はじめに
自己紹介はこちら
先生、今回は「竹取物語」の冒頭ですよね。僕は「かぐや姫」のお話を小さい時に読んだから、内容は知っていますよ。
じゃあ、昔の言葉でどのように書かれていたか、知っていくといいね。内容を知っていたら、とっても読みやすい文だと思うよ。
「今は昔、竹取の翁といふ者」(なよ竹のかぐや姫」「かぐや姫誕生」)予習・解説 第1回
今回は、「竹取物語」冒頭の部分をやっていきましょう。これは、教科書によっては「なよ竹のかぐや姫」や「かぐや姫誕生」などと書かれてあったりもします。
では、始めていきましょう。することは以下の3つです。
1本文を読む
2登場人物の確認
3お話を簡単に理解
本文を読む
電車やバスの中では難しいですが、自宅で読んでいる時はぜひ声に出して読んでみてください。そうすると、読みにくい箇所が分かると思います。何度も本文を読んでみて、内容を想像してみるのが予習の最も大事なことです。その際、意味調べなどしないことがポイントです。
今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、さかきの造となむいひける。その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。翁言ふやう、「わが朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて知りぬ。子になり給ふべき人なめり。」とて、手にうち入れて家へ持ちて来ぬ。妻の嫗にあづけて養はす。うつくしきこと限りなし。いとをさなければ、籠に入れて養ふ。
竹取の翁、竹を取るに、この子を見つけてのちに竹取るに、節をへだててよごとに、黄金ある竹を見つくること重なりぬ。かくて翁、やうやう豊かになりゆく。
この児、養ふほどに、すくすくと大きになりまさる。三月ばかりになるほどに、よきほどなる人になりぬれば、髪上げなどさうして、髪上げさせ、裳着す。帳の内よりも出ださず、いつき養ふ。この児のかたち清らなること世になく、屋の内は暗き所なく光みちたり。翁、心地あしく苦しき時も、この子を見れば、苦しきこともやみぬ。腹立たしきことも慰みけり。
翁、竹を取ること久しくなりぬ。いきほひ猛の者になりにけり。この子いと大きになりぬれば、名を、御室戸斎部の秋田をよびて、つけさす。秋田、なよ竹のかぐや姫とつけつ。このほど三日、うちあげ遊ぶ。よろづの遊びをぞしける。男はうけ嫌はず呼び集へて、いとかしこく遊ぶ。世界の男、あてなるも、賎しきも、「いかでこのかぐや姫を得てしがな、見てしがな」と音に聞き、めでて惑ふ。
まずは全部読んでみよう!今回は1、2段落の内容を説明をするよ。
登場人物の確認
竹取の翁(さかきの造)
三寸ばかりなる人(かぐや姫)
妻の嫗(翁の妻)
ーーーー(ここから第二回)ーーーー
御室戸斎部の秋田 男(たち)
翁(おじいさん)、嫗(おばあさん)、かぐや姫の三人が中心です。
お話を簡単に理解
※段落分けは教科書によって異なります
第一段落
・昔むかし、竹取の翁(さかきの造)という竹を取ることを生業としていた者がいた
・ある時、竹の中に根本が光る竹を見つけ、そこには小さな(約10cm)女の子がいた
・翁は自分の子になるべき人だと思って、家に連れて帰り、嫗に育てさせる
第二段落
・その後、翁は黄金の竹を見るけることが重なり、裕福になる
ーーーー(ここから第二回)ーーーー
第三段落
・女の子は三か月で一人前の女性の大きさになり、成人の儀式を執り行う
第四段落
・黄金の竹を取ることが続いた翁は有力者になる
・女の子の名前を命名師につけさせ、「なよ竹のかぐや姫」とつける
・男(結婚相手になりそうな者)を大勢集めて宴を開く
・男たちは皆、かぐや姫を妻にしたいと心を悩ませる
小さいときに「かぐや姫」を読んだことがあれば、大体は知っていますね(笑)。翁の名前が「さかきのみやつこ(さぬきのみやつこ)」ということをこの文章で初めて知ったものです。
次に、今回は重要古文単語を見ていき、その後で理解しにくい箇所を解説していきます。
重要古文単語の確認
本文に出てくる重要古文単語を先に確認しておきましょう
あやし
「あやし」(形・シク活)
1(怪し)不思議だ、変だ、妙だ
2(賤し)粗末だ、、みすぼらしい、身分が低い(=いやし(賤し))
「あやし」は上記2種類の意味がありますが、ひらがなで「あやし」とあっても、漢字に置き換えると意味が理解できそうです。
これは「あやしがりて、寄りて見るに」と動詞になっているけど、形容詞の「あやし」を知っておくと意味は分かるね。ここは1の(怪し)の意味を使うんだね。
うつくし
「うつくし」(形・シク活)=かわいい
ゐる
「ゐる」(居る)(動・ワ上一)
=座る/いる
※「率る」=連れる
「いとうつくしうてゐたり」だね。
「ゐる」はワ行上一段活用の動詞です。「居る」は「座る」の意味、「率る」は「連れる」と、2種類の意味がありますが、これも、漢字に置き換えると意味が理解できるでしょう。
おはす
「おはす」(動・サ変)
=(尊敬語)いらっしゃる
(←「あり」/「行く」、「来」)
これは、「竹の中におはするにて知りぬ」かな。ここでは「あり」の尊敬語になっているね
やうやう
「やうやう」(副)=だんだん、次第に
「翁、やうやう豊かになりゆく」だね。
たくさんあって大変ですが、どれもよく出てくる古文単語です。大学入試では必須(覚えておかないといけない単語)ですので、一つ一つ丁寧に覚えていきましょう。
理解しにくい箇所の解説
以下の3箇所をマスターしよう!
- いとうつくしうてゐたり
- 竹の中におはするにて知りぬ
- 子になり給ふべき人なめり
①までのあらすじです。
竹の中にいた小さな小さな女の子をおじいさんが見つけたんだよね。①はその後の文です。
①いとうつくしうてゐたり
→(訳)(竹の中の小さな子は)とてもかわいい様子で座っている
ここでは、「うつくし」「ゐる」の重要単語2つを覚えましょう。「うつくし」は「かわいい」という意味でしたね。「うつくし」の連用形は「うつくしく」ですが、言いやすいように「うつくしう」となっています。これをウ音便といいます。また、形容詞の活用についてはこちらをご覧ください。
次に「ゐる」です。漢字では「居る」と書いて、「座る/いる」という意味を持ちます。 また、「ゐる」はワ行上一段活用の動詞です。上一段活用の動詞はいくつ言えますか。自信のない人はこちらをご覧ください。
「いと」=とても です。これはなぜか感覚で分かるようです。
「たり」は助動詞で、「〜ている」と訳します。これは後々詳しくやりましょう。いますぐ知りたい人はこちら。
その後、おじいさんは毎日竹の中を見ていたから、女の子の存在が分かったと言っているよ
②竹の中におはするにて知りぬ
→(訳)竹の中にいらっしゃるので(この子が自分たちの子になるということが)分かった
ここでは、まず「おはす」の意味の確認です。「あり」や「行く/来」の尊敬語で「いらっしゃる」となります。尊敬語は「動作をする人」を敬うときに用いるものです。ここでは「あり」(=いる)を尊敬語にしています。そうした時に、もう一つ大きなことに気が付きます。それは、
「翁」(たち)は「かぐや姫」に尊敬語を使用している
ということです。それがなぜなのかは、本文をもっともっと読んでいかないとわかりませんし、教科書の範囲ではまず出てきませんが、文章を読んで主語を判別するときに役立つので知っておきましょう。
「知る」は「分かる」と解釈するとうまくいくことが多いです。では、何が分かったのかいうと、前の文に「朝ごと夕ごとに見る竹」とあり、次の文に「子になりたまふべき人なめり」(解釈は③「子になりたまふべき人なめり」でします)とあるので「自分(だけ)がこの竹を取る仕事をしていて毎日竹を見ていたので、この子が竹の中にいたということは、自分たちの子になるべき人なのだということが分かった」と考えられます。
「ぬ」は完了を表す助動詞です。今は「〜た」と訳す程度が分かっていればいいですが、詳しく知りたいならばこちらをご覧ください。
③子になりたまふべき人なめり
→(訳)(私たちの)子になりなさるはずの人であるようです
「たまふ」は尊敬語です。「なる」という動詞の連用形「なり」の下についているので、尊敬語の補助動詞になります。敬語における補助動詞は、「尊敬」などの意味を加えるだけで、実際の動詞が持つ「意味」がなくなっているものだと解釈しておけばよいです。ですから、補助動詞の「たまふ」(給ふ)は「お〜になる/〜なさる」と今は覚えておけばよいでしょう。
「べし」は助動詞です。後々詳しくやりますが、私は「べし」が出てきたら「〜べきだ」か「〜はずだ」と訳しておけば大半は問題ないと伝えています。ここでも、「〜はずの(人)/〜べき(人)」で十分意味が通じます。助動詞「べし」について詳しく知りたい人はこちらをご覧ください。
「なめり」は助動詞「なり」と助動詞「めり」がくっついたものと今は考えておいて結構です。訳は「〜であるようだ」です。ここは助動詞の学習でも最終盤に出てくる知識なので、今はおいておきましょう。
(おまけ)
「子になる」には作者の遊び心が含まれています。それは、竹取の翁の仕事が竹を取って、それを様々なことに利用している(=野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり)ことと関係します。この文章の後で、かぐや姫を「籠に入れて養ふ」とあることから、「よろづのこと」の一つに、「籠を作(って売)る」ことがあると考えられます。つまり、この部分は
「私が籠を作る竹の中にいたのだから、竹が籠になるようにこの子も私の子になる」
と、作者がダジャレを放り込んできたとも考えられるわけです。そのような遊び心も分かると少し古文が面白く感じられませんか。
おじいさんはこの女の子を家を連れて帰り、嫗(おばあさんに)に育てさせます。その後、おじいさんは野山で黄金の竹を見つけることが重なって、だんだんと豊かになっていきました。ここまでが今回の範囲です。続きは第2回で行いましょう。
テスト対策 第1回
では、今回の『竹取物語』の冒頭において、テストに出そうな内容にできるだけ絞ってお話しましょう。
本文の確認
テスト直前でもすべきことの基本は、「本文を読むこと」です。これまで学習した内容をしっかり思い出しながら読みましょう。「テスト対策」はあえてふりがなをつけていません。不安な場合は、このページの上部「本文を読む」で確認してください。
今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、さかきの造となむいひける。その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。翁言ふやう、「わが朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて知りぬ。子になり給ふべき人なめり。」とて、手にうち入れて家へ持ちて来ぬ。妻の嫗にあづけて養はす。うつくしきこと限りなし。いとをさなければ、籠に入れて養ふ。
竹取の翁、竹を取るに、この子を見つけてのちに竹取るに、節をへだててよごとに、黄金ある竹を見つくること重なりぬ。かくて翁、やうやう豊かになりゆく。
これらの単語の意味が分かっていると、圧倒的に読みやすいよ。
「あやし」「うつくし」「ゐる」(居る)「おはす」「やうやう」
それぞれの単語の意味はこのページ上部の「予習・解説」を見てください。
読みで問われやすい語
「翁」「造」「給ふ」「嫗」の4つです。「おきな」「みやつこ」「たまう」「おうな」ですね。特に「給ふ」は「たもう」と読むと強く教えられている人は、そのように解答しましょう。
あらすじの確認
※段落分けは教科書によって異なります
第一段落
・昔むかし、竹取の翁(さかきの造)という竹を取ることを生業としていた者がいた
・ある時、竹の中に根本が光る竹を見つけ、そこには小さな(約10cm)女の子がいた
・翁は自分の子になるべき人だと思って、家に連れて帰り、嫗に育てさせる
第二段落
・その後、翁は黄金の竹を見るけることが重なり、裕福になる
出題ポイント
以下の3項目が何も見ずに訳すことができるか。確認してください。
- いとうつくしうてゐたり
- 竹の中におはするにて知りぬ
- 子になりたまふべき人なめり
いとうつくしうてゐたり
《出題ポイント!》
「うつくし」「ゐる」の語の意味が問われやすいです。
「ゐる」は動詞の問題としても出題されます。
→(訳)(竹の中の小さな子は)とてもかわいい様子で座っている
「うつくし」「ゐる」重要古語2つを覚えていますか。
「うつくし」は「かわいい」、「ゐる」(居る)は「座る」でしたね。
「うつくし」の連用形は「うつくしく」ですが、言いやすいように「うつくしう」となっています。これをウ音便といいます。また、「ゐる」はワ行上一段活用の動詞です。「ゐたり」の「ゐ」はワ行上一段活用の連用形です。
「居る」は「座る」と訳すクセをつけておきましょう。合わないときだけ「いる」と訳します。
竹の中におはするにて知りぬ
《出題ポイント!》
「おはす」の語の意味が問われやすいです。
何を「知りぬ」なのか、その解釈も聞かれることがあります。
→(訳)竹の中にいらっしゃるので(この子が自分たちの子になるということが)分かった
ここでは、まず「おはす」の意味の確認です。「おはす」は尊敬語で「いらっしゃる」と訳します。
ところで、尊敬語は「動作をする人」を敬うときに用いるものです。ここでは「あり」(=いる)を尊敬語にしています。そうすると、
「翁」(たち)は「かぐや姫」に尊敬語を使用している
ということが分かります。
「知る」は「分かる」と解釈するとうまくいくことが多いです。では、分かった内容は、「この子は自分たちの子になるべき人なのだということ」だと考えられます。
子になりたまふべき人なめり
《出題ポイント!》
現代語訳が出題されやすいです。
→(訳)(私たちの)子になりなさるはずの人であるようです
「たまふ」は尊敬語です。「なる」という動詞の下についているので補助動詞になります。敬語における補助動詞は、「尊敬」の意味を加えるだけで、実際の動詞が持つ「意味」がなくなっているものだと解釈しておけばよいです。ですから、補助動詞の「たまふ」(給ふ)は「お〜になる/〜なさる」と今は覚えておけばよいでしょう。
「べし」は助動詞です。後々詳しくやりますが、私は「べし」が出てきたら「〜べきだ」か「〜はずだ」と訳しておけば大半は問題ありません。ここでも、「〜はずの(人)/〜べき(人)」で十分意味が通じます。「なめり」は助動詞「なり」と「めり」がくっついたものと今は考えておいて結構です。訳は「〜であるようだ」です。
文法の確認
この文章は高校一年生の初期に読むことが多いでしょうから、動詞の問題として出題されることが多いと考えられます。ですので、以下の問題を解いて、動詞の問題に慣れておきましょう。動詞の他、古文文法における基本事項の知識を確認したい場合は以下をご覧ください。
特に、動詞の活用の種類の見分け方を身につけておきたいね。
では、実際に問題を解いていきましょう。
本文中の青太字①〜⑮の動詞の活用の種類と活用形を答えなさい。
今は昔、竹取の翁と①いふ者②ありけり。野山に③まじりて竹を取りつつ、よろづのことに ④使ひけり。名をば、さぬきの造となむ⑤いひける。その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。⑥怪しがりて、寄りて⑦見るに、筒の中光りたり。それを⑧見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうて⑨ゐたり。
翁言ふやう、「われ朝ごと夕ごとに見る竹の中に⑩おはするにて⑪知りぬ。子に⑫なりたまふべき人なめり。」とて、手にうち入れて、家へ持ちて⑬来ぬ。妻の嫗に⑭預けて⑮やしなはす。うつくしきこと、限りなし。いと幼ければ、籠に入れてやしなふ。
解答は以下のとおりです。
①ハ行四段活用・連体形
②ラ行変格活用・連用形
③ラ行四段活用・連用形
④ハ行四段活用・連用形
⑤ハ行四段活用・連用形
⑥ラ行四段活用・連用形
⑦マ行上一段活用・連体形
⑧マ行上一段活用・已然形
⑨ワ行上一段活用・連用形
⑩サ行変格活用・連体形
⑪ラ行四段活用・連用形
⑫ラ行四段活用・連用形
⑬カ行変格活用・連用形
⑭カ行四段活用・連用形
⑮ハ行四段活用・未然形
おわりに
今回は「竹取物語」の冒頭でした。一見簡単なように見えて、実は解釈しにくいところがいくつかあることが分かりました。解釈しにくいところを丁寧に理解していくことの積み重ねが古文をすらすら読めるようになることの第一歩です。普段の授業では、じっくり読むことを意識してみてくださいね。では、またお会いしましょう。
第2回は以下をご覧ください。
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