で理解するよりも、実際に例文に触れた方が分かりやすいと思います。次の板書の左端にある例文を見てください。

・声聞くとき秋は悲しき 
・もと光る竹なむ一筋ありける
・春昔の春なら
・いかようにある
・「この女をこそ」と思ふ。

「悲し」が「悲しき」(連体形)、「けり」が「ける」(連体形)、「ず」が「ぬ」(連体形)、「あり」が「ある」(連体形)、「む」が「め」(已然形)に変化していることがわかればOKです。

文末が終止形じゃないときは、まずは係り結びの法則を考えたらいいんだね。

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練習問題

これまでの知識を問題で確認してみましょう。

 仁和寺に、ある法師、年寄るまで石清水を拝まざりければ、 心うく覚えて、ある時思ひ立ちて、ただひとり徒歩よりまうで【ア】。極楽寺・高良などを拝みて、かばかりと心得て帰りけり
 さて、かたへの人にあひて、「年ごろ思ひつること 果し侍り。聞きしにも過ぎて、尊くこそおはし【イ】。そも、 参りたる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、神へ参るこそ本意なれと思ひて、山まではず」とぞ言ひ【ウ】。 『徒然草』

問一 以下の青太字aの活用形を答えなさい。
問二 以下の【ア】【ウ】に過去の助動詞「けり」を適当に活用させて入れなさい。

活用形は直後の語を確認するんだったね。

文末は係り結びの法則に注意しないと!

【解答】問一a連体形 b未然形 c連用形
 d已然形 e連用形 f連用形 g連用形 
 h連用形 i連体形 j連用形 k終止形 
 l連用形 m連用形 n已然形 o連用形 
 p未然形
 問二 ア けり イけれ ウける

問一 以下の傍線部(a)〜(p)の活用形を答えなさい。

【解説】活用は下につく語によって決まります。下につく語を見ていきます。aは「法師」と体言なので連体形、bは助動詞「ず」(ざり)なので未然形、cは助動詞「けり」(ける)なので連用形、dは「ば」でエ段になっている(け)ので已然形、eは「覚ゆ」(覚え)と動詞なので連用形、fは助詞の「て」なので連用形、gも助詞の「て」なので連用形、hは助動詞「けり」なので連用形、iは「こと」と体言なので連体形、jは「侍り」と動詞なので連用形、kは句点(。)なので終止形、lは助詞の「て」なので連用形、mは助動詞「たり」(たる)なので連用形、nは助詞の「ど」なので已然形、oは助詞の「て」なので連用形、pは助動詞「ず」なので未然形です。

【解説】問二 アはそのまま終止形、イは「こそ」の結びで已然形、、ウは「ぞ」の結びで連体形です。

おわりに

今回は古文文法を学ぶうえで最も基礎となる事項である、五十音・活用形・係り結びの法則について学習していきました。これらの内容は古文を読んで行くと当たり前に使われている知識ですが、ここが曖昧だと次の動詞の学習がわからなくなります。今回でしっかりマスターしておいてほしいと思います。では、次回お会いしましょう。


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