「ゆく河の流れ」『方丈記』テスト対策

ゆく河の流れ 日記・随筆
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はじめに

自己紹介はこちら

生徒
生徒

先生、「行く河の流れ」のポイントを教えて下さい。

先生
先生

「行く河の流れ」はテストで問題としては出しにくいんだけど、やはり「対句」が多いよね。空所補充の問題が作りやすいんだよ。だから、対句構造をしっかり理解ながら本文を読みたいね。

本文の確認

テスト直前でもすべきことの基本は、「本文を読むこと」です。 これまで学習した内容をしっかり思い出しながら読みましょう。

 ゆくかはながれはえずして、しかももとのみづにあらず。よどみにかぶうたかたは、かつえ、かつむすびて、ひさしくとどまりたるためしなし。なかにあるひとすみかと、またかくのごとし。
 たましきのみやこのうちにむねならべ、いらかあらそへる、たかきいやしきひとまひは、きせぬものなれど、これをまことかとたづぬれば、むかしありしいへはまれなり。あるいはけて今年ことしつくれり。あるいはおほいへほろびていへとなる。ひともこれにおなじ。ところはらずひとおほかれど、いにしへひとは、さんじふにんがうちに、わづかに一人ひとり二人ふたりなり。あしたに、ゆふべにまるるならひ、ただみづあわにぞたりける。らず、まれぬるひと、いづかたよりきたりて、いづかたへかる。またらず、かり宿やどり、がためにかこころなやまし、なにによりてかよろこばしむる。そのあるじすみかじやうあらそふさま、いはばあさがほつゆことならず。あるいはつゆちてはなのこれり。のこるといへどもあされぬ。あるいははなしぼみてつゆなほえず。えずといへどもゆふべをつことなし。

重要単語は特にないので、なんとか解釈できると思います。過去・完了の助動詞が多いので、難しく感じる人はそちらを先に復習するもいいですね。

読みで問われやすい語

「栖」「甍」「去年」「朝」の4つです。「すみか」「いらか」「こぞ」「あした」ですね。「こぞ」は他の文章でもよく問われます。「栖」と「甍」は現代語です。「朝」は場面によって読み方が変わります。

あらすじの確認

第一段落
・ゆく川の流れは絶えることなくしかもその水はもとの水ではない
・よどみに浮かんでいる泡は一方では消え続け一方では生まれ続ける
・世の中にある人間や住居も「川の流れ」と同じ 
第二段落
・人間は都の中で建てる家の大きさを競い合う
・一方で時間が経つとそれらの家はなくなっている
・人間も同じで、時間が経つとその場所にはいなくなる
・人間も建物も無常であるが、それは朝顔の露と同じだ

対句表現の確認

この文章は、多くの対句が使われています。それを挙げてみましょう。

・かつ消え、かつ結びて
・棟を並べ、いらかを争へる
・高き、いやしき
・去年焼けて 今年作れり
・大家滅びて 小家となる
・あるいは去年焼けて今年作れり。あるいは大家滅びて 小家となる
・明日に死に、夕べに生まるる
・生まれ死ぬる
・いづかたより来たりて、いづかたへか去る
・誰がためにか心を悩まし、似によりてか目を喜ばしむる
・知らずいづかたより〜去る。知らず誰がために〜喜ばしむる。
・露落ちて、花残れり
・露落ちて、花残れり。残るといへども、朝日に枯れぬ。
・花しぼみて、露なほ消えず
・花しぼみて、露なほ消えず。消えずといへども、夕べを待つことなし。
・あるいは露落ちて〜枯れぬ。あるいは花しぼみて〜待つことなし。

 ゆく(かは)(なが)れは()えずして、しかももとの(みづ)にあらず。よどみに()かぶうたかたは、かつ()え、かつ(むす)びて(ひさ)しくとどまりたるためしなし。()(なか)にある(ひと)(すみか)と、またかくのごとし。
 たましきの(みやこ)のうちに(むね)(なら)べ、(いらか)(あらそ)へる(たか)きいやしき(ひと)()まひは、()()()()きせぬものなれど、これをまことかと(たづ)ぬれば、(むかし)ありし(いへ)はまれなり。あるいは()()()けて今年(ことし)(つく)れりあるいは(おほ)(いへ)ほろびて()(いへ)となる()(ひと)もこれに(おな)じ。(ところ)()はらず(ひと)(おほ)かれど、いにしへ()(ひと)は、()(さん)(じふ)(にん)がうちに、わづかに一人(ひとり)二人(ふたり)なり。(あした)()に、(ゆふ)べに()まるるならひ、ただ(みづ)(あわ)にぞ()たりける。()らず、()まれ()ぬる(ひと)いづ(かた)より(きた)りて、いづ(かた)へか()る。また()らず、(かり)宿(やど)り、()がためにか(こころ)(なや)まし、(なに)によりてか()(よろこ)ばしむる。その(あるじ)(すみか)()(じやう)(あらそ)ふさま、いはば(あさ)(がほ)(つゆ)(こと)ならず。あるいは(つゆ)()ちて(はな)(のこ)れり。(のこ)るといへども(あさ)()()れぬあるいは(はな)しぼみて(つゆ)なほ()えず。()えずといへども(ゆふ)べを()つことなし

以下に、空欄で抜かれやすいものを挙げていきます。

 ゆく(かは)(なが)れは()えずして、しかももとの(みづ)にあらず。よどみに()かぶうたかたは、かつ()え、かつ( A )て、(ひさ)しくとどまりたるためしなし。()(なか)にある(ひと)(すみか)と、またかくのごとし。
 たましきの(みやこ)のうちに(むね)(なら)べ、(いらか)(あらそ)へる、(たか)( B )(ひと)()まひは、()()()()きせぬものなれど、これをまことかと(たづ)ぬれば、(むかし)ありし(いへ)はまれなり。あるいは( C )()()けて今年(ことし)(つく)れり。あるいは(おほ)(いへ)ほろびて()(いへ)となる。()(ひと)もこれに(おな)じ。(ところ)()はらず(ひと)(おほ)かれど、いにしへ()(ひと)は、()(さん)(じふ)(にん)がうちに、わづかに一人(ひとり)二人(ふたり)なり。( D )()に、(ゆふ)べに( E )ならひ、ただ(みづ)(あわ)にぞ()たりける。()らず、()まれ()ぬる(ひと)、いづ(かた)より(きた)りて、いづ(かた)へか()る。また()らず、(かり)宿(やど)り、()がためにか(こころ)(なや)まし、(なに)によりてか()(よろこ)ばしむる。その(あるじ)(すみか)()(じやう)(あらそ)ふさま、いはば(あさ)(がほ)(つゆ)(こと)ならず。あるいは(つゆ)()ちて(はな)(のこ)れり。(のこ)るといへども(あさ)()()れぬ。あるいは(はな)しぼみて(つゆ)なほ()えず。()えずといへども(ゆふ)べを()つことなし。

かつ消え、かつ結びて

消え」または「結び」が空欄になりやすいです。

高き、いやしき

高き」または「いやしき」が空欄になりやすい他、「高き」「いやしき」の意味が問われます。
「身分が高い」、「身分が低い」という意味です。

去年焼けて 今年作れり

去年」または「今年」が空欄になりやすい他、「去年」の読みが問われます。

朝に死に、夕べに生まるる

」「夕べ」、「死に」「生まるる」のどちらかが空欄になるだけでなく、「死に」は連用形、「生まるる」は連体形に改める必要があります。

出題ポイント

今回は2か所です。1つは「枕詞」、もう1つは「比喩」についてです。

たましきの都

「たましきの」は枕詞です。「都」を導くための枕詞で、特に訳出はいりません。「都」とは「宝玉を敷き詰めたように美しい場所」だと言っているのでしょう。

「枕詞」って、ある特定の言葉を導く5文字の言葉だったね。

朝顔の露に異ならず 

出題ポイントは2つあります。

《出題ポイント!》
(1)何が「朝顔の露」と異ならない(=同じ)か
(2)「朝顔の露」とはどのようなもののたとえか

「朝顔の露に異ならず」を理解するには、その前後の理解が重要になります。以下の本文を見てください。

主と栖と、無常を争ふさま、いはば朝顔の露に異ならず。あるいは露落ちて花残れり。残るといへども朝日に枯れぬ。あるいは花しぼみて露なほ消えず。消えずといへども夕べを待つことなし。

(1)何が「朝顔の露」と異ならない(=同じ)か

→建物はいつかは壊れ、人はいつかは死ぬ運命にあるのに、大きな家を建てることに勤しんでいること

何が「朝顔の露」と異ならない(=同じ)かというのは、直前の内容(主と栖と、無常を争ふさま)を指します。それは、「家の主人と家が無常を争っていること」、つまり、「建物はいつかは壊れ、人はいつかは死ぬ運命にあるのに、大きな家を建てることに勤しんでいること」が、「朝顔の露」と同じだと言っているのです。

(2)「朝顔の露」とはどのようなもののたとえか

→「朝顔」は「家」のたとえ、「露」は「人間」のたとえ

(1)の説明では十分ではありません。それは、「朝顔の露」というものが、どのようなものかについての説明がされていないからです。「朝顔の露」とは、「朝顔と、その花や葉に置く露との関係」を指します。それを具体的に説明したのが②の後の文です。現代語でまとめると、
「露が落ちても花は残るが、次の日の朝には花も枯れてしまう。あるいは花が枯れて露が残ったとしても、夕方にはその露は消えてしまう。」
となります。これを人間に置き換えると、「人間が滅びても家は残るが、時が経つとと家も朽ち果ててしまう。あるいは家が壊れて人間が残ったとしても、時が経つと人間は死んでいなくなってしまう」と言い換えられます。
つまり、「朝顔の露」(「朝顔」と「露」の関係性)は、『生滅を繰り返す「人間」』(=「露」)と、『人間が競って建てようとするがいずれは崩れ去る「家」』(=「朝顔(の花)」)との関係性と同じだ、と作者は言っているのです。

また、「露」は、「はかないもの」のたとえで、「朝顔の露」の様子に、作者の無常観がよくあらわれています

文学作品・文学史の確認

『方丈記』ですが、これは古典三大随筆の一つで、鴨長明仏教的無常観に基づいて書いた、鎌倉時代前期随筆です。『方丈記』の特徴をまとめたものを、以下に示しておきます。

古典三大随筆は『枕草子』『方丈記』『徒然草』だったね。もう覚えたよ!

大学入試では、鴨長明の作品がよく問われます。『方丈記』『発心集』『無名抄』3つとも是非覚えておいてほしい作品です。

文法の確認

今回は助動詞の問題です。助動詞とはどのようなものかについては、こちらをご覧ください。
助動詞はたくさんありますが、本文に使われている助動詞の中で、過去の助動詞「き」「けり」と完了の助動詞「つ」「ぬ」「たり」「り」を確認します。それぞれの助動詞を確認しておいてください。

本文中の青太字の助動詞の意味と元の形、活用形を答えなさい。

 ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。たましきの都のうちに、棟を並べ、甍を争へ①、高き、卑しき、人の住まひは、世々を経て尽きせ②ものなれど、これをまことかと尋ぬれば、昔あり③家はまれなり。あるいは去年焼けて今年作れ④。あるいは大家滅びて小家となる。住む人もこれに同じ。所も変はらず、人も多かれど、いにしへ見⑤人は、二、三十人が中に、わづかにひとりふたりなり。朝に死に、夕べに生まるるならひ、ただ水のあわにぞ似 ⑥たりける。知らず、生まれ死ぬる人、いづかたより来たりて、いづかたへか去る。また知らず、仮の宿り、たがためにか心を悩まし、何によりてか目を喜ばしむる。その、あるじとすみかと、無常を争ふさま、いはば朝顔の露に異ならず。あるいは露落ちて花残れ⑧。残るといへども朝日に枯れ⑨。あるいは花しぼみて露なほ消えず。消えずといへども夕べを待つことなし。

【解答】
①存続(完了)・「り」・連体形  
②打消・「ず」・連体形  
③過去・「き」・連体形
④存続(完了)・「り」・終止形  
⑤過去・「き」・連体形  
⑥存続(完了)・「たり」・連用形
⑦詠嘆・「けり」・連体形  
⑧存続(完了)・「り」・終止形  
⑨完了・「ぬ」・終止形

おわりに

今回は『方丈記』の冒頭を復習していきました。出題者側としては、この部分は非常に問題としては出しにくい文章です。文学史・空所補充・過去、完了の助動詞などが出やすいと思いますので、重点的に学習しておくとよいと思います。「朝顔の露」のところは非常に難しいので、何がどのようにたとえられているか、何度も読んで理解してください。では、またお会いしましょう。

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