はじめに
自己紹介はこちら
先生、古文をほとんど読んだことがないんですけど、こんな僕でも分かるようになりますか?
大丈夫だよ。まだ、分からないこともいっぱいあるだろうけど、少しずつ理解していけば、古文は難しいものじゃないからね。今日は一番はじめによく読まれる文章から始めるよ。このページの後半はテスト対策になっているので、テスト前になったら見てくださいね。
「児のそら寝」予習・読解編 第1回
今回は、「児のそら寝」について予習していきます。この文章は、高校1年生の教科書のほとんどに載っています。古文の入門によく使われる文章です。細かい文法的知識は置いておいて、まずは大きく文章の内容を理解していくことから始めましょう。
することは以下の3つです。
1本文を読む
2登場人物の確認
3お話を簡単に理解
本文を読む
本文をじっくり読んでみましょう。電車やバスの中では難しいですが、自宅で読んでいる時はぜひ声に出して読んでみてください。そうすると、読みにくい箇所が分かると思います。何度も本文を読んでみて、内容を想像してみるのが予習の最も大事なことです。その際、意味調べなどしないことがポイントです。
声に出して読むと、言葉の区切りがよく分かるよ。
今は昔、比叡の山に児ありけり。僧たち、宵のつれづれに、「いざ、かいもちひせむ。」と言ひけるを、この児、心寄せに聞きけり。さりとて、し出ださむを待ちて寝ざらむもわろかりなむと思ひて、片方に寄りて、寝たるよしにて、出で来るを待ちけるに、すでにし出だしたるさまにて、ひしめき合ひたり。
この児、さだめておどろかさむずらむと、待ちゐたるに、僧の、「もの申しさぶらはむ。おどろかせたまへ。」と言ふを、うれしとは思へども、ただ一度にいらへむも、待ちけるかともぞ思ふとて、いま一声呼ばれていらへむと、念じて寝たるほどに、
ーーー(ここから第2回)ーーー
「や、な起こしたてまつりそ。をさなき人は、寝入りたまひにけり。」と言ふ声のしければ、あな、わびしと思ひて、いま一度起こせかしと、思ひ寝に聞けば、ひしひしと、ただ食ひに食ふ音のしければ、すべなくて、無期ののちに、「えい。」といらへたりければ、僧たち笑ふこと限りなし。
登場人物の確認
児(ちご)、僧たち
今回はこの2人です。(実際は「僧たち」が一人ではありませんが…)
お話を簡単に理解
第一段落
・比叡山延暦寺にある児がいた
・他の僧がぼたもちを作ると話していて、児も食べたいと思った
・でも、子供が夜に起きているのはよくないと思って寝たふりをしていた
第二段落
・僧は起こしてくれたが、一度返事するのはよくないと思い、児は返事をしない
ーーーー(ここから第2回)ーーーー
・他の僧が起こすのはかわいそうだという→児は困る
・おいしそうな食べる音を聞いて、我慢できず児はずっと後になってから返事する
・僧たちは大笑い
次に、理解しにくい箇所を解説していきます。
理解しにくい箇所の解説
以下の6箇所をマスターしよう!
- 宵のつれづれに
- 寝ざらむもわろかりなむ
- さだめておどろかさむずらむ
- おどろかせたまへ
- ただ一度にいらへむも
- 念じて寝たるほどに
①までのあらすじです。
冒頭で、昔の話であること、比叡山(延暦寺)に児(こども)がいたことが話されます。そこで延暦寺の僧たちはあることを始めます。
①宵のつれづれに
→(訳)夜の退屈な時間に
ここでは、「宵」と「つれづれ」の意味を覚えておく必要があります。「宵」は「夜(になってすぐ)」という意味です。「つれづれに」は、「つれづれ(徒然)」という名詞に格助詞の「に」がついたものと考えるのが一般的ですが、「つれづれに」で形容動詞ナリ活用の連用形と解釈することもできます。今回は前者で訳しています。意味は以下のとおりです。
つれづれ(なり)
「つれづれ」(名)「つれづれなり」(形動・ナリ活)
=退屈(だ)/手持ちぶさた(だ)
名詞として解釈した場合、「に」の上に「時間」が省略されていると考えます。
僧たちは「ぼたもちを作ろう」といってます。それを聞いた児は、出来上がりを期待して待っています。でも、児はまだ子どもなので……。
②寝ざらむも、わろかりなむ
→(訳)(僧がぼたもちを作るからといって、子どもの自分が)寝ないようなのも、きっとよくないだろう
ここには、「ざら」「む」「な」「む」と助動詞が4つも出てきますが、今は以下のような意味になるということだけ知っていればよいでしょう。
「ざらむ」=〜ないような
「なむ」=きっと〜だろう
助動詞はまだ詳しく知る必要はないけど、先に知りたいという人はこちらを見て、どんなものかを知ってみてもよいでしょう。
「わろかり」は「わろし」という形容詞が活用したもので、意味は「よくない」です。
「わろし」を学ぶときには、よく似た意味の「よし」「よろし」「あし」の意味もまとめて理解しておくとよいでしょう。
わろし
「わろし」(形・ク活)
=よくない/よくはない
※「よし」→「よろし」→「わろし」→「あし」
(良い→わるくない→よくない→悪い)
児は寝たふりをして待っていると、どうやらぼたもちは出来上がった様子です。児は僧たちが起こしてくれると期待しています。
③定めて驚かさむずらむ
→(訳)(僧たちは)きっと起こす (=起こしてくれる)だろう
「さだめて」=きっと
「むず」「らむ」(助動詞)=(2語で)〜だろう
「驚かす」はまず「驚く」の意味を覚えておく必要があります。
おどろく
「驚く」(動・カ四)
1はっと気がつく/2目を覚ます
ここでは、2の意味を「驚かす」に当ててみます。「す」は使役の意味(〜させる)ですので、「目を覚まさせる」という意味になりますが、要するに「起こす」ということです。
児の期待通り、僧は起こそうとしてくれます。僧は「もの申しさぶらはむ」(=もしもし)と声をかけてくれます。
④驚かせたまへ
→(訳)目をお覚ましください
「驚く」は③で説明した通り、2の「目を覚ます」です。
「せ」「給へ」はどちらも「尊敬」の意味を表す語で、「お〜になる/〜なさる」と訳せばよいでしょう。ただ、命令形なので「〜ください」とすべきところです。ちなみに、「給へ(給ふ)」は補助動詞と呼ばれるものですが、これももう少し後で学びましょう。
児は声をかけてもらってうれしいけれど、返事をするのを迷っています。
⑤ただ一度にいらへむも
→(訳)たった一度で返事をする(ような)ことも(待っていたと思われてよくないと思って)
ここでの「む」も「〜ような」という意味ですが、これも学習していけば後々わかるようになります。
(いますぐ知りたい人はこちら)
いらふ
「いらふ」=返事をする
⑥念じて寝たるほどに
→(訳)がまんして寝ている時に
「念じ」が重要古語です。「ほど」は「程」と漢字を当てますが、ここでは「時」と理解すればよいでしょう。
ねんず
「念ず」(動・サ変)
=我慢する
児は無事にぼたもちを食べることができたのでしょうか。
今回はここまでにして、続きは第2回にします。
テスト対策 第1回
本文の確認
テスト直前でもすべきことの基本は、「本文を読むこと」です。これまで学習した内容をしっかり思い出しながら読みましょう。「テスト対策」はあえてふりがなをつけていません。不安な場合は、このページの上部「本文を読む」で確認してください。
今は昔、比叡の山に児ありけり。僧たち、宵のつれづれに、「いざ、かいもちひせむ。」と言ひけるを、この児、心寄せに聞きけり。さりとて、し出ださむを待ちて寝ざらむもわろかりなむと思ひて、片方に寄りて、寝たるよしにて、出で来るを待ちけるに、すでにし出だしたるさまにて、ひしめき合ひたり。
この児、さだめておどろかさむずらむと、待ちゐたるに、僧の、「もの申しさぶらはむ。おどろかせたまへ。」と言ふを、うれしとは思へども、ただ一度にいらへむも、待ちけるかともぞ思ふとて、いま一声呼ばれていらへむと、念じて寝たるほどに、
読みで問われやすい語
「児」「宵」です。「ちご」「よい」ですね。
出題ポイント
以下の6項目が何も見ずに訳すことができるか。確認してください。
- 宵のつれづれに
- 寝ざらむも、わろかりなむ
- 定めて驚かさむずらむ
- 驚かせたまへ
- ただ一度にいらへむも
- 念じて寝たるほどに
宵のつれづれに
《出題ポイント!》
「つれづれ」の語の意味が問われやすいです。
→(訳)夜の退屈な時間に
ここでは、「宵」と「つれづれ」の意味を覚えておく必要があります。
「宵」=夜(になってすぐ)
「つれづれ」(徒然)
=退屈(だ)/手持ちぶさた(だ)
さらに、「に」の上に「時間」が省略されていることが分かれば解釈はできます。
寝ざらむも、わろかりなむ
《出題ポイント!》
現代語訳が出題されやすいです。特に「わろかりなむ」。
「わろかり」(=よくない)理由を問われます。
→(訳)(僧がぼたもちを作るからといって、子どもの自分が)寝ないようなのも、きっとよくないだろう
ここには、「ざら」「む」「な」「む」と助動詞が4つも出てきますが、今はこのような意味になるということだけ知っていればよいでしょう。
「ざらむ」=〜ないような
「なむ」=きっと〜だろう
「わろかり」は「わろし」という形容詞が活用したもので、意味は「よくない」です。
子どもは寝る時間なので、ぼたもちができるまで起きておくのはよくないと児は考えているのです。
定めて驚かさむずらむ
《出題ポイント!》
現代語訳できるようにしましょう!
→(訳)(僧たちは)きっと起こす (=起こしてくれる)だろう
「さだめて」=きっと
「むず」「らむ」(助動詞)=(2語で)〜だろう
「驚かす」はまず「驚く」の意味を覚えておく必要があります。「驚く」の意味は「1はっと気がつく/2目を覚ます」です。ここでは、2の意味を「驚かす」に当ててみます。そうすると、「目を覚まさせる」という意味になりますが、要するに「起こす」ということです。
驚かせたまへ
《出題ポイント!》
現代語訳できるようにしましょう!③か④かのどちらかで問われやすいです。
→(訳)目をお覚ましください
「驚く」は③で説明した通り、2の「目を覚ます」です。
「せ」「給へ」はどちらも「尊敬」の意味を表す語で、「お〜になる/〜なさる」と訳せばよいでしょう。ただ、命令形なので「〜ください」とすべきところです。ちなみに、「給へ(給ふ)」は補助動詞と呼ばれるものですが、これももう少し後で学びましょう。
ただ一度にいらへむも
《出題ポイント!》
1.「いらへむも」の現代語訳
2.「ただ一度にいらへむ」ことで、どのような不都合があるのか。
→(訳)たった一度で返事をする(ような)ことも(待っていたと思われてよくない)
ここでの「む」も「〜ような」という意味ですが、これも学習していけば後々わかるようになります。「いらふ」は「返事をする」という意味です。児はたった一度で返事をすると、僧たちに出来上がりを待っていたと思われて不都合だと感じたわけです。
念じて寝たるほどに
《出題ポイント!》
ここは、「念じて」の意味です。昔、大学入試センター試験でも問われました。
→(訳)がまんして寝ている時に
「念ず」の意味で覚えておかないといけないのは「我慢する」です。あと、「ほど」(程)が、ここでは「時」であるということも理解しておきましょう。
文法の確認
この文章は高校一年生の初期に読むことが多いでしょうから、動詞の問題として出題されることが多いと考えられます。ですので、以下の問題を解いて、動詞の問題に慣れておきましょう。
まず初めに、活用表を作ってみるという練習をしてみましょう。次の問題はいずれも「児のそら寝」に始めの方に出てくる動詞です。
解答は以下のとおりです。文字では表しにくいので、以下の板書をご覧ください。それぞれの活用の種類(○行□□活用)も確認しておくとよいでしょう。
おわりに
今回は「児のそら寝」についてお話しました。古文独特の書き方には少しずつ慣れていきましょう。文章の読解については、ある程度の古文単語の理解とおおよその場面理解を優先しましょう。
また、この時期は古文文法の習い始めでもあるので、文法問題も多くの配点があるでしょうから、活用表については何度も書いて理解していってください。一度マスターしてしまえば、意外と簡単ですが、分からないままにしてしまう人も多い分野です。パズル感覚で理解していくと早く理解できるかもしれませんね。まだ自信がない人は先に古文文法の基礎をしっかりと学習してみてください。下のページで確認できますよ。では、また第2回でお会いしましょう。
第2回は以下をご覧ください。
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