このページでは、学生時代に国語が苦手だった筆者が、この順番で学べば文章の内容が分かるようになり、一気に得意科目にできたという経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「これなら古文が理解できる!」という学ぶ手順を具体的に紹介していきます。読んでいくだけで、文章の内容が分かるようになります。
はじめに
今回は『枕草子』77段「宮に初めて参りたるころ」です。 『枕草子』は平安時代中期、11世紀初頭(西暦1001年ころ)に成立した、いわゆる「三大古典随筆」の一つです。『枕草子』は以下のページで詳しく解説しているので、そちらをご覧ください。

今回の「すさまじきもの」は(3)の「日記的(回想的)章段」の一節になります。「日記的(回想的)章段」は、作者清少納言が中宮定子に仕えた華やかな宮廷生活を描いたもので、本文に「宮(中宮)」とはっきり明示されていなくても、中宮の存在を考える必要があります。また、作者清少納言は中宮には一段敬意の高い表現を使っているので、その存在はすぐに分かることになります。実際の文章で確認してみましょう。
「宮に初めて参りたるころ」要点・あらすじ・現代語訳
古文を読解する5つのコツをお話しましょう。以下の順に確認していくと以前よりも飛躍的に古文が読めるようになるはずです。飛躍的に古文が読めるようになるはずです。
何度も本文を読んでみて(できれば声に出して)、自分なりに文章の内容を想像してみます。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」「どのようなことを言っているか」「どのような行動をしているか」を考えていきます。

本文にどのような人物が出てきているか、確認します。紙で文章を読むときは、鉛筆などで▢をつけるとよりよいでしょう。
簡単でもよいので、誰かに「こんなお話」だと説明できる状態にします。ここでは、合っているかどうかは関係ありません。今の段階で、こんな話じゃないかなと考えられることが大切なのです。考えられたら、実際にこの項目をみてください。自分との違いを確認してみましょう。
古文を読んでいると、どうしても自力では分からない所がでてきます。ちなみに、教科書などでは注釈がありますが、注釈があるところは注釈で理解して構いません。それ以外のところで、多くの人が詰まるところがありますが、丁寧に解説しているので見てみてください。

step4とstep5は並行して行います。きっと、随分と読めるようになっているはずです。
本文を読む
何度も本文を読んでみて、自分なりに文章の内容を想像してみましょう。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」、「どのようなことを言っているか」、「どのような行動をしているか」を考えていきます。

宮に初めて参りたるころ、ものの恥づかしきことの数知らず、涙も落ちぬべければ、夜々(よるよる)参りて、三尺(さんじやく)の御几帳(みきちやう)の後ろに候(さぶら)ふに、絵など取り出でて見せさせ給ふを、手にてもえさし出づまじう、わりなし。「これは、とあり、かかり。それか、かれか。」などのたまはす。高坏(たかつき)に参らせたる御殿油(おほとなぶら)なれば、髪の筋なども、なかなか昼よりも顕証(けそう)に見えてまばゆけれど、念じて見などす。いと冷たきころなれば、さし出でさせ給へる御手(おほんて)のはつかに見ゆるが、いみじうにほひたる薄紅梅(うすこうばい)なるは、限りなくめでたしと、見知らぬ里人(さとびと)心地には、かかる人こそは世におはしましけれと、驚かるるまでぞまもり参らする。
(『枕草子』より)
登場人物の確認
・作者 ・中宮定子
本文は作者が初めての宮仕えの時に、中宮定子を見て感激する場面を日記風に書き上げたものです。
お話を簡単に理解(あらすじ)
・初めて中宮のもとに出仕したときは、気が引けて夜に参上しては御几帳に隠れていた
・中宮が絵を見せてくださるとき、恥ずかしくて手を差し出せない
・大殿油によって自分の髪の筋まで見えるのが恥ずかしい
・中宮さまの差し出す手がわずかに見えるが、この上なく美しいと感じる
・宮中の世界を知らない自分は、中宮さまの高貴な美しさに思わず見惚れてしまう
理解しにくい箇所の解説を見る
本文を読んで自分で内容を考えていったときに、おそらく以下の箇所が理解しにくいと感じたでしょう。その部分を詳しく説明します。解説を読んで、理解ができたら改めて本文を解釈してみてください。
- 手にてもえさし出づまじうわりなし
- なかなか昼よりも顕証に見えてまばゆけれど
- いみじうにほひたる薄紅梅なるは、限りなくめでたし
- 驚かるるまでぞまもり参らする
《①までの解釈と現代語訳》
それでは、初めに①までの文章を解釈していきましょう。
宮に初めて参りたるころ、ものの恥づかしきことの数知らず、涙も落ちぬべければ、夜々参りて、三尺の御几帳の後ろに候ふに、絵など取り出でて見せさせ給ふを、
(訳)はこちら(タップで表示)
中宮さまの御所に初めて出仕した頃は、何かにつけて気が引けることが数え切れないほどあり、涙も今にもこぼれ落ちそうなので、夜ごとに出仕して、三尺の御几帳の後ろにお控えしていると、(中宮さまが)絵などを取り出してお見せくださるが、

「恥づかし」は「自分が恥ずかしくなるくらい相手が立派だ/立派で気が引ける」という意味の古文単語でしたね。
また、「見せさせ給ふ」の「させ」は尊敬の助動詞「さす」の連用形、「給ふ」は尊敬語の補助動詞で、二重尊敬になっているので、敬意の対象は中宮定子です。
①手にてもえさし出づまじうわりなし
(訳)はこちら(タップで表示)
手でも差し出すことができそうにないくらい(恥ずかしく、恐れ多くて)どうしようもなくつらい。


まだ、清少納言が中宮定子に出仕し始めたころの話です。中宮が自分に絵などを出して見せてくれようとするのですが、それを受け取ることが恥ずかしくてできない様子を表しています。
「手にて」の「にて」は格助詞で、様々な用法がありますが、原則「で」と訳せばよいです。
「えさし出づまじう」、の「え」は下に打ち消し語を伴って「〜できない」という意味でしたね。打ち消し語は「まじう」です。これは打消当然の助動詞「まじ」の連用形(ウ音便)で、「さし出づ」が「差し出す」ということが分かれば、「手でも差し出すことができそうにない」と訳すことができるわけです。
「わりなし」は重要語です。漢字に改めると「理無し」です。漢字を見ると「無理だ」という意味が見えてきますね。
「わりなし(理無し)」(形・ク活)
1道理にあわない/無理だ
2たえがたい/つらい
3並々でない/はなはだしい
ここでは、恥ずかしくてまた、恐れ多くて手を差し出せない自分の気持ちを表すので、2の「たえがたい/つらい」となります。たえがたいつらさを表すために、「どうしようもなくつらい」と訳出しておきました。
《②までの解釈と現代語訳》
では、②までの文章を解釈していきましょう。
「これは、とあり、かかり。それか、かれか。」などのたまはす。高坏に参らせたる御殿油なれば、髪の筋なども、
(訳)はこちら(タップで表示)
「この絵は、そうで、こんなだ。それ(がよい)か、あれ(がよい)か。」などと、(中宮さまは)おっしゃる。高坏に(火を)お灯し申し上げている御殿油なので、髪の筋なども、



「高坏」は、円形や方形の盆に一本の高い足をつけた器のこと、「大殿油」は、宮殿や貴族の邸宅で用いた油でともす灯火のことです。
②なかなか昼よりも顕証に見えてまばゆけれど
(訳)はこちら(タップで表示)
かえって昼よりもはっきりと見えて恥ずかしいが、


作者は出仕したてのころは、恥ずかしいので夜にのみ出仕していたそうです。しかし、宮中は明かりをたくさん使っていて、部屋の中は割と明るかったようです(もちろん今ほどではありませんが⋯)。自分の姿を見られたくないので夜に出仕したはずなのに、明るくて恥ずかしい気持ちでいる様子を表しています。
「なかなか」は形容動詞「なかなかなり」が副詞化したものです。漢字にすると「中中」となり、「中途半端でどっちつかず」を表す言葉になります。この場で形容動詞・副詞両方覚えてしまいましょう。
「なかなかなり」(形動・ナリ活)
1中途半端だ/どっちつかずだ
2なまじっかだ/かえって⋯しないほうがよい
「なかなか」(副詞)
=かえって/むしろ
「中途半端になるならかえってしないほうがよい」という意味から、「なかなか」は、副詞化して「かえって」の部分だけが強調されたと考えるとよいでしょう。また、「顕証」(けそう)が「はっきりしている」、ここでは「はっきり見える」という意味になるので、「かえって昼よりもはっきりと自分の姿が見えて」と訳出できることになります。
次に「まばゆけれど」です。「まばゆけれ」はク活用の形容詞「まばゆし」の已然形です。これも重要単語ですので、覚えてしまいましょう。現代語では「まぶしい」という意味ですが、「まぶしいくらい」どうなのかが重要になってきます。
「まばゆし」(形容詞)
1光り輝くほど美しい
2見ていられない/目を背けたい
3恥ずかしい/きまりが悪い
この「まばゆし」は「恥ずかしい」という意味ですが、恐れ多い中宮やその周りの人に自分の姿を見られての思いであることが分かればよいでしょう。
《③までの解釈と現代語訳》
では、③までの文章を解釈していきましょう。
念じて見などす。いと冷たきころなれば、さし出でさせ給へる御手のはつかに見ゆるが、
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我慢して見などする。たいそう寒い頃なので、(中宮さまの)差し出しなさったお手でほんの少し見えるお手が、



「差し出しなさったお手でほんの少し見えるお手が」と少し違和感のある訳になっているのは、「御手の」の「の」が同格の格助詞だということを明らかにするためです。
③いみじうにほひたる薄紅梅なるは、限りなくめでたし
(訳)はこちら(タップで表示)
(中宮のお手が)たいそう美しく照り映えている薄紅梅色であるのは、この上なくすばらしい


中宮定子の美しい手を見て、清少納言が感動する場面です。
「いみじう」はシク活用形容詞「いみじ」の連用形(ウ音便)で、後の「にほふ」を強調しているので「たいそう/非常に」という意味になります。次に「にほひ」ですが、ここはハ行四段活用の動詞なので「にほふ」がもとの形になります。「にほふ」は漢字にすると「匂う」ですが語源をたどると「に」が「丹」つまり「赤(朱色に近い)」を表し、「ほふ」は「秀ふ」つまり「秀でる」という意味を表します。全体から「赤色が秀でる」という意味なので、視覚的な美しさを表す語なのです。
「にほふ」(動・ハ四)
=美しい色に染まる/鮮やかに色づく/美しく照り映える
中宮定子の手のつややかな美しさを表していますので、「美しく照り映える」という意味をここでは取りました。次に、「にほひたる」の「たる」と「薄紅梅なる」の「なる」の助動詞が分かればおおよその理解ができそうです。「たる」は存続の助動詞「たる」の連体形、「なる」は断定の助動詞「なり」の連体形です。また、「薄紅梅」は要するに「薄い紅色」で中宮定子の美しい手の色を表しています。
以上をまとめると、「(中宮のお手が)たいそう美しく照り映えている薄紅梅色であるのは」と訳出できることになります。
「かぎりなくめでたし」の「かぎりなく」は「この上なく」でよいでしょう。「めでたし」は重要単語ですが、もう何度も出てきていると思います。動詞「めづ(賞づ/愛づ)」の形容詞化されたものと考えます。「称賛する/ほめる」を形容詞化するので、「すばらしい」と解釈するのです。よって、「この上なくすばらしい」という訳ができればよいでしょう。
結局のところ、中宮定子の高貴な美しさをある意味大げさに表現しているのです。
《④までの解釈と現代語訳》
では、④までの文章を解釈していきましょう。(一部③の内容を含みます)
限りなくめでたしと、見知らぬ里人心地には、かかる人こそは世におはしましけれと、
(訳)はこちら(タップで表示)
(中宮さまの高貴な美しさを)この上なくすばらしいと、まだ宮中のことを分かっていない里人(のような新参者の私)の気持ちには、『このような(すばらしい)人がこの世にいらっしゃるのだなあ』と、
④驚かるるまでぞまもり参らする
(訳)はこちら(タップで表示)
思わずはっとせずにはいられないほど(中宮さまを)じっと見つめ申し上げる。


ここまでずっと中宮定子のすばらしさ、高貴さについて書かれています。ここも同じで、あまりに美しくて高貴な中宮に思わず見惚れてしまう作者の様子が感じ取れるとよいですね。
「驚かるるまで」の「驚か(驚く)」は「はっと気がつく」や「目を覚ます」という意味を表す語でしたね。中宮の美しさに思わず「はっとする」というのがここでの使われ方でしょう。「るる」は自発の助動詞「る」の連体形です。よって、「思わずはっとせずにはいられないほど」と訳せばよいわけです。
次に、「まもり参らする」です。「まもり(まもる)」は漢字に改めると「目守る」となり、「じっと見つめる」「大切にする」という意味を表す語でした。「参らする(参らす)」は動詞の後ろに来ているので、謙譲語の補助動詞「参らす」の連体形(「ぞ」の係り結び)になります。よって、「(中宮を)じっと見つめ申し上げる」という訳になるのです。
今回は最初から最後まで中宮定子のすばらしさについて書かれたものでした。宮中に初めて出仕して、恥ずかしくて自分の顔は見せたくないが、そこにおられる中宮さまはあまりに美しくて、思わず見つめてしまうようなお人であるという作者の心理を読み取れるとよいでしょう。
おわりに
テスト対策へ
今回は、『枕草子』の「宮に初めて参りたるころ」の前半部についてお話しました。一通り学習を終えたら、今度はテスト対策編もご覧ください。


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『枕草子』は初見では非常に難しいので、「ビギナーズ・クラシックス」などで多くの文章に触れておきたいですね。他にも、『桃尻語訳・枕草子』などもおもしろいです。興味があれば読んでみてください。(以下からも購入することができます)
また、後半部の解説は希望者が多ければ作成します。下の「続きを作成するように要望を伝える」からリクエストしてください。
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