筆者が、この順番で学べば文章の内容が分かるようになり、一気に得意科目にできたという経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「これなら古文が理解できる!」という学ぶ手順を具体的に紹介していきます。読んでいくだけで、文章の内容が分かるようになります。
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はじめに
今回は『枕草子』72段「ありがたきもの」です。 『枕草子』は平安時代中期、11世紀初頭(西暦1001年ころ)に成立した、いわゆる「三大古典随筆」の一つです。『枕草子』は以下のページで詳しく解説しているので、そちらをご覧ください。

今回の「ありがたきもの」は(1)の「類聚(類集)的章段」の一節になります。「類聚(類集)的章段」は、「〜は」で始まるものと、「〜もの」ではじまるものが多く、「ものづくし」とも呼ばれます。自然や人事を特色によって集め表現したものです。今回は「ありがたききもの」をたくさん集めています。実際の文章で確認してみましょう。
「ありがたきもの」要点・あらすじ・現代語訳
古文を読解する6つのコツをお話しましょう。以下の順に確認していくと以前よりも飛躍的に古文が読めるようになるはずです。飛躍的に古文が読めるようになるはずです。
何度も本文を読んでみて(できれば声に出して)、自分なりに文章の内容を想像してみます。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」「どのようなことを言っているか」「どのような行動をしているか」を考えていきます。

本文にどのような人物が出てきているか、確認します。紙で文章を読むときは、鉛筆などで▢をつけるとよりよいでしょう。
簡単でもよいので、誰かに「こんなお話」だと説明できる状態にします。ここでは、合っているかどうかは関係ありません。今の段階で、こんな話じゃないかなと考えられることが大切なのです。考えられたら、実際にこの項目をみてください。自分との違いを確認してみましょう。
古文を読解する上で避けられないのは、「古文単語」を覚えることです。単語集で覚えるのもよいですが、文章の中で覚えられるともっといいですね。文章で出てきた単語は、他の文章でも使えるように解説していますので、応用を利かせたい人はぜひそこまで読んでみてくださいね。また、古文単語は意味だけでなく、その語が発生した経緯などが分かると面白いですよ。
古文を読んでいると、どうしても自力では分からない所がでてきます。ちなみに、教科書などでは注釈がありますが、注釈があるところは注釈で理解して構いません。それ以外のところで、多くの人が詰まるところがありますが、丁寧に解説しているので見てみてください。
step4とstep5は並行して行います。きっと、随分と読めるようになっているはずです。
本文を読む
何度も本文を読んでみて、自分なりに文章の内容を想像してみましょう。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」、「どのようなことを言っているか」、「どのような行動をしているか」を考えていきます。

ありがたきもの。舅(しうと)にほめらるる婿。また、姑(しうとめ)に思はるる嫁の君。毛のよく抜くる銀(しろかね)の毛抜き。主(しゆう)そしらぬ従者(ずさ)。
つゆの癖なき。かたち、心、ありさますぐれ、世に経るほど、いささかのきずなき。同じ所に住む人の、かたみに恥ぢかはし、いささかの隙(ひま)なく用意したりと思ふが、つひに見えぬこそかたけれ。
物語、集(しふ)など書き写すに、本に墨つけぬ。よき草子などは、いみじう心して書けど、必ずこそきたなげになるめれ。
男(をとこ)女(をんな)をば言はじ、女どちも、契り深くて語らふ人の、末まで仲よき人かたし。
(『枕草子』より)
登場人物の確認
通常、「ものづくし」は、自然や人事を特色によって集め表現したものなので、物語や日記とは異なり、登場人物はあまり出てくることはありません。今回は、作者にとって「ありがたきもの」を6個並べたものであり、それぞれの項目は独立したものであるため、登場する人物を挙げることに意味がないので、ここでは挙げません。
お話を簡単に理解(あらすじ)
1舅に褒められる婿。姑に大切に思われるお嫁さん。
2毛がよく抜ける銀の毛抜き。
3主人を悪く言わない従者。
4ほんの少しの癖もない人。容貌、心、振る舞いがすぐれ、世間で生きていくうちに、少しの欠点もない人。同じ場所に住む人で、互いに相手を尊敬し合い、少しの油断もなく気をつけていると思う人が、最後まで油断や欠点が見えないこと。
5物語や、歌集などを書き写すときに、手本に墨をつけないこと。
6男と女、女同士も、最後まで仲がよい人。
ここでほぼ現代語訳になってしまっています(笑)。
重要古文単語の確認
本文に出てくる重要古文単語を先に確認しておきましょう。今回の文章は単語が覚えられたらほぼ理解できる文章です。
ありがたし
「ありがたし(有難し)」(形容詞・ク活)
1めったにない
2(めったにないほど)すばらしい
「あることがむずかしい」という意味を表す言葉です。
そしる
「そしる」(動詞・ラ四)
=人のことを悪く言う/非難する
つゆ(〜打消)
「つゆ(〜打消)」
=少しも(〜ない)/まったく(〜ない)
「つゆ」は下に打消を伴って「全否定」を表す構文を作る副詞です。これは名詞の「露」が「わずかなこと/少しであること」を表すところから来ています。
かたち
「かたち(容貌・容・貌)」(名詞)
=容貌/顔つき/器量
最初は「顔かたち」と覚えておいてもよいでしょう。
いささか
「いささか(なり)」(形容動詞・ナリ活)
1ほんの少し/わずかである
2(いささか〜打消)少しも/まったく(〜ない)
サザエさんに出てくる伊佐坂さんって、そういう意味だったんだと知った時は衝撃でした。
この文章では形容動詞の語幹に格助詞「の」が付いた形ですが、2回出てきてどちらも下に打消表現の「なし」を伴っているので、「少しも〜ない」という意味になります。
かたみに
「かたみに(互に)」(副詞)
=たがいに/かわるがわる
漢字(「互に」)で覚えておくと意味は忘れないでしょう。
用意す
「用意す」(動・サ変)
=深い心づかいがある/注意する/心構えを持つ
名詞「用意」も出くることがあります。「意(心)を用いる」と理解しておくと、意味は分かりそうです。この文章では、「注意する、気をつける」という意味です。他の単語よりはレベルの高い語です。
かたし
「かたし」(形容詞・ク活)
1(堅し)堅固である/厳重である
2(難し)むずかしい/めったにない
ひらがなの場合はどちらかを自分で考える必要があります。この文章では「難し」です。
いみじ
「いみじ」(形容詞・シク活)
1(「いみじく」)たいそう、非常に
2たいそうすばらしい/ひどい
この文章ではウ音便になっていますが、連用形で「非常に」と、次の言葉を強調する働きとして使われています。
契り
「契り」(名詞)
1言い交わすこと/約束
2前世からの因縁/宿縁
仏教用語で、今の生を受ける前の世からの強い結びつきがあることを表す語です。単に「約束」という意味に使われることもあります。この文章では「前世からの因縁/宿縁」という意味で使われています。
語らふ
「語らふ」(動詞・ハ四)
1あれこれ話す/話し続ける
2親しく交わる/交際する
「語る」に反復・継続を表す奈良時代の助動詞「ふ」がついたものです。特に2の意味が大事で、男女の交際だけでなく、同性同士の日々の付き合いにも使われる言葉です。この文章でも「親しく交わる」という意味で使われています。
理解しにくい箇所の解説を見る
本文を読んで自分で内容を考えていったときに、おそらく以下の箇所が理解しにくいと感じたでしょう。その部分を詳しく説明します。解説を読んで、理解ができたら改めて本文を解釈してみてください。
- 同じ所に住む人の、かたみに恥ぢかはし、いささかの隙なく用意したりと思ふが、
- 男女をば言はじ、女どちも、契り深くて語らふ人の、末まで仲よき人かたし。
今回は、本文に登場する6つの「ありがたきもの」を順番に見ていきながら、特に理解しにくい箇所を①・②の項目ごとに解説していきます。
《1つめの「ありがたきもの」》
ありがたきもの。舅にほめらるる婿。また、姑に思はるる嫁の君。
(訳)はこちら(タップで表示)
めったにないもの。舅に褒められる婿。また、姑に大切に思われるお嫁さん。

「ほめらるる」の「らるる」は受身の助動詞「らる」の連体形、「思はるる」の「るる」は受身の助動詞「る」の連体形です。助動詞「る」「らる」はこちらで解説しています。
《2つめの「ありがたきもの」》
《3つめの「ありがたきもの」》
主そしらぬ従者。
(訳)はこちら(タップで表示)
主人を悪く言わない従者。



「そしる」は上記の「単語」の項目で解説しています。「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形です。
①同じ所に住む人の、かたみに恥ぢかはし、いささかの隙なく用意したりと思ふが、
(訳)はこちら(タップで表示)
同じ場所に住む人で、互いに(相手をすぐれた者として)尊敬し合い、少しの油断もなく気をつけていると思う人が、
重要語はすでに「重要古文単語の確認」で確認できていることを前提としてお話します。「かたみに(=お互いに)」「いささか(=ほんの少しの)」「用意す(=気をつける)」は上記で確認しておいてください。
解釈を難しくしているポイントがいくつかあります。
1つ目は「住む人の」の「の」です。これは同格の格助詞と言われるもので、「同じところに住む人」と「かたみに恥ぢかはし、いささかの隙なく用意したりと思ふ(人)」が「同じ人」を表していることを示すものです。同格の「の」は以下で詳しく説明しているので、よければご覧ください。
2つめは「恥ぢかはし」です。「恥ぢかはす」は辞書で調べると「互いに気がねする/互いに恥ずかしがる」という意味が出てきます。実際に『伊勢物語』「筒井筒」では、その意味で使われています。ただ、ここでは、「(自分が恥ずかしくなるくらい)優れていると思う」というような意味になります。実際に「恥ずかし」という古文単語は「こちらが恥ずかしくなるほど相手が素晴らしい」という意味があります。「恥ず」がなぜ「恥ずかしい」のかを考える必要のある語であるということは知っておきましょう。
というわけで、「かたみに恥ぢかはし」は「互いに(自分が恥ずかしくなるくらい相手をすぐれた者として)尊敬し合い」と解釈します。
《4つめの「ありがたきもの」》
つゆの癖なき。かたち、心、ありさますぐれ、世に経るほど、いささかのきずなき。同じ所に住む人の、かたみに恥ぢかはし、いささかの隙なく用意したりと思ふが、つひに見えぬこそかたけれ。
(訳)はこちら(タップで表示)
ほんの少しの癖もない(人)。容貌、心、振る舞いがすぐれ、世間で生きていくうちに、少しの欠点もない(人)。同じ場所に住む人で、互いに(相手をすぐれた者として)尊敬し合い、少しの油断もなく気をつけていると思う人が、最後まで(油断や欠点が)見えないことはめったにない。



ここは解釈が難しいですね。結局、どんなに注意していても油断や欠点は人に見えてしまうものだと言っているのでしょう。まあ、人間は欠点があるからこそ魅力的だとも思いますが・・・。



「経る」は「ふる」と読むよ。ハ行下二段活用動詞「経(ふ)」の連体形だったね。難しい動詞の活用はこちらを見てね!
《5つめの「ありがたきもの」》
物語、集など書き写すに、本に墨つけぬ。よき草子などは、いみじう心して書けど、必ずこそきたなげになるめれ。
(訳)はこちら(タップで表示)
物語や、歌集などを書き写すときに、(手本とする)本に墨をつけない(ことはめったにない)。立派な草子などは、たいそう注意して書くけれど、必ず汚らしくなるようだ。



「つけぬ」の「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形です。なぜそう言えるかというと「つけぬ」のあとに「ことはありがたし」が省略されているからです。また、「なるめれ」の「めれ」は推定の助動詞「めり」の已然形です。「こそ」の結びで已然形になっています。それぞれの助動詞も詳しく解説しているので確認してみてください。
男女をば言はじ、女どちも、契り深くて語らふ人の、末まで仲よき人かたし。
(訳)はこちら(タップで表示)
男と女(の仲)は言うまい、女同士(の仲)も、前世からの宿縁が深くて親しく交わる人で、最後まで仲がよい人はめったにない。
最後(6つめ)の「ありがたきもの」です。ここは男女の関係だけでなく、女同士でもいつまでも仲が良いという人は「ありがたし」だといっています。人間関係の難しさを表した箇所になります。
「重要単語の確認」で「契り(=前世からの因縁/宿縁)」「語らふ(=親しく交わる)」を説明しているので、それを確認している前提で解説します。
「言はじ」の「じ」は打消意志(打消推量)の助動詞「じ」(の終止形)ですが、ここでは「(今さら)言うまい」となり、「言うまでもない」というニュアンスで理解しておくとよいでしょう。
「女どち」の「どち」は「同士」から来た語と考えられ、「仲間/同士」という意味です。また、「語らふ人の」の「の」は同格の格助詞です。
特に仲の良い人たちでも「末(=終わり/最後)」まで仲が良い人は「難し(=めったにない)」と言っているのです。
おわりに
テスト対策へ
今回は、『枕草子』の「ありがたきもの」についてお話しました。一通り学習を終えたら、今度はテスト対策編もご覧ください。「ありがたきもの」のテスト対策は鋭意作成中です。


『枕草子』は初見では非常に難しいので、「ビギナーズ・クラシックス」などで多くの文章に触れておきたいですね。他にも、『桃尻語訳・枕草子』などもおもしろいです。興味があれば読んでみてください。(以下からも購入することができます)
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