【古典文法・敬語】二方面敬語や最高敬語の学習ポイントとテスト対策!

 このページでは、学生時代に国語が苦手だった筆者が、この順番で学べば古典文法が分かり、一気に得意科目にできた経験をもとに、25年以上の指導において実際に受講生に好評だった「理解しやすい学ぶ手順」を紹介していきます。

今回は、尊敬語・謙譲語・丁寧語それぞれの「敬意の方向」をきちんと理解した上でないと、混乱を極めますので、自信のない人は、まず「敬意の方向」から学習してからこのページをご覧ください。

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このページを読んで、できるようになること!
  • 二方面敬語が分かる!
  • 最高敬語、二重尊敬が分かる!
  • 二方面敬語の問題が解ける!
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ブログの性質上、理解していくためにはどうしても文章を丁寧に読んで行く必要があります。「文章を読む」のもいいけれど「動画」でも古典文法を学びたい!という方は、以下をオススメします。下のバナーをタップして詳細を確認しましょう!

目次

はじめに

古文の敬語を勉強していると、よく最高敬語って言葉を聞くのですが、どういうことですか?

現代語ではあまり見られないんだけど、昔は身分に応じて敬語を使い分けていたんだよ。尊敬語を使うときに、例えば天皇には普通の尊敬語ではなく、尊敬語を2つ重ねて使って高い敬意を表していたんだね。今回はその「敬語を重ねて用いる」ことについて学習していこう!

「二方面敬語」「最高敬語」の学習ポイント

 今回学習することの要点を示します。

【二方面敬語】

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【二重尊敬】

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敬語の重複

 今回は敬語を重ねて用いることについて学習していきます。「敬語の重複」は大きく2種類あって、1つは、「尊敬語」と「謙譲語」など、2つの種類を重ねる場合、もう1つは「尊敬語」と「尊敬語」を重ねる場合です。前者を一般的に「二方面敬語」、後者を一般的に「二重尊敬」と呼びます。この2つについて、詳しく説明していきます。

(1)二方面(三方面)の敬語

 前回で敬意の方向について理解できたと思います。ここでは、異なる敬語の種類を重ねて用いる場合について説明していきます。以下の例文をご覧ください。

(例文1)男が女に文を書き奉り給ふ

例文1は筆者が作った例文ですが、1つの例文に「奉る」という謙譲語の補助動詞と「給ふ」という尊敬語の補助動詞が同時に用いられています。

「尊敬語」:話し手(書き手)が話題の中の動作をする人に敬意を表す
「謙譲語」:話し手(書き手)が話題の中の動作を受ける人(動作をされる人)に敬意を表す

でしたね。改めて、下のイメージ図で確認してみてください。

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「奉り」(謙譲語)は、「書き手」から「話題の中の動作を受ける人」になるので、
「作者」から「女」
への敬意になり、「給ふ」(尊敬語)は、「書き手」から「話題の中の動作をする人」になるので、
「作者」から「男」
への敬意となるわけです。つまり、この文の作者は、話題の中の「男」と「女」どちらにも敬意を払いたいと考え、尊敬語と謙譲語を重ねて用いたのです。これを「二方面敬語」と言います。

同じように、次の例文を見てみましょう。

(例文2)中納言(中宮のもとへ)参り給ひて、(『枕草子』)

『枕草子』の一節です。この文は本来(中宮のもとへ)という言葉はありませんが、敬意の方向をわかりやすくするために書いています。「参り」は謙譲語「給ひ」は尊敬語です。(例文1)と同じように考えると、「参り」(謙譲語)は、「書き手」から「話題の中の動作を受ける人」になるので、
「作者」から「中宮」
への敬意になり、「給ひ」(尊敬語)は、「書き手」から「話題の中の動作をする人」になるので、
「作者」から「中納言」
への敬意となるわけです。作者(清少納言)にとっては、中納言(中宮の兄の伊周これちか)も、もちろん自分が仕える中宮(一条天皇の中宮定子)に対しても敬意を払うべき対象なので、作者はどちらにも敬意を払いたいわけです。そのようなときに二方面敬語は使われるのです。

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上の板書には「三方面敬語」という文字も出ています。めったに出てきませんが、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3つともいっぺんに用いることです。例えば以下のような感じです。

(例文3)男が女に申し給ひ侍り

例文3は筆者の作った例文ですが、「申し」は謙譲語、「給ひ」は尊敬語、「侍り」は丁寧語です。それぞれの敬意の方向は分かりますか?

  • 「申し」は作者から女
  • 「給ひ」は作者から男
  • 「侍り」は作者から読者

です。1つずつ順番に考えていくと、解答できますよ。わからなかった人は、敬意の方向のルールを改めて学習してください。

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それと、あと1つ。敬語の出現する順番ですが、「謙譲→尊敬→丁寧」です。筆者はこれを勝手に「ケソテの法則」と呼んでいます(笑)。二方面敬語で考えると、「謙譲・尊敬」「謙譲・丁寧」「尊敬・丁寧」の順になるということです。実際に「練習問題」で確かめてみてくださいね。

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二重尊敬

 次に、「二重尊敬」です。「二重尊敬」とは要するに「尊敬語を重ねて用いる」ことです。なぜそのようなことをするのかというと、天皇や皇后などの皇族は普通の敬語では敬意を表しきれないからです。つまり、敬語を重ねて用いることによって、天皇や皇后などに、より高い敬意を払うことが当時の常識だったということです。その「二重尊敬」には大きく2つの方法があります。

助動詞+補助動詞(最高敬語)

(例文4)(中宮が)絵など取り出でて見せさせ給ふ
(訳:絵などを取り出してお見せになる。)

これは、尊敬を表す助動詞「さす」の連用形と、尊敬語の補助動詞「給ふ」の已然形(命令形)「給へ」が重ねて用いられています。これによって、中宮への敬意を表しています。このように、尊敬を表す助動詞「す」「さす」「しむ」に、尊敬語の補助動詞「給ふ」などがついた形を「最高敬語」と呼ぶこともあります。

助動詞+補助動詞(最高敬語)
ーー給ふ

(おはす/おはします)
ーーさせ給ふ

(おはす/おはします)
ーーしめ+給ふ

(おはす/おはします)

動詞+助動詞

(例文5)(中宮は)「さりはとく。」と仰せらる
(訳:「夜になったら早く参れ」とおっしゃる。)

こちらは尊敬語の本動詞「仰す」の未然形と尊敬を表す助動詞「らる」の終止形が重ねて用いられています。これによって、中宮への高い敬意を表しているわけですね。このように、尊敬語の本動詞と助動詞「らる」がついた形は、その多くが「仰せらる」の形で出てきます。それ以外の形は以下の板書で確認してもらえたらいいでしょう。

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また、例えば「たまはす」「おはします」「おぼしめす」などは、「給ふ」に尊敬の助動詞「す」(奈良時代に用いられた)が、「おはす」に尊敬を表す補助動詞「ます」が、「おぼす」に尊敬を表す補助動詞「めす」が、それぞれ重ねて用いられたところから生まれた語です。ですので、このような語は一般に「二重尊敬」とは呼びませんが、二重尊敬のように皇族のような身分の高い人物にしか用いられません。

以上で、敬語の重複についての解説を終わります。「二方面敬語」は、それぞれの敬語の種類を考えて敬意の方向を一つずつ考えていけばよい、「二重尊敬」は、天皇・中宮などの皇族に用いる敬語である、ということがそれぞれわかりました。

それでは、今回は二方面敬語(三方面敬語)について、理解できたかを次の練習問題で確認していきます。

テスト対策(練習問題)

 それでは、「敬語の重複」について、特に二方面の敬語(三方面の敬語)が理解できたか、問題を解いて確認していきましょう。

【問】線部の敬語について、以下の問いに答えなさい。

「宮は院より、またかさねて御衣たまはり給ひ候ひけり」と蔵人、 大臣に聞こえ給ふ

(1)青太字A~Eの敬語法の説明として、正しいものを選びなさい。
①尊敬語の本動詞 ②尊敬語の補助動詞 ③謙譲語の本動詞 ④謙譲語の補助動詞 ⑤丁寧語の本動詞 ⑥丁寧語の補助動詞

(2)青太字A~Eは、誰から誰に対する敬意か、次から選びなさい。
ア 蔵人から宮へ  イ 蔵人から院へ  ウ 蔵人から大臣へ  エ 大臣から宮へ     オ 大臣から院へ  カ 大臣から蔵人へ  キ 作者から宮へ  ク 作者から院へ     ケ 作者から蔵人へ  コ 作者から大臣へ

解答・解説はこちら(タップで表示)

【解答】
(1)A③ B② C⑥ D③ E② (2)Aイ Bア Cウ Dコ Eケ
【解説】
(1)A・Dが本動詞、あとは助動詞です。「ケソテの法則」で考えてもよいです。Aが謙譲語・Bが尊敬語・Cが丁寧語です。また、Dが謙譲語・Dが尊敬語です。
(2)A〜Cは会話文ですので、まず「話し手」を考えます。「話し手」は「蔵人」です。Aは謙譲語なので「院」への、Bは尊敬語なので「宮」への、Cは丁寧語なので聞き手である「大臣」への敬意です。D・E地の文です。Dは謙譲語なので「作者から大臣へ」、Eは尊敬語なので「作者から蔵人へ」の敬意になります。

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おわりに

 これで敬語の基本は終わりです。ここまで理解できれば敬語の問題はおおよそ解けると思います。次は応用編ですが、とりあえずはこれまでの知識を使って本文を読んでいってみましょう。きっと、文章の理解が早くなっていることと思います。応用編では「絶対敬語」や本来謙譲語の動詞が尊敬語になる用法、「自尊敬語」などを学習していきます。

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