はじめに
自己紹介はこちら
今回は、かぐや姫を家に連れて行ったおじいさんが豊かになった後の話から解説するよ。
前回の復習
前回の内容を板書で確認してください。
「今は昔、竹取の翁といふ者」(「なよ竹のかぐや姫」「かぐや姫誕生」)予習・解説 第2回
今回は「かぐや姫誕生」の第2回です。前回の内容を思い出しながら進んでください。
することは「本文を読む」「人物の確認」「お話の理解」の3つです。その後、重要古語の理解に進みましょう。
本文を読む
前回の範囲の内容をしっかり思い出しながら、本文をじっくり読んでみましょう。思い出せなかった人は第1回を再度見てください。
今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、さかきの造となむいひける。その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。翁言ふやう、「わが朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて知りぬ。子になり給ふべき人なめり。」とて、手にうち入れて家へ持ちて来ぬ。妻の嫗にあづけて養はす。うつくしきこと限りなし。いとをさなければ、籠に入れて養ふ。
竹取の翁、竹を取るに、この子を見つけてのちに竹取るに、節をへだててよごとに、黄金ある竹を見つくること重なりぬ。かくて翁、やうやう豊かになりゆく。
ーーーー(ここから第2回)ーーーー
この児、養ふほどに、すくすくと大きになりまさる。三月ばかりになるほどに、よきほどなる人になりぬれば、髪上げなどさうして、髪上げさせ、裳着す。帳の内よりも出ださず、いつき養ふ。この児のかたち清らなること世になく、屋の内は暗き所なく光みちたり。翁、心地あしく苦しき時も、この子を見れば、苦しきこともやみぬ。腹立たしきことも慰みけり。
翁、竹を取ること久しくなりぬ。いきほひ猛の者になりにけり。この子いと大きになりぬれば、名を、御室戸斎部の秋田をよびて、つけさす。秋田、なよ竹のかぐや姫とつけつ。このほど三日、うちあげ遊ぶ。よろづの遊びをぞしける。男はうけ嫌はず呼び集へて、いとかしこく遊ぶ。世界の男、あてなるも、賎しきも、「いかでこのかぐや姫を得てしがな、見てしがな」と音に聞き、めでて惑ふ。
今回は3段落めからのお話が中心だね。
登場人物の確認
竹取の翁(さかきの造)
三寸ばかりなる人(かぐや姫)
妻の嫗(翁の妻)
ーーーー(ここから第2回)ーーーー
御室戸斎部の秋田 男(たち)
「秋田」とはかぐや姫と名付けた者(命名師)、男(たち)は後のかぐや姫の求婚者ですので、中心人物ではありません。翁(おじいさん)、嫗(おばあさん)、かぐや姫の三人が中心です。
お話を簡単に理解
※段落分けは教科書によって異なります
第一段落
・昔むかし、竹取の翁(さかきの造)という竹を取ることを生業としていた者がいた
・ある時、竹の中に根本が光る竹を見つけ、そこには小さな(約10cm)女の子がいた
・翁は自分の子になるべき人だと思って、家に連れて帰り、嫗に育てさせる
第二段落
・その後、翁は黄金の竹を見るけることが重なり、裕福になる
ーーーー(ここから第2回)ーーーー
第三段落
・女の子は三か月で一人前の女性の大きさになり、成人の儀式を執り行う
第四段落
・黄金の竹を取ることが続いた翁は有力者になる
・女の子の名前を命名師につけさせ、「なよ竹のかぐや姫」とつける
・男(結婚相手になりそうな者)を大勢集めて宴を開く
・男たちは皆、かぐや姫を妻にしたいと心を悩ませる
重要古文単語の確認
本文に出てくる重要古文単語を先に確認しておきましょう
いつく
「いつく」(動・カ四)=大切に育てる
「帳のうちよりも出ださず、いつき養う」を見てね。
かたち
「かたち」(容、貌、容貌)(名)
=顔かたち、容貌
「いつき養う」のすぐ下に、「この児のかたち清らなること」とあるね。
たまに、漢字で書かれていますが、「容」「貌」「容貌」いずれも「かたち」と読みます。教科書では通常ふりがなが振ってあります。
きよらなり/けうらなり
「きよらなり」(形動・ナリ活)
=清らかで美しい(最高級の美しさ)
「清ら」で、「けうら」と読むことがあります。「きよら」「けうら」どちらでも覚えていきましょう。
よく似た語で「きよげなり」(=さっぱりとして美しい)というものがありますが、これは「きよらなり」に比べて少し「美しさ」の程度が落ちます。「きよらなり」の方が上と理解しておけばよいでしょう。
あそぶ
「遊ぶ」(動・バ四)
=詩歌・管弦の催しをする
「うちあげ遊ぶ」だね。本文はかなり先に進んだよ。
「遊ぶ」は現代語と同じように、「好きなことをする」という意味ですが、平安貴族にとって「好きなこと」とは、主に詩歌を作ったり読んだりすること、音楽を演奏することだったのでしょう。ちなみに、「詩」とは漢詩のこと、「歌」とは和歌のことを指します。
あてなり
「貴なり」(形動・ナリ活)
=高貴だ、身分が高い
「あてなるも賎しきも」だね。「賎し」は「あてなり」の反対の意味で、「身分が低い」という意味になるよ。
めづ
「めづ」(愛づ、賞づ)(動・ダ下二)
=ほめる
本文一番最後、「めでて遊ぶ」にあるよ。
「あてなり」も「めづ」も漢字を当てると覚えやすいと思います。
理解しにくい箇所の解説を見る
以下の2箇所をマスターしよう!
- 髪上げさせ、裳着す
- いかでこのかぐや姫を得てしがな、見てしがな
④までのあらすじです。
小さな女の子を育てていると、3ヶ月で一人前の女性になりました。そして、成人の儀式を行います。
④髪上げなどとかくして髪上げさせ、裳着す
→(訳)「髪上げ」の儀式などをあれこれして、(翁の家に仕える者に)「髪上げ」をさせ、「裳」を着させ(成人の儀式を執り行わさせ)る。
「髪上げ」「裳着」は、いずれも女性の成人の儀式です。かぐや姫を正式に成人の女性として認め、翁たちは結婚相手を探します。本文では「裳着す」となっているので、「裳を着させる」と訳します。「とかく」は「あれやこれやと」と理解しておけばよいでしょう。
ここからのあらすじは、以下を見てください。
家の中はかぐや姫のおかげで光り輝く
翁はつらい時もこの子を見ると癒される
⇓(すると、翁は光る竹を見つけるがそこには黄金が入っている。)
黄金のある竹を見つけ続けて、次第に有力者になっていく
娘は大きくなったので、御室戸斎部の秋田(命名師)に名前をつけさせる
秋田は「なよ竹のかぐや姫」と命名 ⇒ 三日間、祝宴を開く
かぐや姫の噂を聞きつけた世の男たちは、みんな次のようになりました。
⑤いかで、このかぐや姫を得てしがな、見てしがな
→(訳)(宴に呼ばれた男たちは)なんとかして、このかぐや姫を手に入れたい(妻にしたい)ものだ、結婚したいものだ。
「いかで」は「いかにして」がつづまった形で、「なんとかして」という意味です。「得」は終止形では「う」と読み、ア行下二段活用をする動詞です。意味は「手に入れる」ですが、意味だけでなく、動詞の活用としても出題されます。
「てしがな」は文末に置く助詞で、終助詞と呼ばれます。意味は自己の希望を表し「〜たい(ものだ)」となります。
また、「見る」は現代語の「見る」とは少しニュアンスが異なります。当時、貴族の女性は簡単に相手に顔を見せることはしません。初めて顔を見るのは、二人っきりで夜を過ごす時・・・。なかなか訳出が難しいので、ここでは「結婚する」としておきます。
男たちは皆、かぐや姫を妻にしたいと心を悩ませるわけです。
テスト対策 第2回
では、テスト対策に移ります。第1回のテスト対策は、『竹取物語』冒頭の、竹取の翁が豊かになるところまででした。今回はその後からになります。
出やすいところはいつも同じだから、できるだけ絞ってお話するね。
第1回の内容は以下をご覧ください。
本文の確認
テスト直前でもすべきことの基本は、「本文を読むこと」です。これまで学習した内容をしっかり思い出しながら読みましょう。「テスト対策」はあえてふりがなをつけていません。不安な場合は、このページの上部「本文を読む」で確認してください。
この児、養ふほどに、すくすくと大きになりまさる。三月ばかりになるほどに、よきほどなる人になりぬれば、髪上げなどさうして、髪上げさせ、裳着す。帳の内よりも出ださず、いつき養ふ。この児のかたちけうらなること世になく、屋の内は暗き所なく光みちたり。
翁、心地あしく苦しき時も、この子を見れば、苦しきこともやみぬ。腹立たしきことも慰みけり。翁、竹を取ること久しくなりぬ。いきほひ猛の者になりにけり。この子いと大きになりぬれば、名を、御室戸斎部の秋田をよびて、つけさす。秋田、なよ竹のかぐや姫とつけつ。このほど三日、うちあげ遊ぶ。よろづの遊びをぞしける。男はうけ嫌はず呼び集へて、いとかしこく遊ぶ。世界の男、あてなるも、賎しきも、「いかでこのかぐや姫を得てしがな、見てしがな」と音に聞き、めでて惑ふ。
これらの単語の意味が分かっていると、圧倒的に読みやすいよ。
「かたち」「清らなり」「遊ぶ」「あてなり」「めづ」(愛づ、賞づ)
それぞれの単語の意味はこのページ上部の「予習・解説」を見てください。
読みで問われやすい語
「翁」「造」「給ふ」「嫗」「裳」「斎部」の6つです。「おきな」「みやつこ」「たまう」「おうな」「も」「いんべ」ですね。特に「給ふ」は「たもう」と読むと強く教えられている人は、そのように解答しましょう。また、「裳」は書く問題でもよく出てきます。「喪」と間違えないようにしてください。
あらすじの確認
※段落分けは教科書によって異なります
第一段落
・昔むかし、竹取の翁(さかきの造)という竹を取ることを生業としていた者がいた
・ある時、竹の中に根本が光る竹を見つけ、そこには小さな(約10cm)女の子がいた
・翁は自分の子になるべき人だと思って、家に連れて帰り、嫗に育てさせる
第二段落
・その後、翁は黄金の竹を見るけることが重なり、裕福になる
ーーーー(ここから第2回)ーーーー
第三段落
・女の子は三か月で一人前の女性の大きさになり、成人の儀式を執り行う
第四段落
・黄金の竹を取ることが続いた翁は有力者になる
・女の子の名前を命名師につけさせ、「なよ竹のかぐや姫」とつける
・男(結婚相手になりそうな者)を大勢集めて宴を開く
・男たちは皆、かぐや姫を妻にしたいと心を悩ませる
出題ポイント
以下の2項目が何も見ずに訳すことができるか確認してみてください。
- 髪上げなどとかくして髪上げさせ、裳着す
- いかで、このかぐや姫を得てしがな、見てしがな
髪上げなどとかくして髪上げさせ、裳着す
《出題ポイント!》
「髪上げ」「裳着」が空欄補充にされたり、「髪上げ」「裳着」が何か説明を求める出題がされたりします。
→(訳)「髪上げ」の儀式などをあれこれして、(翁の家に仕える者に)「髪上げ」をさせ、「裳」を着させ(成人の儀式を執り行わさせ)る。
「髪上げ」「裳着」は、いずれも女性の成人の儀式です。かぐや姫を正式に成人の女性として認め、翁たちは結婚相手を探します。本文では「裳着す」となっているので、「裳を着させる」と訳します。「とかく」は「あれやこれやと」と理解しておけばよいでしょう。
いかで、このかぐや姫を得てしがな、見てしがな
《出題ポイント!》
全体の現代語訳が聞かれます。「見てしがな」を正確に訳そう!
「得」と「見」は動詞の活用問題として出題されやすいです。
→(訳)(宴に呼ばれた男たちは)なんとかして、このかぐや姫を手に入れたい(妻にしたい)ものだ、結婚したいものだ。
「いかで」は「いかにして」がつづまった形で、「なんとかして」という意味です。
「得」は終止形では「う」と読み、ア行下二段活用をする動詞です。意味は「手に入れる」です。
「てしがな」は文末に置く助詞で、終助詞と呼ばれます。意味は自己の希望を表し「〜たい(ものだ)」となります。
また、「見る」(マ行上一段活用の動詞)は現代語の「見る」とは少しニュアンスが異なります。当時、貴族の男性が女性を初めて顔を見るのは、二人っきりで夜を過ごす時でした。よって訳出は色々な意味で難しいので、ここでは「結婚する」としておきます。ですので、「見てしがな」は「結婚したいものだ」と訳すとよいでしょう。
文法の確認
「文法の確認」第2回も動詞の問題です。動詞の他、古文文法における基本事項の知識を確認したい場合は以下をご覧ください。
本文中の青太字①〜⑮の動詞の活用の種類と活用形を答えなさい。
この児、養ふほどに、すくすくと大きになりまさる。三月ばかりになるほどに、よきほどなる人に①なりぬれば、髪上げなどさうして、髪上げさせ、裳②着す。帳の内よりも③出ださず、いつき養ふ。この児のかたちけうらなること世になく、屋の内は暗き所なく光④みちたり。
翁、心地あしく苦しき時も、この子を見れば、苦しきことも⑤やみぬ。腹立たしきことも⑥慰みけり。翁、竹を取ること久しくなりぬ。いきほひ猛の者になりにけり。この子いと大きになりぬれば、名を、御室戸斎部の秋田をよびて、⑦つけさす。秋田、なよ竹のかぐや姫とつけつ。このほど三日、うちあげ遊ぶ。よろづの遊びをぞしける。男はうけ嫌はず呼び⑧集へて、いとかしこく遊ぶ。世界の男、あてなるも、賎しきも、「いかでこのかぐや姫を⑨得てしがな、⑩見てしがな」と音に聞き、⑪めでて⑫惑ふ。
今回は難しいものも含まれています。特に②④⑥⑨⑩あたりは難しいです。活用の種類の見分け方はこちらを見てください。
解答は以下のとおりです。
①ラ行四段活用・連用形
②カ行上一段活用・未然形
③サ行四段活用・未然形
④タ行四段活用・連用形
⑤マ行四段活用・連用形
⑥マ行四段活用・連用形
⑦カ行下二段活用・未然形
⑧ハ行下二段活用・連用形
⑨ア行下二段活用・連用形
⑩マ行上一段活用・連用形
⑪ダ行下二段活用・連用形
⑫ハ行四段活用・終止形
おわりに
今回は「竹取物語」冒頭の第2回でしたが、内容は分かりましたか。少し訳しにくい箇所もあったかと思いますが、基本的に丁寧な全訳よりも大きく全体を理解する方が大事ですので、内容を大きく捉えることを重視して文章を読むことをこれからも続けてください。あと、文法は今回も動詞の問題でしたが、活用の種類と活用形は習得に時間がかかるので、何度も練習してみてくださいね。では、またお会いしましょう。
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